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カリスママナー講師の教え

「昼食は如何なさいますか?」

「頂くわ」

「かしこまりました」


 メイドのミヤゲと共に、ホールへ向かった。

 こちらの住人と喋る際、アンジェリカの口調に引っ張られる。あたしはいつもの喋り方だけど、勝手に翻訳されているのかも。


 そもそも、チャキチャキの日本人がヨーロッパ風諸国の言語をなぜ理解できるのだろう?

 あれ、転生系ってこの手のツッコミ厳禁だっけ? 通じればヨシ。


 貴族の食卓は長テーブルと相場が決まっている。ファンタジー作品の食事シーン、大体伝言ゲーム御用達の広さじゃん。家族憩いの時間? 何それ、デリシャスなの?

 あたしが、テーブルクロスの驚きの白さに驚いていると。


「おまたせいたしました。本日のランチは、海鮮サラダとシェフ特製こだわりビーフシチューでございます」


 配膳カートからドンドン食器を並べてくれた。


「ありがとう」

「……っ!? な、はいっ。いえそんな、失礼しました」


 ミヤゲは目を丸くするや、勢い余ってスプーンを床に落としてしまう。

 あたしが自分で拾おうと屈んだ途端、


「アンジェリカ様――ッ! そのようなこと、メイドにお任せくださいっ」

「えぇ……そうでしたわね」


 公爵家令嬢の振る舞いじゃなかったか。アンジェリカなら、ここでお小言の一つは飛ばす。

 他人を怒鳴り散らすの、苦手なんだよなぁ~。こっちも普通に嫌な気分になるし。

 あたしの庶民心が悪役令嬢道の妨げになるかもと杞憂を抱いたちょうどその時。

 目前に置かれたビーフシチューを直視するや、ドクンと鼓動が響いた。


「ミヤゲ。こ、これは……何かしら?」

「はあ。ビーフシチューですが」

「そうでしょうとも。ではこの盛り付けは……何かしら?」

「シチューとライスを合わせたワンプレート形式が、」


 あたしは――わたくしは全身が焦がれるような感覚で。


「利き腕の方にライス! 逆側にシチューッ! ライスをシチューに寄せながら頂くことで、お皿をあまり汚さず綺麗な食事作法が取れるでしょう? もてなしてくれた方への配慮を忘れることなかれ」


 自分の意思とかけ離れた言動がまくし立てられていく。

 ――マナー魔法、ね。

 あぁ、分かった。直感してしまった。


「あなた、マナー違反でしてよ!」

「~~っっ!? 申し訳、ございませんでしたぁ~っ!」


 悪役令嬢にビシッと糾弾され、強いショックを受けたミヤゲ。

 頭がフラフラ動き、目線は定まらずまるで命令待機状態。

 デジャブ。ブラック企業の新人研修で味わった、社畜の隷属化と極めて類似。

 ……マナー・クリエイション。ネーミングはかっこいいけれど、なんてことはない。


 ただの謎マナーでしたわ。


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