キエタイダケ

作者：カカ

俺はただ消えたいだけなんだ。そう、つぶやいたとき、テレビから流れてきたニュースが一瞬だけ俺を止めた。

「キエタイダケ」を食べた男性が食中毒で命を落としたという内容だった。その瞬間、俺の頭の中で一つの言葉がぐるぐる回り続ける。「キエタイダケ…」

インターネットで調べてみると、キエタイダケは安楽死をもたらすと言われている幻のキノコだった。苦しみを感じることなく、静かに消えることができる。消えたい、ただそれだけだった。

でも消えるためには痛みを伴うのが怖かった。だから、もしその方法があるならば、それに頼るのも悪くないと思った。

決意した。俺はキエタイダケを探しに行くんだ。

翌日、男は山に向かって登り始めた。そんなに高くない山らしいが、登ることには疲れを感じた。途中で足が震え、何度も振り返りたくなる。しかし、目の前の目的がある。どうしてもあのキノコを見つけ出すんだ。

数時間後、ようやく山頂に辿り着いた。そこからの景色は息を呑むほど美しく、何もかもがその瞬間、静かに輝いているように見えた。そんな美しい風景を見ながら、俺はその場所で待っていた。キエタイダケが生えているという場所を。

そしてついに見つけた。そのキノコは、深い紫色をした傘を広げていた。誰かが言った「安楽死」の約束通り、無痛で消えるための象徴的な存在だろうと思った。男はそのキノコを手に取ると、ゆっくりと持ち帰り、自宅で調理し、食べてみた。

だが、奇妙なことに、キエタイダケを食べた瞬間、俺は死ぬどころか、全身にエネルギーがみなぎるのを感じた。まるで電流が体中を走っているようだった。

「おかしい…」

体が軽くなり、思考が冴え渡る。体温も上昇し、まるで今までの自分とは別人のようになった。もしかしたら、このキノコが持つのは消える力ではなく、生きる力だったのではないか？

気づいた時には遅かった。俺はとんでもないキノコを食べてしまったのだ。それは「キエタイダケ」ではなく、「イキタイダケ」だったのだ。伝説のキノコと呼ばれ、生きる力を与えることから「イキタイダケ」と言われていた。

俺はあまりの変化に驚き、戸惑いながらもその後の日々を迎えた。最初はその力を持て余し、どうしていいか分からなかったが、だんだんとその力が俺に希望を与えるものだと気づいた。新たな自分に生きる喜びを感じ、前向きに未来を見つめるようになった。

でも一つ、困ったことがあった。すぐに体力が回復し過ぎて、駅の階段を駆け上がるとき、隣の老人が驚いて声をかけてきた。

「若者、何か秘訣でもあるのか？」

俺は答えた。「いや、ただキノコを食べただけです。」

その後、何度も同じ質問をされたが、その都度俺はこう答えるようになった。

「生きるためのキノコを食べたんですよ。」

そして、その日から、街の人々が俺に「イキタイダケ男」と呼びかけるようになった。最初はなんとも思わなかったが、だんだんと自分の誇りとなり、今ではその名前に愛着を持つようになった。

そして、あの日、消えたかった自分はどこか遠くへ行ってしまった。今ではただ生きることが大切だと感じている。

「消えたい」という気持ちがあったからこそ、こうして新しい人生を見つけることができた。

原作のタイトルは『シニタイダケ』だったんですが、ChatGPTの規約に引っかかるので、『キエタイダケ』にタイトルを代えました。