プロローグ2「天才は笑わない」
俺の名はゼイドラク・ディ・ヴェルミュール。通称Dr. ゼイドと呼ばれている。
医者、科学者、発明家──天才とは、一つの肩書きでは語れない存在のことを言う。
そして、天才とは孤独なものだ。
この世界は、愚か者で満ちている。能力も知性も備えていないくせに、妙にプライドだけは高い。滑稽なことに、自分の愚かさにすら気づいていないのだ。街を歩けば、そんな無知な民衆ばかりが目につく。井戸端会議で聞きかじった浅薄な知識を振りかざし、さも賢いかのように振る舞う連中。彼らの会話を聞いていると、あまりの無知ぶりに吐き気を催す。
学問を軽視し、知性を嘲笑い、努力することを嫌う。そんな怠惰な精神の持ち主ばかりが、この世界には蔓延している。彼らは複雑な理論を理解する能力がないくせに、「そんな小難しいことは役に立たない」などと開き直る。自分の無能を棚に上げて、知識そのものを否定するのだ。
俺は準男爵。形式上は貴族だが、身分としては最底辺。いわば"半貴族"と呼ばれる者たちだ。中途半端な血筋、中途半端な立場。それはつまり、下からは妬まれ、上からは嘲られるということだ。
ヴェルミュール家は、元々は騎士階級から成り上がった新興貴族だった。俺の曾祖父が戦功を立てて準男爵の爵位を得たのが始まりで、まだ家名に歴史の重みはない。古い貴族たちからは「成り上がり」と陰で囁かれ、平民からは「貴族のくせに」と疎まれる。まさに板挟みの状況だった。
領地も小さく、収入も限られている。公爵家や侯爵家が持つような広大な領土も、莫大な財産もない。せいぜい小さな村一つを治める程度の領主でしかない。それでも貴族としての体面は保たなければならず、その結果として常に金銭的な困窮に悩まされていた。
天才である俺が、愚か者どもに見下され、嘲られてきた。そのたびに、無知な連中が放つ薄ら笑いが、脳裏に焼き付いて離れない。
貴族社交界での屈辱は数え切れない。公爵家の晩餐会で、俺が新しい医学理論について語ったときのことだ。「準男爵ごときが生意気な」「身の程を知れ」「お前の理論など戯言だ」──そんな嘲笑の渦に晒された。彼らには理解する知性がないくせに、血筋だけで俺を見下すのだ。
特に忘れられないのは、リードラント公爵の三男、フレデリック・フォン・リードラントの言葉だった。
「ゼイドラク君、君の話は確かに興味深いが、我々のような古い家柄の者には理解が難しいね。もう少し…庶民にも分かりやすい話をしてくれたまえ」
表面上は丁寧な言葉だったが、その裏に込められた軽蔑は明らかだった。会場にいた他の貴族たちも、クスクスと笑いを漏らしていた。俺の理論が理解できないのは自分たちの無知のせいなのに、それを俺の説明不足だと言わんばかりの態度だった。
カール侯爵夫人などは、扇子で口元を隠しながらこう言った。
「まぁ、お若いのに随分と難しいことをおっしゃるのね。でも、学問ばかりに熱中していると、世間知らずになってしまいますのよ」
世間知らず? 俺が?
この愚かな女は、俺がどれほど多くの分野に精通しているかも知らずに、そんなことを言うのか。医学だけでなく、政治、経済、軍事、芸術──あらゆる分野で俺は第一級の知識を持っている。世間知らずなのは、お前たち無知な貴族どもの方だ。
学会でも同じだった。画期的な治療法を発表しても、「若造の妄想」「非現実的」「既存の理論の焼き直し」と一蹴される。嫉妬に狂った老いぼれ学者たちが、俺の才能を認めたくないだけなのだ。
王立医学学会での出来事は、特に記憶に残っている。俺が外科手術の新しい技法について発表した時、座長を務めていた老医師のガルバルド・コーネリアスが立ち上がってこう言った。
「ゼイドラク君、君の提案する術式は確かに理論的には興味深い。しかし、実際の臨床現場では非現実的すぎる。我々のような経験豊富な医師には、そんな危険な実験は推奨できない」
危険な実験?
