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 ̄後編_2 『神の強欲を満たすモノ』





「じょう…けん」 





「ミユが嫌うことは一つ。約束を果たされないことだ。




それを防ぐためにも、難解な条件を用意している。それ故、契約が破棄されたことはこれまで一度たりともない。」





「そうなんだ…」





「お主、弟子のくせして師匠のことをなんにも知らんのだな。」





アルビナスはそれだけ言うと、部屋の中央に進む。





「…妾も、ここまで来たのだ。もうこの後何をやろうと変わらんだろう」





アルビナスは手を上に上げると、その手から“神力”が溢れ出す。





「…あるびなす…さま…?」






その神力は淡い光となって、部屋にあった無数の《贄の叫び》たちを包みこんでいく。






「せめて、叫びは妾が受け止めてやる。」






アルビナスはそう言うと、グッと拳を握り何かを引っ張るように下ろしていく。そうすると神力と共に《贄の叫び》がアルビナスの元に吸い込まれていく。






アルビナスの脳内に、贄たちの記憶が流れ込んでくる。






悲しみ、苦しみ、恨み、憎しみ、恐怖。あらゆる負の感情と共にそれは流れ込んでくる。





それを受け止めることは、重い重い苦しみや痛みを伴った。それでも、アルビナスは最後まで受け止め続けた。





それが全てアルビナスに吸い込まれた後、暫くアルビナスは何もせずにそこに立っていたが、ふいに身体がふらつく。






クリスは慌ててアルビナスを支えた。アルビナスはゲホ、と咳をするとその手には鮮やかな血がついている。






心なしか、残りの魔力量も大幅に減っているようだった。






「大丈夫ですか…?」






「っ…あぁ…」






アルビナスはふらりとクリスの元から離れると、部屋の壁に背をつけてズルリと座り込む。






「…クリス、暫く休ませてくれ。つかれた…」






「…はい。」







クリスは、すぐに認識阻害魔法を掛け、シールドを展開する。







アルビナスはそれを確認すると、そのまま目を瞑り眠りについた。すう…すう…と規則正しい寝息が聞こえ始めてくる。






クリスはマントを脱いで、アルビナスに掛ける。






クリスもアルビナスの隣に座り込み、膝を抱えた。






(お師匠、今どこにいらっしゃるんですか…?お師匠、お師匠は…




本当に、そんな事をしようとしているのですか…?)






クリスは膝に顔をうずめると、無理矢理目を瞑って眠りにつこうとした。





……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………






ミユは、どこか冷徹な面のある者だった。初めて会った時から、そんな片鱗は見せていた





だけど大体は優しく、面倒見が良い者だから余計目立っているだけだと思ってた。





だけど、あの王からの依頼を受けた時のアイツは少し…妙だった。





なにか、実験をしているような感じだった。





何かを、試しているような。






気づいた時には、すべては終わっていた。ミユは、大丈夫の一点張りで妾は何も分からなかった。

国王には一応監視をつけておいた。ミユが何をしたのかはしらないが、気になったからだ。






少し経つと彼は日に日におかしくなっていった。






人を殺すこと、騙すこと、彼が一等嫌っていたそれらを躊躇しなくなっていった。





何処かで気づいていた。

ミユのしたことの異様さを、それが禁忌に近いことだったのだと。






「ミユ!あの王のことだが…」






「あぁ、近頃様子がおかしいらしいわね」






「お主、何か知っているんではないか?あの時、お主何をした?」





「少し失敗してしまったの。改善点を探しているところよ」





だから、アルビナスは気にしないで良いのよ。




そう言ったミユの怪しげな笑みを今でも鮮明に覚えている。アレは何かを隠しているだけではない。暴走してるんだ。妾が


妾が、止めなくちゃいけない。だけど、もしもアレが罪を犯していたら…妾はどうすればいいんだ?妾がアレを殺さなければならないのか?妾が、ミユを、大切な人を?





