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第35話 ネコバ◯⇦バではない

 結局そのままテラスの手すりとテッドに寄りかかったまま、ミラは怒っても静かに怒るから怖いだの他愛の無い話しをし続けた。お互いが離れていた時間を埋めるかのような充実な時間だった。


 名残惜しかったけど時計の長い針と短い針が合体する前には王城を後にした。


 牛車でアーロンが貸してくれた座布団を敷いて座ろうとしたらテッドの膝の上に載せられた。


「えっ」

「お尻の皮が剥けてるんでしょ?これなら向けてる部分が当たらないでしょ?」


 テッドの腿の上にニーナの腿が重なる形で二人馬織のような座り方。それを後ろからシートベルトのようにテッドがウエストに腕を回す。確かにお尻の皮はまさにお尻の穴の上のセンター上なので確かに当たらない


「すごい!なんでお尻の真ん中、尾てい骨当たりの皮が剥けてるって分かったの?」

「だって俺も初めて乗馬した時に剥けたもん」


 その一言にまた二人で大笑い。恥ずかしいよりも可笑しいのが勝ってしまってそのままテッドの膝の上に乗って帰る事になった。


「重たくない?」

「重くない。暖かいし、このままで」


 テッドの頭が背中に密着した。でも申し訳ないのでテッドに寄りかからないように必死で体幹に力を入れる。


「大丈夫だよ」


 腰に回っている腕に力が入りテッドに引き寄せられる。一気に背中が暖かくなる。腿の下もテッドの体温で暖かいし身体の背中側が暖かい。牛車は一定のリズムで揺れ一気にまどろみに包まれる。


 ガクッとニーナの重みが増す。


「ニーナ?寝ちゃったの?」


 はぁぁぁ…ため息をこぼすテッド。ぎゅっと少しだけ強く抱きしめてニーナを自分の中に閉じ込めてみる。


「う……うぅん……」


 ニーナはまだ夢の中だ。ニーナとテッドの間にあるテッドが羽織らせたジャケットが挟まっているが疎ましく感じられたテッドだったが、ニーナの眠りを妨げたくないので我慢する。


「好きだよ……」


 テッドはニーナの耳元で囁いた。夢の中にいるニーナには聞こえるはずもなく心から漏れ出た告白はリズムの良い牛車の音で消えていった。


 思わず口から出た言葉にハッとする。

(「好き」?え?「好き」なのか?!こんな男を投げ飛ばすような女が「好き」!?)


 顔に熱が集まるのを感じて誰もいないのに見られないように膝の上にいるニーナの頭の上におでこを付けて隠してしまう。


 確かに、デビュタントを他の男にエスコートして欲しくなかった。ドレスだって自分が用意したかった。他の男にニーナを見られたくなくて止まらないようにグルグルと回った。そして今は触れていたくてしょうがない……


 腑に落ちると余計に恥ずかしくなった。

(そうか…俺、ニーナの事が好きなんだ…)


「うそだろ…」


 目線の先にはスヤスヤとこちらの気持ちも知らずに爆睡するニーナ。


(俺がこんな気持ちでいるのに!こいつは!)


 なんか可愛さ余って憎さ100倍な気持ちになり、ちょっとイタズラしてしまった。


 牛車は暗い中、同じリズムをゆっくりと奏でながら屋敷へと戻っていった。




翌朝

 目覚めるとニーナは自分のベッドだった。


(やば!牛車からの記憶がない!寝ちゃった!ほろ酔いでゆらゆら揺れる暖かい座席はそりゃ寝落ちするって!)


 ベルを鳴らしてメイドを呼ぶ。


「おはようございます」


 静かにミラが入ってきた。


「ミラ!昨日到着したの?荷物とかいろいろと大変だったよね?ありがとう!」

「いえ…またこちらでお世話できて嬉しく思います」


 言葉とは裏腹になんか怒っているようなオーラを感じる…


「な、なんか怒ってる?」

「いえ、ニーナ様にではないです。本日はこちらをお召ください」


立ち上がって鏡の前に行き服を受け取る。


「今日はハイネックなんだねぇ」

「……」


(な、なんか怒ってる…なんか分からなんが分からんのがまた怖い…)


「ん?ありゃ?首になんか赤いポッチョがある…虫刺され?」

「えぇ、ちょっと大きな虫がいたみたいで」


ボキッ

 ミラが手に持っていたペンを折る。


「だ、大丈夫。別に痛くも痒くもなってないよ?ミラ」

「いえ、仕留められず申し訳ございません」


(ど、どした…ミラ)


「と、ところで昨夜って…どうやって私はこのベッドに入ったのかな?」

(寝ぼけてても自分で歩いて入った!って事であれ!)


「テッド様が運んでくださいました」

(お、おっふ、やらかした…)


「そ、そう…後でお礼言わないとね」

「お礼言わなくていいと思います」

(被せ気味にキターーー!な、何があったのぉ?)


「と、とにかく朝食に行くわ」

(触らぬ神に祟りなし!)

 いそいそと部屋を後にした。


 食堂に入るとお父様とアーロンの空気が重い…

「お、おはようございます…テ、テッドは?」

「今朝は急ぎの仕事があるから先に王宮に行かせた」

(お、怒ってらっしゃる?よ?ね?これは…)


「え、えーと昨夜は遅くなり申し訳ございませんでした」

頭を下げる。


「昨夜は寝てしまっていたようで確認できなかったのだが…」

(ゴクッ)

「テッドとは何も無かったんだろうな?」

「へ?」


「服が変わっていたようだが?」

ズモモモモモモモモとオニールの後ろから怒りのオーラが見える。


(こ、怖いんですけどぉ)


「あ、あぁ!ドレスが汚れて泣いてしまった子がいたのでケープを取って貸してあげました」

「なぁんだ!そうだったんですね」


 アーロんが天使の笑みを見せる。オニールもスンっとオーラが消え、いつものふわっとした空気に戻る。

(あぁ、いらん心配かけちゃったか…申し訳ない)


「お前も年頃の娘だ。気を付けるように」

「はぁい」


 どうやらテッドは王宮でオニールの部下になったらしい。毎日朝早く、帰りは夜遅くに帰宅するほど仕事が忙しいようでニーナとテッドはあれから顔を合わせる事はなかった。オニールはいつも通りの定時帰宅だったので新入社員はどこでも最初は忙しいという事なんだろう。


頑張れ!テッド!



酔っ払いにぬくぬくでゆらゆらしたらそりゃ寝落ちする。

本物のネ〇バスだったらもったいないけどお休み3秒!

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