わたしをゆるしてください
わたしをゆるしてください。
私を許してください。
貴方がたは旅の私を快く迎え入れてくださった、私はその気持ちに報いたいと思った、
それに間違いはないのです。
ただ私はやり方を間違えてしまった。
私の大きな力は大きすぎて、ただの人である貴方がたを呑み込んでしまった。
心優しかったはずの貴方がたに、猜疑心を与えてしまったのは私。
けれど、あぁ、けれど、
私を許してください。
そんなつもりはなかったと言えば簡単なこと。
本当に、そんなつもりはなかった。私はただ、貴方がたの優しさに報いたかった。
その結果貴方がたは優しさを忘れてしまったけれど、
あぁ、けれど、私を許してください。
私がここから去ることを許してください。
私がこのままここにいては、貴方がたは際限なく求めるようになる。
そうなれば、いつか、心優しかった貴方がたも討たれる側に回ってしまう。
そんなことは哀しすぎる。私を許してください。
そうでないなら私は罪を償うから、どうか私に死を与えてください。
名もなき神の慟哭を、名もなき巫女は聞き届けた。
けれど人は愚かにも、名もなき神に生贄を捧げた。
そうではない、そうではないのだ。死んだものを与えてほしいのではなく、神は自身を殺してほしかった。巫女だけはそれを知っていた。
生贄となった巫女だけは。
――そして時は流れゆき、その地は呪われた大地だった。
神の言葉を間違え、神に間違えたものを捧げた人々は、その嘆きによって滅びたのだった。
名もなき神ももろともに。