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7 カエルの顔に

 かつてのわたしは、亜麻色の髪に若草色の瞳のごく普通の女性だった。

 けれど今は……濃緑色の髪の生えた、アオガエルの顔になっている。


「……」


 まさか人外の姿になるとは。

 正直言って、かなりの衝撃だった。

 命を捨てた身なので文句は言えないが、まさかこんな風に生まれ変わるとは思っていなかった。幸い、カエルといっても目がくりくりとした割とかわいらしい方のカエルだったので、思ったほど怖くはない。

 それでもいきなり人に見つかったら、ほとんどの者がわたしを化け物と思うだろうと思った。


 星の「魔力」によって生まれた「生き物」なら、「魔物」とも言えるのかもしれない。


「魔物たちはこんな風に、この世に生まれてきたのでしょうか……」


 ただ、わたしは元は人間だ。

 本当の魔物のように人を襲うことはない。とりあえず、人目を避けて暮らしていればさして問題はないと思い、わたしはこの沼の周辺で暮らすことにした。



 数日が経ち、わたしは魔力が使えることにいきなり気づいた。

 体の中に流れる魔力に集中すると、いろいろなことができるようになったのだ。


 試しに、沼の真ん中に浮き島と小屋とを作ってみた。

 さすがに雨や風にさらされつづけるのは不快だったので、休めるところを作ってみたのだ。

 生まれ変わってから、わたしは食事や睡眠を必要としなくなり、怪我をしてもすぐ魔力で修復される体となっていた。疲れや、病とも無縁。でも、やはり元が人間なので、以前の暮らしに近いことをすると癒されるのだった。


「でももうこれは……別の生き物になってるんでしょうね」


 もはや生き物と呼べるかどうかも怪しかった。

 人間とも、魔物とも違う、まったく別の生き物……。


 天から授かった魔力の星の奇跡。この状態がいつまで続くかはわからない。この魔力もいつか尽きるかもしれない。そのとき、わたしはどうなるのだろう。


「そうだ、ジェイド様はたしか……」


 世界のどこかには、先天的に魔力を備えた人間――男性なら「魔法使い」女性なら「魔女」――が産まれることがあるのだと、おっしゃっていたことがあった。どうやって産まれるかはまだよくわかっていないが、かれらは莫大な魔力を持っていて非常に長生きするのだと。


 そうだ。それは今のわたしだ。

 このように「魔女」は産まれていたのかもしれない。

 わたしは「魔女」として生まれ変わったのだ、きっと。そう思った。


「はあ、でもこれからどうしましょう……」


 とはいえ、特にやりたいことはなかった。

 お父様もジェイド様もとっくに亡くなられている。

 わたしは生きる目的がないまま、毎日濃緑色の沼の水面を眺め、朝昼晩と小屋の中で過ごすだけの生活を送っていた。


 そんなある日。

 沼に久方ぶりの訪問客が現れた。


 それは若い娘で、今にも死にそうな顔をしていた。

 わたしは昔の自分を見ているような気分になり、つい彼女に近寄ってしまった。

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