妾には無理なんだ。妾は弱くて、大事な時にも決断できない愚か者だから。





……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………






「ちょっと、魔女様…!さっきから何してるんです?」





「落ち着いてオスカー。あと少しだから」





「あと少しって…本当に大丈夫なんですか?こんなことして…」





オスカーがそう言いながら今まで通ってきた道を振り返ると、そこには沢山の像が並んでいて、ミユの手によりの像一つ一つについている宝石はすべて外されていた。





ミユにポイポイその宝石を渡され持たされているオスカーは、その宝石から漂う妖しげな雰囲気を察知して背中にゾクリと悪寒が走るのを感じた。






そして最後の一つとなったとき、ミユはまた懐かしげに目を細めてその像に手を添える。






そしてその像についている宝石を取り外した。その宝石だけはミユ自身が巾着を取り出してそこに入れた。





「その宝石をすべて砕いてもらえる?」





「そ、そんなの無理に決まっているでしょう?!宝石を壊すには魔法を使わなければ無理です。


ですがここは神力が強くて魔力がうまく作用しないんですよ」





「いいえ、手で潰れるわ」





「はあ…?!あーっもう…!!やりますよ…」





言われた通りに手で宝石を強く握ってみるとまるで砂で作られていた泥団子かのようにはらりと潰れていく。

全ての宝石も同様に潰し壊すことができた。






「…なんで…」






「…これ程とはね。いいわ、ありがとうオスカー。」






そう言うと、ミユは魔力を自身に込め始める。彼女の体を覆うように溢れ出してきた魔力は次第にこの部屋を、この部屋の階層全体を、そしてこの城を包んでいく。






「…《ブレイク・ダイアモンド》」





その言葉と共に、バァァァンッと言う音と共に爆発し始める。なぜか建物のみを壊し始め、城全体が崩れ始める。





数十秒経った頃だろうか。爆発が止まる。






いや、止められたのだ。超越した力に、存在の手によって。魔法自体が消され、城全体の時間が巻き戻されていく。






「っ…なんだ…?!」





「えぇ、そうするでしょうね。早くでてきたらどう?そうするまで止めないわ」





ミユの方を向けばそんなふうに言葉を発しているが、誰と会話しているのかさっぱりわからない。だけど独り言とは違うように見えた。





「良いの?“心の欠片”も無くなった今、貴方達に残されたのはただの暴力的な神力で補った魔力だけでしょうに。



まあそれでも私よりも少ないから、時間の問題よ。それでも反抗し続けるというのなら私はここら一帯を全て灰とするわ」





その最後の言葉とともに、目の前の景色が一変して神々しいばかりの白、白、白が目に入る。そこはすべてが白でできていて所々に金の星が煌めいている。





そして中央にある環状の議席には様々な男女の…神たちが憤った様子でこちらを見ていた。





「魔女よ…!!これで二度目だな。前回もそうだが、お前の邪魔が入るのは心底虫唾が走る………!!!!」





「そうよ!こっちはただ食事をしているだけなのに、なぜお前はいつもそれを邪魔するの?!!?」





「お陰でこちらは腹が空き過ぎて、ろくに力も使えぬ!!我らの力をも奪ったお前には相応の罰を受けてもらおうぞ!!!」





「煩いわ。我儘な子供ではないのだから神らしく、人間の様子でも眺めてなさいな


それとも、もう一度力を奪われたいの?」





「ッ…」





ミユは余裕そうな笑みを浮かべているが、拳を強く握りしめている。相当な怒りだ。手から血がにじみ出ているのが見えた。





(神々と、対話しているのか…?!この方は何者なんだ…?!俺は、神力の圧におされてまともに立つこともできないと言うのに…!!)




「今日はお話をしに来ただけなのよ?そこまで興奮されるとうっとおしくて話もできないわ。




ところで…そろそろしきたりを変えるつもりはなくって?」





「何度も言うが一度決めたことを変えるつもりはない!!お前の言うことを聞くことも…!!!」






「えぇ、ま。そうでしょうね



だったら、お願いでなく命令にするわ。」






そう言うと、ミユは一番豪壮な装いの神に近づき2メートル以上も差のある大きな体をその細い腕で掴み上げる。





「ッ…ころ、ッす…きか…?!!」





「いいえ、まだ命令の段階だからそんなことしないわ。まあでも…生まれ変わらせるのもありかもしれないわね。



大丈夫。もしそうなっても…ヘビやトカゲの脱皮を手伝うようなことよ」





「おま、ぇ゙……!!!」






「まぁでも…命令も聞けないのなら、手伝ってあげましょうか?




