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歌にもなった「キリのピアノ」

ごめんなさい。ご無沙汰しております。

12年前に、カナダ人のフォークシンガーが歌った「キリのピアノ」という歌。

これは第二次世界大戦中、実在した日系カナダ人女性、キリ・イトウさんのことを歌ったもの。


キリは、鮭などをとる漁師の夫と三人の子供たちと幸せに暮らしていた。日が暮れると彼女のピアノの調べが静かな海の水面を流れる。近所の白人家族たちもその美しい音色に聞き入っていた。


そんな幸せが、12月8日の真珠湾攻撃で一変した。まず、日系の男たちはカナダ政府の令を受け、強制労働のため、家を離れなければならず、老人、女、子供たちだけが家に残った。

突如、敵とみなされた日系人たちは、今まで友人だったはずの白人たちにつらく当たられる。


キリの弾くピアノは、今までの美しい調べとは違い、その時の彼女の感情に合せ、時には悲しく、つらそうで、そしてある時は激しい怒りに満ちていた。

周りの日系人は次々と姿を消していく。カナダの内陸奥地へ送られる汽車にのせられるのだ。

カナダ政府は当時、日本人にスパイをさせないことと、カナダ人たちから虐待を受けないための予防措置としてのことだと主張していた。しかし、寒さの厳しい内陸に追いやられた日系人はその冬をテントの中で過ごしている。


周りの白人たちは、日系人の住人がいなくなるとその家の家財や、おいていった衣類などを勝手に持ち出し、売っていた。家などは政府の手で値段がつけられ、勝手に売られていた。

それを見ていたキリは、いよいよキリたちの家族が内陸地に送られる前夜、愛していたピアノを狂ったように弾く。


翌日、キリは子供たちと一緒に、スーツケース一個という限られた財産を片手に、家を後にした。荷物のようにトラックの荷台に大勢が乗せられ、幸せに暮らした町を後にした。


キリたちが家を出たことを知った白人の青年が、真っ先に家へ入っていった。目的はキリのピアノだった。当時でもピアノは貴重品だ。いくら古くても値打ちはあった。戦前は親しくしていたが、今はもう敵国の人でしかない。その青年にはそのピアノを売って、自分のお金にしようと考えていた。

しかし、家にはピアノはなかった。床に引きずった跡があった。青年はなにが起ったのかわかった。キリは誰かに売られ、愛したピアノをけがされないように、自分の手で家の近くの海まで引きずって捨てたのだった。



これは戦争中、強制収容所に入れられた日系のデイビッド・鈴木さんが語った実際の話。それを聞いたイエローナイフに住むソフィアさんが心を動かされた。そしてカナダ人フォークシンガーのジェイムズ・キーラガンさんがキリのピアノという歌を作り歌っていることを知り、彼の許可を得て、その話を歴史ドキュメンタリ―映画として完成させた。

十五分という短い画像だったが、余計なシーンや会話がないため、伝わりやすいと思う。


この話をカナダ人が語り、画像として残すというところに、国境のない愛を感じた。生まれた国でその人の色を判断し、差別することをやめるべきだということ。

これを日本人がキリの目で書いたとしたら、それはただの被害にあった日系女性の話になっていたかもしれない。カナダ人が、その出来事を悲しく思い、日系であるという理由だけで昨日まで友達だった人を敵視したという点、戦争というものは昨日の友を今日の敵にしてしまうと強く印象付けられた。


多くのカナダ人は、日系人が内陸地に強制収容所に送られたことを知らない。カナダ政府は、周りのカナダ人からの迫害から身を守るために移ってもらうと言っていたが、留守にしていた間に財産は勝手に売られ、戦争終了後は元の家に戻ることを許されなかった。


他にも、突然戦争でいなくなった日本人家族のために、近所の人が政府からその家具を買い取り、ずっと保管してくれていたという話も聞いた。そのカナダ人は、出て行った日本人がいつ戻ってくるのかとずっと待っていたそうだ。そういう人たちは、人を肌の色で区別することはないのだろう。



ツイッターに小さなことをつぶやくようになりました。どこかに書くと自分の中からその話題が消えてしまうのです。そんなわけでご無沙汰しておりました。


次はいつ書くのか自分でもわからないために完結とさせていただきます。もし、ツイッターであえたらあいましょう。

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