終わり
とある木曜日の18時、あたしはあたしの通っている高校の近くにある公園にいる。目の前には前田君が立っていた。
「どう?僕の好きな人はわかった?っていうか、顔がだいぶ変わったよね。」
「わかったよ!顔は整形したからね。」
あたしは元気に答えた。本当は身体も変わっているが、前田君は気づいていないのかもしれない。
「そうなんだ。一日でそんなにも変われるんだね。」
「そうなんだよ。」
「整形のことはよくわからないや。」
「前田君はイケメンだしね!整形とは無縁だからね!」
「そうなの?」
「そうだよ!だから好きなの!」
「それだけ?」
「あと、雰囲気とか!」
「ふーん。」
「その人に冷たい感じとかも好きだし。」
「そうなんだ。」
しばらく、沈黙が続いた。
「じゃあ、僕は誰が好きなのかその人の名前を言ってみて。」
前田君は話す。
「わかった。前田君が好きなのは宇宙人さんだね。」
「そうだよ。正解だね。」
「宇宙人さんのどこが好きなの?」
「うーん。言葉では表現できないな。」
「多分だけどね、彼女が人形だからだよ。」
「人形?それはどういうこと?」
「彼女は本物の宇宙人に身体をいじられて、どんな人からでも好かれる体質になったんだ。だから、前田君もそれで宇宙人さんのことが好きなんだよ。」
「何それ?本当?」
「本当だよ。」
あたしは事前に宇宙人さんの身体をバラバラに壊していたので、前田君にそのバラバラの身体を見せた。前田君は驚いている。当然だろう。彼女が人形だったのだから。脳みそだけが宇宙人さんのモノだ。あたしも人のことは言えないが。
「どうして、こんな。」
前田君は言葉に詰まり、嘔吐した。あたしはそのゲロを飲みたいなと思っていた。
あたしの顔は自分で思うには普通だと思っている。しかしながら、クラスの人達はあたしの顔を見て笑っているのだ。あたしは多分、認めたくはないのだけど他の人と比べるとブスなのだろう。友達の蘭はとても美人である。彼氏もいるらしい。あたしはうらやましかった。
この三年間、いや、今までの学校生活ではとてもではないが、青春とは程遠い学校生活を送ってきた。あたしの思う青春とは夏はクラスの人と一緒に海へ行って遊び、夜はそこで花火とかもしてみたい。冬は夏に告白して付き合った彼氏と一緒にクリスマスの日に一緒にイルミネーションを見てみたい。そんなのがあたしの思う青春だ。しかし、あたしの送ってきたものは青春とは呼べない。ずっと一人で小説やアニメ、ドラマなどを見て、パソコンとにらめっこしているだけだったからだ。これのどこが青春といえるだろう。だが、これからはこの身体で前田君と過ごし、幸せな学校生活を送ることができる。
「残りの高校生活を満喫するぞー!」
あたしは大声で叫んだ。公園にいる人たちは振り返る。あたしの方をみている。そのとき、グサッ!っと、音がした。あたしは急に激痛に襲われた。自分の身体を見てみるとナイフが刺さっていた。後ろを振り返るとポニテちゃんがいた。ポニテちゃんは何度もナイフであたしの身体を刺した。
「すみません!けど、遠藤さんを殺したのは許せないから!すみません!」
ポニテちゃんは本当にホントーにガチで誤ってきたので、だったらはじめっからこんなことするなよとあたしは思った。いてぇーし。人形だが痛覚はある。
「痛い!」
あたしは言った。
「YAH YAH YAH 元気かい?」
とはなちゃんが出てきた。なんで、みんな公園にいるんだ?それに、はなちゃんはスマホで撮影をしているし。
「元気じゃないよ!ポニテちゃんを何とかして。」
あたしははなちゃんに助けを求めた。
「嫌だよ。今、面白い状況なんだよ?」
はなちゃんはスマホで撮影を続けたまま言った。
「前田くーん!」
あたしは前田君なら助けてくれると思い、助けを呼んだ。
「君のしたことは許されることではないよ。僕の好きな人を知っておきながらその人を殺すなんて!」
前田君は言う。
「けど、そいつは人形だし!」
「君もだろ!」
前田君は怒っているらしい。そういえば、あたしも人形なのにどうして前田君はこんなにもあたしに当たりが強いのだろうか?あたしのことが好きになるのではないのか?
「あたしの方が宇宙人さんより前田君のことが好きだし!」
「そんなことはどうでもいいんだよ!」
「どうでも良くないよ!あたしの気持ちをそんな風に言わないで!」
あたしは初めて本気で前田君に怒った。
「前田君、この子のことが許せないのならここにあるバッドでこの子の脳をブチ壊しちゃいましょうよ!」
はなちゃんが撮影をしながら、公園に置いてあったバットを前田君に渡す。前田君はそのバッドを持った。
「ちょっと待って、あたしって人形化したんだよね?前田君に全然効いて無くない?」
あたしははなちゃんに疑問を投げかけた。
「宇宙人さんもそうだけど、君も人形化して、顔と体型は変わった。だけど、人から好かれる効果はウソなんだよね。宇宙人さんがポニテちゃんとそういう関係になれたのは宇宙人さんが頑張ったからで私はなにもやっていないんだよね。」
はなちゃんは言った。どうやら、だまされたらしい。だけれど、顔も体も前よりもかわいくなったと思ったので、それでもいいか。とあたしは思った。前田君と付き合うこともできるし。そんなことを考えながら前田君の手元を見てみると、前田君は手から血が出ていた。バッドを力強く握り絞めているからだろう。なぜなのかはわからない。そして、前田君は手に持ったバッドをあたしの頭に振りかざした。急だった。あたしは逃げることができなかった。ポニテちゃんの持っているナイフがあたしの身体に刺さったままで、痛すぎて動けない。あたしはそのままバッドで頭を殴られた。何度も何度も前田君はあたしの頭にバッドを振りかざしてくる。ボンッ!グチャ!と音が聞こえる。
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!まえだくん、痛いよ!」
あたしは前田君の顔を見て言った。そしたら、前田君は泣いていた。あたしの意識が途絶えていく。
「あっ!これがこの子の脳みそだよ。作りを甘くしておいて良かった。」
どうやら、はなちゃんが前田君と話しているらしい。
「これで終わりね。」
はなちゃんが言った。
「はなちゃん。ありがとう。遠藤さん、聞こえますか?僕からあなたへの鎮魂歌です。」
グチャ!
The end.