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18の肖像  作者: 深井陽介
序章 ちょっとした懺悔文
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単発作品となります。キキシリーズとはちょっと異質なミステリー。

これも長い付き合いになりそうなので、どうぞごゆっくり。

まだ残酷な描写は出てきません。


 不可抗力という言葉は、正当化のための悪い言い訳と解釈される事が多い。理性的に考えれば選ぶはずのない行動によって不幸な結果を招いた時、「思いがけず」「魔が差して」「仕方がなかった」などと言った用語を多用して、激しい追及から逃れようとしてしまう。その結果に直接関わらない人間は大抵、その手の言葉を耳にすれば「言い訳をするな」と毒づくのだ。自らが定めた正義感に酔いしれながら。

 しかし、冷静に観察してみれば、衝動的に自分の身を守ろうとするのは誰しも自然に行いうることで、外部からの攻撃による痛みを極力最小限に抑えようとするのもごく自然な行動原理だと言えよう。とはいえ、そうした当たり前の主張さえ、それこそ「単なる言い訳」だと解釈され、後ろ指を指されてしまう事がほとんどだ。それが無い例外は、不可抗力という単語を人生で一度も使った事がない人間くらいで、かように完璧な人間がこの世にどれほど存在することであろう。

 正義を信じることは誰にでも出来る事だし、それを意図して実行する事だって誰にでも可能である。それでも、常日頃から実践できている人間は本当に一握りだ。もちろん、だからと言って正義の実行が無意味であるわけはない。ただ、完璧な人間がこの世にいない以上、常に正義の味方でいられる人間が少数派であるのは当然の帰結なのだ。

 私もまた普通の人間であり、正義は信じているし実行できればなおいいと思ってもいるが、いつも正しい事が出来るわけじゃない。そして、間違っていると分かっていても引くに引けない状況に陥れば、私は、自分が信じる正義というものに反する行動を取ることもある。

 それでも、これだけは言っておきたい。

 私は、自分が間違っている事をちゃんと理解している。ただ、改善するだけの勇気とか度胸が不足しているだけなのだ。

 すでに言い訳同然の釈明をしているけれど、残念ながらこれが事実なのだ。自分の間違いに気づく事ができても、引き返して、さらにその間違った選択肢を潰すのは簡単な事じゃない。だからこそ、人間は間違いを繰り返す生き物といえるのだ。私もどうやら、そうした生き物の例に漏れないらしい。

 でも、間違いである事に気づいているならまだマシな方だと思いたい。世の人間の中には、間違いに気づかず暴走して最悪の結果を招き、取り返しがつかなくなってからやっと気づくというタイプの人もいる。さらには、そうした結果を無理やり「成功」と解釈してしまい、手の施しようも無くなった段階になっても間違いを認めないという人もいる。そんな連中よりは、まだ救いようがあると言えないだろうか?

 何が言いたいのかというと、私の犯した間違いにも許される余地はあるのではないか、という事だ。何が何でも許せない、そう主張されると思っているなら、ここまで長々と持論を展開して自己弁護をしようとはしない。額をこすりつけながら平謝りする、それ以外に私の取るべき行動は無くなってしまう。言い訳をするだけの余裕があると考えているから、このようにして文章にも起こしている。

 私は恐らく、まだ信じられていると思いたいのだろう。事情を話して一言謝れば、もしかしたら許してもらえるかもしれない、そんな淡い希望を抱いている。そうした一種の甘えが、私を間違った衝動へと駆り立てた事は否定できない。きっと今でもそうだ。

 私に責任は取れない。責任を取ったところで相手の気が晴れる保証はない。しかし、それ以外に何をすればいいのか、私には見当もつかない。

 今はただ、自戒の念を込めてこの文章を書く事しか出来ない。そして、他人事のように書き連ねることで、自分の行いを客観視できるようになる事を、祈るしかない。


 いつか、貴女の手元にこの文章が渡る時が来て、この中途半端な懺悔(ざんげ)が目に焼き付けられる事を願って。

 許すも許さざるも、貴女次第。

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