後ろの方たちもよく検討なさることね。私は今、禁忌を侵さぬようにしてあげているのよ。神殺しの魔女なんて最悪な二つ名だしね」






「お前がそこまで我らを嫌うのはアイツを罰したからだろう?!アイツ…いや、アダマスは相当な罰を受けただけなのだよ!


我らがこんな仕打ちを受ける筋合いなどないだろう!!!

それに殺したくらいですましてやったのだから感謝される側だ!!」







(アダマス…?アダマスは俺の国の守護神のはずだ。




守護神が居なかったのか…?この国には…?!三千年前の大戦争…それが理由か…?!



確かに歴史上でもそのころから生贄制度が始まっている…神が変わっていたのか!!!




そして、さっき行ったあの朽ちた神殿はアダマス様の本当の神殿…!)






「…彼女は何もしていなかったはずよ。罪も間違いも犯してない




なのに、あなた達はただ気に入らなかっただけ、ただ邪魔しただけ、そんなことで彼女を殺したの。




私は貴方達を到底許せないわ。…けれど、今回来たのは違う用件よ。」 






「ッ…!!!じゃあ…そ、の…用件を言うがいい…!!」






体を締め上げられながら苦しげに神は言う。






「生贄制度を無くしてもらいたいのだけど。そもそもそんな古臭い制度、なぜ選ぶの」






「ッ…手っ取り早いからだ」






「へえ、愚かなことね。先ほどの言葉をそっくり返すわね

心底虫酸が走る…と」






「ッぐ、あ゙、ぁ…」






「それで…NO?YES?答えてくれる?」






「答えかッ…?もちろん…



____NO、だッ…ゥ゙、ァがッ」





その答えを聞いた途端、体を締め付けるのをミユは辞めた。





「そう、そう言うと思ったわ。



では、ここからは提案に移るわね。その代わりを用意すると言ったらどう?」





「代わり、だと?」





「えぇ。そこにいるオスカーに関する秘密をまずは教えてあげるわ。彼はね、半神半人なのよ」





「まさか…!!アイツの…アダマスの子供か?!」





「半分そうで半分違うわ」





(どういうことだ…?!俺は捨てられていた子で、魔女様とアルビナス様が俺を拾ってくださったのではないのか…?)





「っ…?!ま、魔女様…!!!」





「なあにオスカー?」





「どういうことです…?!俺はそんなこと一回だって聞いたことがありません…!



アダマス様が亡くなったことも、俺が半神半人ってことだって…!!」





「えぇ、秘密にしてきたもの。アダマス…かつての貴方の国の守護神は三千年前にすでに亡くなっているの。



三千年前からずっと、この国の守護神はここにいる強欲な者たちの集まりよ。」





「そんな…!」





「彼女はあの日、自身の核を人間として生まれ変わらせることにした。



だけど、彼女自身の神力に耐えられるほどの人間の器を作ることはできなかったの。だから、完全な人間ではなくて濃く神力を宿す場所だけ紙と同じような構造にした。



頭部、心臓、手、口・舌、背骨・脊髄、膝、目。これらの部位は彼女の神力を濃く、濃く宿しているわ。



実際、貴方は疲れにくい体をしているでしょう?これが理由よ」





「…それが、何だというのだ?どう生贄の代わりになる?」





「いい?彼女の神力は膨大よ。それを受け継いだ彼の体もまた膨大な神力を宿している。



その彼の体は、生贄の心を食むよりも何倍だって効果があるのではなくって?



彼の髪一本に宿っている神力は貴方達の神力の三分の一くらいかしら。」





そのミユの言葉に神たちは反応する。暫く討論が続き、最終的には





「では、それを代わりに生贄制度を撤廃しよう。」






「交渉、成立ね。」






淡々と進んでいく話を聞きながら、ふと考える。





(…あぁ、俺は…食べられるのか。リリアナ、君にも会えなくなるのか)




でも、それでいい。君が生きていけるのなら




君が、幸せに生きていけるのなら…俺はどうなったって良い。




どうか、どうか…俺を忘れて幸せになってくれ。





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