俺の術式は、従来の方法よりもはるかに安全で効果的だった。だが、古い考えに固執する老害どもには、新しい技術を受け入れる度量がないのだ。彼らは自分たちの無能を「経験」と呼び、俺の革新を「危険」と決めつける。
会場にいた他の医師たちも、コーネリアスに同調した。
「そうだ、そうだ。机上の空論では患者を救えない」
「手術経験が浅い若者には分からないことがある」
「もっと謙虚に先輩方の教えを請うべきだ」
謙虚? 先輩?
この無能な老人どもから学ぶことなど何もない。彼らは時代遅れの技術にしがみつき、新しい知識を受け入れることを拒む。患者のことなど考えておらず、ただ自分たちの権威を守ろうとしているだけだ。
笑止千万にも程がある。
当然、怒りが湧いた。殺意すら浮かぶこともあった。感情のままにその馬鹿共を殺すのも容易い。俺には毒物の知識もあるし、人体の急所も熟知している。一人や二人、始末するのは造作もないことだ。だが、そんな原始的な方法には興味がなかった。
身分差など関係ない。己の手を汚さずとも、他人を使えばよい。馬鹿共を駆逐する手段など、幾通りも思いつく。政治的な陰謀、経済的な破綻、社会的な失墜──知性ある者にとって、愚者を破滅させる方法はいくらでもある。だが、結局──それは対処療法に過ぎない。
馬鹿は、いくらでもいるのだ。きりがない。
一人の愚者を排除しても、すぐに別の愚者が現れる。根本的な解決にはならない。この世界そのものが、知性よりも血筋や財力を重視するような歪んだ構造になっているのだ。
ならば、この世に、天才の俺が生きる意味はあるのか?
俺は探し始めた。この世界に、俺の知性を満たす何かがあるのかを。
論語、孫子、五経──有名どころの書物はすべて一日で読破した。古典哲学から現代の論文まで、手当たり次第に読み漁った。図書館に籠もり、古書店を巡り、遠方の学者からも書物を取り寄せた。
しかし、どれも物足りなかった。表面的な知識の羅列か、論理に穴のある推論ばかり。本当に知的な刺激を与えてくれる書物は皆無だった。
時には賢者と称えられた老学者に弟子入りしたこともあった。
最初に師事したのは、プラトニア大学の哲学教授、マルコス・アリステイデスだった。「現代の賢者」と呼ばれ、多くの弟子を持つ高名な学者だった。俺は期待に胸を膨らませて彼の元を訪れた。
だが、すぐに分かった。どれも浅い。評判先行で、底の浅い連中ばかりだった。
哲学者アリストテレス・ザ・ワイズと呼ばれた男は、三日で俺の質問に答えられなくなった。「君の思考は深すぎる」などと逃げ口上を並べるだけだった。
俺が提示した「存在と認識の相互関係における第三項の必要性」について問うた時、彼は顔を赤らめてこう言った。
「ゼイドラク君、哲学とは人生を豊かにするための学問なのだ。そんな複雑な思考実験よりも、もっと実践的な知恵を学んではどうかね」
実践的な知恵?
哲学の本質は真理の探求ではないのか。彼が「賢者」と呼ばれているのは、難解な問題から逃げる技術に長けているからだということが分かった。
数学者クローディウス・ナンバーズは、俺が提示した新しい公式の証明に一週間もかかった挙句、間違った答えを出してきた。
俺が微分幾何学の応用問題を出した時、彼は最初の三日間、問題の意味すら理解できずにいた。
「この式の意図するところが分からない。もう少し基礎的な説明をしてくれないか」
基礎的?
