The concept of the master side
私は朝が早い。
たしかに私はそう口にした。
でも老人扱いされるのは心外ね。
この人はいつもそう、何かと人を小馬鹿にしたような口調で知ったような口を聞く。
底の浅い女だとでも思われているのかしら?
いいえ、この人の態度や仕草を見る限り、どう考えてもそんな事は有り得ないわ。
そうね、本当に傾奇者って言葉がお似合いじゃないかしら。
言葉の節々に棘を含ませながらも、最後にはいつだって自己完結してしまう。
どれだけ深刻な話題を口にしながらも、最後にはいつだって自分の答えを口にする。
私の意見に耳を貸しているようで、自分の意見は絶対に曲げない。
私の意見を否定もしないくせに、表立って肯定もしてくれない。
この人の『本当』は一体どこにあるのかしら?
いつだって私はそう思いながらも、それを口にする事が出来ない。
だって、そんな事を口にしたら興醒めじゃない。
せっかくの限られた時間なんですもの。
できる限り最高のおもてなしをするのが私の勤め。
まあ、私が楽しでいるかそうでないかと聞かれれば、間違いなく楽しんでいるんじゃないかしら。
所詮はひと時の憩いの場。
それでも、このひと時は憩いの場。
私にだって楽しむ権利くらいはあっても良いと思うの。
だからほら、さっさとおかわりを注文しなさいな。