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第八話 手応えの獲得

 上手くまとまった話は早く進めた方がいい。というわけでクシャナたち四人はその日のうちに幼魔獣(コクーン)討伐へと向かった。


 荒れ地の先に老朽化した遺跡が見えてくる。

 今回は幼魔獣による物陰からの不意打ちなんて心配はなさそうだ。

 なぜなら遺跡は既に黒い瘴気が滲んでおり、幼魔獣の存在を明確にしていたからだ。

 まだ日中だというのに、近付くにつれ視界がどんよりと淀む。


「いた……っ、右の柱の奥……」


 ナタリーが声を潜ませつつ、背中から素早く銃剣を引き抜いた。

 二百メートルほど先に目を凝らすと、ナタリーの言う柱の奥に巨体がちら見えた。


 呼吸のような間隔で瘴気を噴く骨板(こつばん)が首から背骨、さらに長大な尻尾にまで及んでおり全長が刺々しいシルエットを象っている。

 前回討伐した幼魔獣の成長版といったところか。


「──かなり平らげてきたみたいだな。サイズもある」

「まずはこっちから仕掛けてくカンジでいいすよね、クシャナさん」


 エンブリオが長剣を手にして身構える。


「風下で背後も取れてるし、まずは大技を叩き込もうかと」


 クシャナは頷いた。


「いいと思う。ナタリー、エンブリオの動き見つつで追撃と援護に回りな」

「わかったっ」


 接近での戦法を素早く固めると、狙撃手のマーヴィンが挨拶のように帽子をくい、と動かして三人を置いてその場を移動し始めた。

 挨拶したとき同様、よほど口数の少ない青年らしい。

 マーヴィンを見やりながら、エンブリオがクシャナらに補足する。


「──あいつがサポートとか幼魔獣の足止めをやってく感じすわ。こっちから指示出せないのは難儀かもだけど、邪魔にはなりませんよ」

「助かるよ」


 腕前について今さら問い質すのは野暮だ。すんなり頷くクシャナに「……あの、」と言ってきたのはエンブリオだった。


「ここまでスムーズに話が進んでるんで、ちょっと一応確認しときたくて。

 この討伐の報酬って、四等分ってことで……オーケーなんすよね?」

「ああ、もちろん」


 クシャナはそこで思い出したように、頭を掻いた。


「そっか、悪いね。さっさと討伐に出たくてお金周りの話をしていなかったか」


 エンブリオは気まずさを誤魔化すように軽く笑った。


「はは、すんません。こちらこそ、こんなタイミングで。いやでも複数と討伐に出ると報酬周りのトラブルってしょっちゅうだったんで。出来高とか首を獲ったやつが七割だろとか、後でモメたりして」

「お金は大事だからねぇ」


 にへ、と同意するようにクシャナも笑う。


「成果とか関係なく四等分にしよう。俺は基本サポートに回るし、メインはエンブリオとナタリーの二人で仕留めてもらうつもりだ。

 頼んだよ、四人が全員無事なままで討伐しよう」

「──あ、はい。ですね、ぜひ」


 全員無事、という言葉にエンブリオは目をしばたたかせて頷いた。

 先ほどまでの誤魔化し笑いは薄れたものの、その目はまだ含むものがある──ように見える。

 雑念呼ばわりするのは無粋だが、これから幼魔獣を相手にする上での集中力不足はいなめない。


 ──何か思うことでも、とクシャナが口を開きかけたところで。


「奥に移動しそうだよっ、もうぶつかりに行ってもいいのっ?」


 会話の最中も幼魔獣への注視に集中していたナタリーが鋭い声を差し込む。

 朽ちた柱の奥で、巨体がずしん、と足音を響かせながら移動している。


「まかせた」

「了解っ」

「──では」


 クシャナの声に、ナタリーとエンブリオが同時に駆け出す。

 気づかれないよう足音を極力殺した足運びで、二人は一気に幼魔獣(コクーン)への距離を詰めていく。

 クシャナは周りを見回した。

 どこかに潜伏したであろうマーヴィンが狙撃に備えているはず。

 遠距離攻撃は彼に任せ、自分は援護に動きだす。

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