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壱を犠牲にして得た平和は正しいものなのか。 ̄前編



「アルビナス…そろそろ貴女も動きなさいな



私にばっかり話を持ってきて…面倒なだけよね?」






「そ、そんなことはないぞ?



妾も忙しくてのぅ」






ミユとクリスはドラゴン族の事件が終わったあと、リーベルにあるアルビナスの住む城まで来ていた





「あら…さっきアリーに聞いたわよ



最近貴女宛に来た依頼を一度読むだけで


全て私に押し付けてるんですって?」





アルビナスのところまで案内してくれた使用人であるアリーはこれは秘密って言われてるんですけど…とそう教えてくれた。





「なっアリーめ…裏切りおって…



秘密にするようにいったのに…」





「あら…否定しないのね」





ミユはニコリと笑った




「否定しないなら…本当のこと、というわけよね




なら…人間界で起こった事件の依頼は貴女も同行してもらうわよ」




アルビナスは焦ったように冷や汗をかく




「そ、それは…」




「拒否権はないわ



もう、準備は整えておいたもの



アリー。」





その言葉とともにアリーが荷物を持って部屋に入る




「あっアリー…そ、それはなんだ…?」




アリーはにっこりと笑顔を浮かべる




「アルビナス様!人間界のお土産!


私達、楽しみにしてますねっ!」




元気よく嬉しそうにいったアリーにアルビナスは拒否なんてできなかった




「あ、あ…」





アルビナスの敗北である





そして3人は人間界に旅立った





「あら…意外と早くついたわね



まだ前回から全然経っていないけど案外忘れてしまうものね」





とミユは声を漏らす





「ミユが老けたんじゃろ」





アルビナスも不貞腐れたように嫌味をこぼす





「あらあら…貴女も同じ年なんだから強がらないで?



滑稽よ」





「なっそんなこと言わないでも良いじゃろう!」





そんなアルビナスの言葉を無視してミユはすい〜っとゆっくり地面に降りていく





「わっお師匠待ってください!」





空にいた妖精と話していたクリスは慌ててミユを追う




その後をアルビナスも続いた





地面に降り立つと目の前には結界が張られていた





「あれ、入り口はここじゃないんですか?」





「いいえ、ここに手をかざせば入れるわ


クリスも来て」




とクリスに手を差し伸べる




クリスは素直にその手を掴み、ミユに引かれ結界内にはいる。




外からはよく見えなかったがとても綺麗な町だ





「この結界…まだとれていないようで安心ね」




「そうじゃな



もうそろそろつけ直しにいかないとと思ってたが…



帰りにでも強化しておけば大丈夫じゃろう」





「そうね」





「え!この結界お師匠とアルビナス様が張ったんですか?!」





「えぇ。いつだったかしらね


確か…」





「千五百年前の大戦争の時ですよ



魔女様」




と白衣を着た長身で細身の男が声を掛けてきた





「そうだわその時ね


教えてくれてありがとう。オスカー



それに。よく気づいたわね」





「いえ、魔女様からの露骨な魔力放出があったんで。」





「あら、そう?無意識だったわ」




わざとらしく首を傾げ微笑む




「はぁ…



魔女様、御弟子様、リーベル国女王陛下、宿は取ってあります



ついてきてください」





「いい仕事をするではないか



人間界を助けた甲斐があったものじゃ…」




「そうね



ほら行きましょうふたりとも」




3人はオスカーに続いて宿に向かった






「お3方、こちらの宿です。」






「あらここは…



もしかして…」







「わあぁっ!!




魔女様方…!」







そう奥の方から声が聞こえ、その後すぐにタッタッタッと走る足音が聞こえてくる。







「お久しぶりですわ!」






そうお辞儀をし、少女…リリアナはにこっと微笑む。





クリーム色の髪を低く2つに結び、宿の制服と思われるワンピースを着ている。





「リリアナ。元気そうね…。前に会ったのは何年ほど前だったかしら?」





「はい、魔女様!5年ぶりでございます。こうしてまた会えて嬉しい限りですわ!」






「私もよ。」






ニコニコと嬉しそうに笑うリリアナにミユは微笑みかける。







「そちらは…」







「貴女にはまだ合わせたことはなかったわね。




クリスよ、新しい弟子なの」







「あら!前にお話されていた子ですのね!





クリス様!私はリリアナですわ。」






「く、クリス・ワイトです!よろしくお願いします…!」





そう頭を下げようとすると、手を握られてブンブン振られる。





「私、クリス様にずっとお会いしたかったんです!お手紙でお名前を初めて伺ったときからお会いできたら…と思っていましたの



本当に真っ白な髪ですのね!あ!ところで甘いものはお好きかしら?実はさっきアップルパイを焼きましたのよ!



