序章
「夢とは一体なんなんだろう?」
それはちょうど半年くらい前の出来事。
突如として少女は、俺にそんな質問を投げかけてきた。
純朴な青い瞳、白く眩しい素肌、風に揺らされる長い銀色の髪、そのすべてを夕日色に染めて少女は俺に尋ねてきた。
答えなどない、無謀な質問を……。
◆
本当にそれは出会い頭だった。
黄昏色に染まる並木道。
紅葉とした葉が、一陣の風に煽られ宙へと舞い、より濃く秋模様を演出する。
大学からの帰り道。
たまたまそこを帰路に選んだ俺は、すれ違い様に少女から声をかけられた。
「夢ってなんなんでしょうね?」
「はっ?」
今晩の夕飯の献立でも考えながらボケっと歩いていた俺だったが、不意打ちのような少女の台詞に反射的に踵を返してしまう。
いまのはただの独り言だったのか、それとも俺へとあてられたコミュニケーションだったのか。
その真意を確かめる意味でも俺は、すれ違った少女に視線をあてる。
真相は、すぐに掴めた。
「一色ゆうさん……私と一緒にその答えを探しませんか?」
少女は、青い瞳で真っ直ぐ俺の目を見つめ、心の奥から語りかけてくる。
可憐に舞う紅葉と銀色の髪。
そんな異色の2つが混ざり合う狭間で、少女は期待と不安を秘めた可憐で儚げな笑みを浮かべていた……。
この日から俺、一色ゆうの人生は大きな変革を遂げるのだった。
彼女、天ヶ瀬夢莉は空白だった俺の未来を希望という色で染めてくれた。