俺が示したのは既存の理論を発展させた当然の帰結だった。それが理解できないということは、彼の数学的基盤がいかに脆弱かを物語っている。
一週間後、彼が持参した解答を見て、俺は愕然とした。計算過程の初歩的な段階で既に誤りがあり、結論は完全に的外れだった。中学生でももう少しましな解答を出すだろう。
歴史学者として名高いエドワード・クロニクルス博士には、古代文明の政治構造について質問した。彼は三十年間古代史を研究していると豪語していたが、俺の問いかけに対してまともな回答ができなかった。
「古代の政治制度は現代とは大きく異なるから、現代の価値観で判断すべきではない」
そんな逃げの答えばかりだった。俺が知りたかったのは価値判断ではなく、政治システムの構造的分析だったのに、彼にはその違いすら分からなかった。
彼らの矛盾点を指摘すると、決まってこう言うのだ。
「君は賢すぎる。それが欠点だ」
──それが欠点?
ならば、お前たちの凡庸さは何と呼べばいい?
俺の知性を理解できない自分たちの無能を棚に上げ、俺の優秀さを「欠点」と呼ぶ。これほど滑稽な話があるだろうか。彼らは自分たちのレベルに俺を引きずり下ろそうとしているだけなのだ。
面白くない。つまらない。知的好奇心は急速に衰えていった。
ああ、誰も俺を理解しない。この世の仕組みを全て理解してしまった。新たな知見を得ることはないとわかったときの絶望は、計り知れなかった。
このまま無為に生きるくらいなら、いっそこの世を地獄に変えて死んでやろうか──そんな衝動に駆られることも、何度もあった。
孤独だった。真の意味で、完全に孤独だった。同じレベルで会話できる相手など、この世界には存在しないのだ。俺の頭脳は、この世界には高度すぎる。まるで大人が幼稚園に放り込まれたような感覚だった。
だが、天才とは滅びるために生まれてきたのではない。凡人には理解されずとも、歴史を塗り替えるために存在するのだ。
ふふ、若かったな。
その頃の俺はまだ、世界の"奥底"を知らなかったのだ。
☆★
俺は、とあるお方との出会いによって、救われた。
そのお方の名は、黒巌・ディ・ヴェルミュール。俺のお祖父様だ。
本物の天才。
俺は独りではない。この世に天才は二人いた。いや、俺とはスケールが違う真の天才だ。お祖父様と比べれば、まだまだ俺は半人前、道半ばの修行者である。
初めて祖父と対面したのは、俺が十歳の時だった。父は早くに亡くなり、母も病弱で、俺は半ば孤独に育っていた。そんな折、突然現れた祖父は、まさに俺が求めていた存在だった。
父の死は、俺が七歳の時だった。落馬事故という、あまりにもあっけない最期だった。準男爵としての職務で地方を巡回中、馬が石につまずいて落馬し、頭を強く打って即死だった。
父は俺にとって、優しいが少し頼りない存在だった。学問にも関心が薄く、領地経営も得意ではなかった。だが、人格者ではあった。領民からは慕われていたし、俺に対しても愛情深く接してくれていた。
母は父の死後、急速に体調を崩した。元々病弱だったが、父を失ったショックで更に悪化したのだ。床に伏すことが多くなり、俺の面倒を見ることもままならなくなった。
そんな状況で現れたのが、祖父だった。
黒巌・ディ・ヴェルミュール。父の父でありながら、俺は彼の存在すら知らされていなかった。父は祖父について語ることを避けていたし、母も彼の話題になると口を重くした。
初対面の祖父は、威厳に満ちた老人だった。背は高く、白髪を後ろに撫でつけ、深く鋭い眼光を持っていた。その瞳には、俺が今まで見たことのないような知性の光が宿っていた。
祖父の書斎は、まるで別世界だった。天井まで届く本棚には、この世のあらゆる学問の書物が並んでいる。しかし、それだけではない。俺が見たこともない図表、複雑な数式、不可解な機械の設計図──それらすべてが、祖父の手によるものだった。