あ!でも食べる前に、この街を観光なさる?私、とってもおすすめの場所があって…


「…リリアナ」


あら!オスカー!どうかしたの?」




リリアナの止まらない話を遮るかのように、オスカーがリリアナの名を呼ぶ。





「彼が困っている。その辺にしとけ」





「え!ほんとう?!ごめんなさい…!」




「い、いえ!僕は全然大丈夫です。」





リリアナは少ししょんぼりとした顔でそう謝る。




「すまないな、クリスくん。彼女は言いたいことを全て言い切らないと気が済まないんだ。



リリアナ、彼を部屋へ。俺は、魔女の二方と話をしてくる」





「分かったわ。クリス様、こちらへ」





「え、あ…」





お師匠に目を合わせると、「話をしてるから部屋で休んでなさい」と言われる。





「お荷物、持ちますわ。長旅でしたでしょう?」





「いえ!荷物は持てます!」





「そうですか?そんなに遠慮しなくてもいいんですのに



あ、こちらですわ。両隣は左がミユ様、右がアルビナス様となっています。」




扉を開くと、素敵な部屋が広がるのが見え、感嘆の声を上げる。





「この宿は、泊まる方に合わせて家具が変わるようになっていますの!



ですから、クリス様のお好みに合った部屋になってるはずですわ。



実はこれ、ミユ様の発案なんですよ!」






こそ、と耳打ちされた言葉にまたまた感嘆の声が漏れる。





「すごい…!」





「それではごゆっくり過ごしてくださいね!何かあれば、こちらのベルを鳴らしてくださいませ!通信魔法が作動するようになっていますわ」






リリアナが部屋を出ていくのを見届けて、荷物を置く。






「はぁ…疲れたあ」






箒で空を飛ぶのに必要な魔力が少ないとはいえ、僕たちが住む屋敷から人間界までは遠く、消費量はそこそこかさむ。






ベッドに横たわると、ふかふかとした感触にうとうとと眠気をもよおしてくる。






「…すこし…」






(…だけ…)






……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………









「それで、誰なんじゃ?依頼者は!」








「アルビナス、依頼者も把握してないなんて…本当に依頼書を読んでいないのね。」






「うるさい!妾は女王ぞ。いそがしいんだ!!」






「うるさいのは私じゃないわ。うるさいわ、アルビナス」






そう静かに返せば、アルビナスがキーッ!!と顔を真っ赤にしてミユを睨みつける。






そんなアルビナスを無視して、ミユはオスカーの方へ体を向ける。






「オスカー、貴方よね?依頼者は。



そして、貴方の依頼内容は…リリアナが関係している。違う?」






「…そこまでお見通しとは。





ええ、その通りです。魔女様、今回の依頼にはリリアナが関係している。




いや…関係しているどころでもなく、リリアナについての依頼です」






「そう。もうそろそろ、時期だったわね」






「…リリアナ…時期…




あぁ、そうか…そうだな。もうすぐだ。」






アルビナスも気づいたのかミユと同じことを呟く。






「…リリアナを捧げるときがやってきてしまった。




俺は、それを防ぎたいのです。もう、生贄なんて制度をきっぱりと終わりにしたい。




彼女は、何も知らない。だけど、奴らはそろそろ迎えに来る。そして、伝えるでしょう。アイツに、このことを」


 




「あぁ、だが生贄を出さぬのならこの国は愚か…近辺までにも被害が及ぶだろう。致し方ない犠牲というものよ」






当然のようにいいのけるアルビナスに、オスカーは一瞬目を見開いたあと拳をグッと握った。





「ッそんな事は分かっています、!!



それでも、誰かを犠牲にして得た平和など許されて良いわけがない…!!」






彼は決して大きな声でなく、リリアナに聞こえないようにだろう、気持ちを抑え込むように声量は小さくとも叫ぶようにそう言った。






「お主が今過ごすこの平和も、その犠牲あってこそのものだろう?



その犠牲がなければ、お主は平和を今のように享受できておらぬ。なにを言うと思えばくだらぬことを…



態々ここまで出向いたというのに…その依頼は受けられぬ。慣例には従え」





アルビナスは呆れたような表情を浮かべながらそう言い放つ。





「ふふ…アルビナス。一度彼の話を最後まで聞いてあげましょう



だけれどね、オスカー。私たち魔女も他の高位種族も、その域を治めている神へ口出しをしていいのはそれのりも上位の神々のみなのよ。



だから簡単にその制度を変える手伝いはできないわ。」






「…どうにか、ならないのですか」





「どうにか?ええ、どうにかしようと思えばできるんじゃない?」





「!本当ですか」






ミユの言葉にオスカーは顔を少しばかり輝かせる。






「おい、ミユ…」






「いいじゃない、こんなに必死なのに何もせずに無理の一点張りは可哀想だわ」






「また上位の奴らに文句を言われても知らんぞ」






「あら、そんなこと知らないわ」






「はあ…妾はもう知らんからな」




 


アルビナスはそう言うと、近くのソファに腰を掛けて足を組む。






「それで、方法って…」






「落ち着いて、そうね…儀式まであと何日?」






「儀式まではあと一週間です。」






「一週間…ギリギリってところかしら…」






ミユはふむ、と考え込むように目を閉じる。







1、2分経ったあとに顔を上げ、オスカーに近づいて耳元に口を寄せ何かを伝えた。







「いいかしら」






「…はい。」






「では、契約成立ね。






___では、その依頼喜んで引き受けましょう。」







 ̄後編へ続く。 ̄

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