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第7話 鍛練!

 始まってみるとニーナは右足を前にした変わった足運び(摺り足)を始め、思いっきり振りかぶって


「メーーーーン!」


 叫びながら突っ込んできた。見た事もない剣法?にシルヴィオは面食らったようだったが剣はシルヴィオの面を捉える事はなくシルヴィオにスイッと避けられてニーナはそのまま横を通り過ぎていく。


「真上からって頭勝ち割ろうとしているのか?」


「もう一回!」


 剣を拾って構えなおすニーナ。


(根性はありそうだ)


 構えるシルヴィオ。


「コテーーーー!」


 手元を狙ってきたので剣ではたき落とす。


「どぉぉぉぉぉぉっ!」


 またまた突っ込んできたので剣を縦にして受け流す。


 ニーナがわざわざ狙ってる場所を叫びながら一歩踏み出して突っ込んで来て、

しかも通り過ぎていこうとするのかシルヴィオには謎でしかないようで


「面白い動きではあるけれどなんで通り過ぎていくんだ?背中斬られるぞ?

そして何故、狙う場所を叫ぶんだ?」


 さすがのシルヴィオも笑いが隠せない。

 

(体育で習った剣道って全然使えない(泣))


 愕然とするニーナ。


「とりあえず二人とも力が弱い。まだ剣を握ってどうこうというレベルではないので

まずは自分の身を自分で守れるように護身術から始めようと思います」


 シルヴィオは騎士団長だけ今までも新人騎士を育ててきただけあって褒め方も上手でとても楽しく学ぶ事ができた。とても優秀な上司だと思う。彼にだったら戦場でついて行きたいと思わせてくれる。きっと人望も厚いことだろう。


 練習の際は模擬剣を使用しているのだけれど次の指導では剣は非力な私達に騎士が持つような長い剣は重すぎて難しいとの事で子供用の小さな剣を用意してくれた。


 アーロンは少しムッとしていたが、私にとってはありがたかった。剣を鞘から出すと当たり前だけど両刃の剣だ。日本刀とは違う。


『安心せい!峰打ちだ!なぁんて事は無く全て斬り捨てごめん』っていうのは無しで本当命を奪う道具だと思うと、ちょっと怖くなった。


(真剣だけに真剣に取り組まねば!)


 はい、ダジャレ。歳を取るとね、ダジャレを思いついたら言わずにはいられないらしいよ。うん。だから許してほしいと思う。


 シルヴィオはアーロンがいつか大人用の剣になる事を見越しての筋トレと剣さばきを教える。

 私にはどちらかというと剣を持つというよりも剣を持っている人間に対する護身術が主となった。確かにドレスに帯剣はできない訳で。理想としては中世を描いた少女漫画の男装騎士のように格好良く剣を振り回してみたかったのだが見事に妄想はバラのごとく散ってしまった。


 シルヴィオは人を良く見て瞬時に判断する判断力もあるため騎士団の人間が幾度か指示を仰ぎにやってくる。その間は邪魔をしないように二人は控えるわけだが。


「ニーナってシルヴィオみたいな人がタイプなの?」

「へ?」


(タイプ?タイプってなんだっけ?コ、コイバナ?)


 びっくりしてアーロンを見る。アーロンがまっすぐとこちらを見つめている。


(これは誤魔化しちゃいけないヤツゥ)



 頭によぎったのは夕方に小さい子供がシルヴィオを迎えに来て、その子をひょいっと抱き上げて奥さんとも一緒に帰っていった後ろ姿。前世のシーナが願ってもできなかった景色。


「うーん…タイプ?そうだなぁ、素敵だよね。理想の旦那様かもね。

でも一番のタイプは…」


 アーロンの目に力が入る。


「強くて逞しいクロかな」


 ヘヘッと笑う。

(一途で浮気しない旦那!これ一番)


「馬かよ!」


 アーロンはギッとシルヴィオを見つめるが仕事の話をしているシルヴィオは気付かない。シルヴィオの話が終わったようなので二人で立ち上がってシルヴィオの前に集まる。

向き合ってちょうど三角形のようになった。


 あっと思い立って二人に剣を真ん中に出してもらって3人の剣が重なる。二人は何が始まるのかと頭の上に?マークが出ている。ニーナが二人を見た後、剣が重なる真ん中を見ながら


「みんなは一人のために!一人はみんなのために!」


 自分の剣を二人の剣ごと上に上げて剣を上に向けて上に伸ばす。

え?となりながらも二人とも上に伸ばす。


 (騎士っていったらコレでしょ!)

 昔三銃士がテレビでやっていたのをやることができて満足なニーナ。


「な、何?」

「剣士の結託の言葉?かな?何かやる気にならない?やってみたかったんだよね」


 満面な笑みのニーナと対照的にぽかーんとしていた二人だったが、その後ラウタヴァーラ駐屯地の中で流行った。




 数日後の鍛練の時間


「はぁ~い」


 細身の黒髪黒目の美少女が現れた!この世界では初めて黒髪黒目を見た!

よくよく見ると顔がアジア系っぽい。

この世界にもアジア系人種がいるんだとちょっと懐かしく嬉しくなった。


「紹介しよう。これからニーナの先生になるナオミだ。こう見えて歳は…」


 バキッ!


 シルヴィオが歳を言おうとしたのを察知したナオミはシルヴィオをぶっ飛ばした。


「…歳はさておき、やはり女性には女性の闘い方がある。

俺には教えきれんからな。ナオミに来てもらった」


「ハイ!ニーナ!女の子なのに闘いたいんだって?素敵!」


 ギュゥゥッとハグされる。モチみたいと何度も何度もハグされた。


「でも長くはいられないネ。その分、ギュッと詰め込んで教えるからね。覚悟シナさいね」


 どうやらナオミは東方の国の方らしい。戦争でもうその国は無いらしくナオミは移民なんだそうだ。

 本当にその言葉通りにレオナは短い期間で毎日ぶっ倒れるほどいろいろと教えてくれた。

 剣ではなく体術と短剣、扇子を使った闘い方だ。シーナの世界でいうところの太極拳とか合気道といったような感じなんだろう。



「ニーナ!素晴らしい生徒!いつか私の元で働くとイイネ!」


 笑顔で去っていった。本当に嵐のようにやってきて嵐のように去っていってしまった少女のようないい女だった。

 どんな仕事をしているのか一度聞いたが『知ったらもう死ぬまで抜けられないけどいいか』と問われたので遠慮しておいた。世の中には知らない方が良い事もある。帝国騎士団にもいろいろな仕事があるという事だろう。


 気を許せる女の友達という物がいなかった私には本当に新鮮で楽しい日々だった。ナオミを呼び寄せてくれたシルヴィオに本当に感謝した。


 アーロンも基礎ができたとお墨付きをもらい、朝の鍛練に混ぜてもらえるようになったのでシルヴィオはお役御免となり騎士団長としての仕事に集中すべく戻っていった。

 シルヴィオとしては派出所の方が家に近く家族サービスもできるのでアーロンの成長は嬉しいような少し残念なような不思議な感情を見せていたが、ずっと仕事を押し付けられていた副団長がガッチリと首根っこを掴んで駐屯地へと引っ張って行ってしまった。


 たまにシルヴィオは派出所の朝の鍛練にも顔を出しアーロンの様子を見てくれているようだ。アーロンもその時には犬のように尻尾がブンブン振っているのが見えるくらいの喜びを見せる。

 父親といってもほとんどあった事ない義父オニールよりもいないアーロンにはシルヴィオは頼れる親父のようなものなのかもしれない。


中学の時の体育で剣道ってやりました?よね?

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