「ゼイド、お前は本物の探求者の目をしているな」
祖父の最初の言葉だった。その瞬間、俺の心に稲妻が走った。ついに、俺を理解してくれる人に出会えたのだ。
生涯学ぶべき師に出会ったのだ。俺の価値観は崩壊した。これまでの常識がひっくり返った。この世はこれほどまでに神秘的で探求心を刺激するものだったのだ。
祖父の知識は、俺の想像を遥かに超えていた。医学、数学、物理学、化学──あらゆる分野で最先端の理論を展開していた。それも、この時代の学者たちが到達していないレベルの知識だった。
「電気とは何か、知っているか?」
祖父がそう問いかけた時、俺は首を振った。電気?聞いたことのない概念だった。
「電気とは、物質の根本的な性質の一つだ。目には見えないが、この世界の全ての現象に関わっている」
祖父は手製の装置を使って、実際に電気を発生させて見せてくれた。金属の棒が火花を散らし、雷のような音が部屋に響いた。
俺は息を呑んだ。こんな現象があるなんて、知らなかった。学会の誰一人として、こんなことを語った者はいなかった。
「蒸気の力を利用する方法は?」
祖父が次に見せてくれたのは、小さな蒸気機関だった。水を沸騰させて作った蒸気で、重い物体を動かすことができた。
「この原理を応用すれば、馬車よりも速く走る乗り物を作ることができる。人間が歩くよりも遥かに速く、重い荷物を運ぶことも可能だ」
俺の常識が、次々と覆されていった。
「光とは波なのか粒子なのか?」
この問いに対しても、祖父は明確な答えを持っていた。複雑な実験装置を使って、光の性質を実証してみせた。
──俺の質問に、祖父は常に明確な答えを返してくれた。それも、この世界の誰も知らないような高度な理論と共に。
賢しい子供だった俺に親身に接してくださった。一世紀も二世紀も進んだ知識を教えてくださった。
とめどなくあふれる知識の泉。
俺がいくら質問しても終わらない。一を聞き百を知ると言われた俺が、掘っても掘っても掘りつくされない。無限の鉱床。それどころか疑問があふれるほどだった。
楽しかった。学ぶとはこれほどまでに楽しく感動するものだったのだ。
あぁ、偉大なるお祖父様のおかげだ。
しかし、祖父から学んだのは学問だけではなかった。世界の真実についても教えてくれた。
「この世界は不公正だ、ゼイド」
ある日、祖父がそう語り始めた。
「真の価値を持つ者が正当に評価されず、無能な者が権力を握っている。血筋と財力だけが物を言う、腐敗した社会だ」
祖父の言葉は、俺の心に深く響いた。俺が感じていた不満と怒りを、的確に言語化してくれたのだ。
「人は才能によって評価されるべきだ。断じてたまたま生まれついた身分で決まるべきではない」
天は人の上に人を造らず,人の下に人を造らず
音韻もよいし含蓄もある。未来の人々が感銘を受け続ける偉人の言葉だ。他にも薫陶すべき言葉は幾千にも上るが、ここでは割愛する。
「学問に励め、ゼイド。知識こそが真の力だ。血筋や地位など、所詮は虚飾に過ぎない」
「この世界を変えるのは、真の知性を持つ者だけだ」
祖父の言葉一つ一つが、俺の魂に深く刻まれた。
だが、祖父から聞かされた話は、俺の心を深く傷つけるものでもあった。
そんな偉大なお祖父様だが、世間の評価は悪い。いや、その名誉は、地に堕ちていると言ってよい。
まったく唾棄すべき事だ。
お祖父様の偉大な功績を、愚物共に奪われたのだ。あまつさえ、奴らは祖父様を嘘つき呼ばわりするのだ。盗人猛々しいにも程がある。
祖父が語ってくれた真実は、俺を愕然とさせた。
電灯をはじめ蒸気機関車、活版印刷機等々、人類の英知は全て祖父様の発明のおかげである。
