参噺(さんわ) 迷界編「留魂論」
三途鉄道。それは、死者が此岸から彼岸へと渡るための交通網。彼岸の直近にある閻魔堂はその三途鉄道の巨大ターミナルにあたる。そこで、死者が地獄か極楽か、行き先を裁判する。裁判では、閻魔族の若、閻魔大王が裁判長となる。
「この浄玻璃の鏡には、お前の全ての行為が写っておる。嘘では誤魔化せんぞ」閻魔大王は冷酷に言い放つ。
「う、嘘など着いておりません。私は、た、ただ普通に暮らしてました」死者はおどけながら言う。
「ほぅ……カジヤを用意しろ。こいつは地獄の最下層行きだ」閻魔大王は部下に命令をする。
「はい!閻魔大王様!」そして、閻魔大王は次の死者の裁判をする。
三途鉄道は、迷界駅で点検を行う。その間、三途鉄道の乗客達は迷界駅から広がる駅街で過ごす事ができる。広さは、一つの街くらいの大きさがある。
「これからどうするんだ?」聖は少女に問う。
「まずはお金を集めないと」少女は言う。
「お金?三途で使うお金って………」
「銭。三途鉄道のチケットは六文銭で買える。ここで、正式な乗客になっておかないと」
「あそことかで?」聖が指した先には「買取」と書かれた暖簾がかかった店があった。
「そう。何か持ってる?」
「これならあるけど……」聖が取り出した物を持って、少女は店でお金と交換した。
少し時間が経ち、少女が戻ってきた。
「120000銭!物凄くいい値で売れた!」少女は笑顔になりながら聖に話しかける。
「次は…………まずは旅館の予約しようか!」
聖と少女が向かった先は、駅街の端にある建物。温泉も大きく、部屋の内装、浴衣貸し出し、高級料理といった様々な方面で人気の旅館だった。
「予約お願いします」聖は言う。
「予約ね。坊ちゃんとお嬢ちゃんの2人でいいね?なら、特別に15000銭頂戴する。わたしゃ、情人が好きなんや。わたしゃからのご愛重や」受付の女将はそう言って、部屋に案内してくれた。
「ここが、お二人方のお部屋『情』や。お夕食ができるまではのんびりしていっておくれ。駅街は良い所やからな」女将は聖に部屋の鍵を渡し、受付に戻った。
「ふぅ、疲れたー」聖はそう言いながら部屋の畳に寝転がった。
「ここが此岸だったらな……」少女は、部屋の色々な所を見渡して呟く。
「ん?」聖が気にかける。
「いや、ただの独り言」少女は咄嗟に返す。と、少女は思いついたように話し出す。
「それより、どこか行かない?せっかく駅街に来たんだしさ、女将さんも良い所いっぱいあるって言ってたし、どこか行かない?」
「どこに?」
「それは…………」少女は言葉に詰まる。
「別にいいでしょ。今日は、旅館で休んでる。この旅館、結構良い所だし。ね?」
「分かった。私、ちょっと温泉入ってくる」
「いってらっしゃい」聖はそう言いながらも畳に寝転んでいた。
少女は付けていた彼岸花の花飾りと脱いだ服をカゴに入れて、大浴場に足を踏み入れる。時間が時間で、人はほとんどいなかった。少女は、浴槽のお湯を掬い、桶で体を洗い流す。そして、少女は大浴場の浴槽に浸かる。
「聖、なんかいつもと違う……」水面にまで口を下ろし、頬を膨らませながら、水をブクブクさせる。少女は、数分間の間お湯に浸かり、途中で上がる。
「髪を洗うか」少女は、シャワーの置いてある洗い場に行き、シャンプーを髪に付ける。そして、泡立てていく。
「これくらいかな」少女は、シャワーでシャンプーを洗い流し、リンスで髪にツヤ感を出す。少女は髪を洗い終わり、露天風呂に行く。そこには、少女よりも年下の女の子が泣いていた。
「どうしたの?」少女は声をかける。
「髪留めが……これに……流されちゃって……」女の子は下を指差す。
「吸水口………」少女は流石に流されたものを取り戻せるほどの気力はなかった。だが、どうにもこの女の子が可哀想だ。少女は、一度更衣室に戻り、彼岸花の花飾りを持ってくる。
「これ、あげる」少女は言う。
「いいの?お姉ちゃんのじゃないの?」女の子は言う。
「いいの。別に」少女は風呂から上がろうとするが。
「お姉ちゃん!ありがとう!大好き!」女の子は無邪気に言う。だが、少女は冷たく言い放ってしまう。
「いい?人に対して簡単に好きって言ってたら、絶対に後悔するから」少女はそのまま更衣室へと行ってしまう。
少女が部屋に戻った時には、聖はさっきのように寝転がってはいなかった。
「お帰り。そろそろ、夕食ができるらしいから、布団ひいといた」
「浴衣着たいから、ここの襖閉める」少女はそう言い、襖を閉めた。
「なぁ、名前教えてくれないか?」聖は襖越しに話しかける。
「…………リオ。そう呼んで」少女は、紐を巻き、その上に帯を巻く。
「リオ、な。なんか聞き覚えのある名前だな……」
聖と少女は浴衣に着替え終わり、部屋に鍵をかけて食堂に向かう。食堂に向かう廊下の途中で、鏡が飾ってあったが、2人はスルーして、そのまま食堂に向かっていった。