「私が最初に電気の実用化を提案した時、学会は大笑いした」
祖父の声には、深い痛みが込められていた。
「『そんな危険なものが実用化できるはずがない』『夢物語だ』『科学者としての良識を疑う』──そんな罵声を浴びせられた」
だが、祖父が発表した理論は「非現実的」「実現不可能」と嘲笑された。王立科学院の重鎮たちは、「黒巌の妄想」と呼んで一蹴したのだ。そして数年後、同じ理論を別の発明家が「発見」し、栄光を手にした。祖父の名前は歴史から消され、詐欺師や法螺吹きのレッテルを貼られた。
蒸気機関についても同じだった。
「蒸気の力で車両を動かすという私の提案を、『気の狂った老人の戯言』と一蹴したのは、王立工学会の会長ハーバート・スチールワード卿だった」
祖父の目に、怒りの炎が宿った。
「だが、十年後、スチールワード卿は別の発明家が『開発』した蒸気機関を『画期的な発明』と絶賛したのだ。その設計図は、私が提示したものと寸分違わなかった」
活版印刷機についても、医学の新しい手術法についても、建築技術についても──全て同じパターンだった。祖父が提案した時は嘲笑され、数年後に別の者が「発明」すると絶賛される。
「彼らは私の理論を盗み、自分たちの手柄にした。そして私を詐欺師呼ばわりして、学会から追放したのだ」
許せん。絶対に許すわけにはいかん。
祖父様は、失意のうちにお亡くなりになられた。あまりにも無念であっただろう。最期の日、祖父は俺にこう言った。
「ゼイド、いつか必ず……この世界に真実を知らしめよ」
その言葉が、俺の使命となった。
祖父様の無念は、このゼイドが必ず晴らす。あの方の名を汚した連中──全員、骨の髄まで後悔させてやる。お前らの"罪"は、俺が定義する。
復讐の手段はある。
禁断の研究【精神共鳴装置】
精神共鳴装置"──正式名称《Mind Resonance Core》は、個体Aと個体Bの間にある"精神信号"の位相共鳴を人工的に誘発し、感情・思考・信念といった深層精神に干渉する装置理論である。
これには媒体としての青晶核を必要とする。
青晶核は魔力を蓄積し、同調波を増幅・変調する性質を持ち、特定の記憶や感情に同調した"印象波"を抽出・投射する機能を果たす。
この理論が完全に実証されれば、一人の"意思"が、数千、数万の人間の行動を遠隔から"共鳴"させることが可能になる。
つまり、完全なる支配だ。
王も、皇帝も、教皇も、すべて俺の意のままに踊らせることができる。彼らが持つ権力、財力、軍事力──それらすべてが俺のものとなる。
この技術は、祖父が残してくれた最後の遺産だった。彼の研究ノートの中に、理論の原型が記されていたのだ。祖父も、この技術の完成を夢見ていたに違いない。
「人の心を操る技術か……興味深いが、危険でもあるな」
祖父がノートに書き残した言葉だった。
「だが、この腐りきった世界を変えるためには、必要な技術なのかもしれない」
祖父の意志を継ぎ、俺がこの技術を完成させるのだ。
これで高位貴族はおろか国王、ひいては皇帝までも意のままに操り、この世界の覇権を握る。
そして、この世界の生きとし生ける者全てに知らしめてやる。
お祖父様を罵り法螺吹き扱いしたこと、それがどれだけ愚かでどれだけ罪深い行為だったか、骨の髄までわからせてやる!
俺は既に最初の実験体を確保している。完璧な条件を満たした被検体を。
復讐は、もう始まっているのだ。
地下に建設した秘密の研究施設では、日夜実験が続けられている。青晶核の精製、精神共鳴装置の調整、そして被検体の選定。全てが祖父の復讐のために。
世界は変わる。俺の手によって、この腐りきった社会は浄化される。真の知性が支配する新しい世界が築かれるのだ。
お祖父様、もう少しお待ちください。あなたの無念を晴らす時が、ついに近づいています。