第六十章 帰還
ガンドランドに戻ったのは、夕暮れ時だった。
幸運の尻尾亭の前に差し掛かった時、扉の前に人影があった。
白い髪。虎耳。虎尾。
ミカは目を見開いた。
「パラン!」
パランが振り返った。旅立った時と同じ顔だった。でも何かが違う。立ち姿が、纏う空気が、少し変わっていた。
「ただいま」
「おかえり!いつ戻ったの?」
「今日の昼頃。お前たちの方が遅かったな」
「こっちも色々あって」
パランはミカを見て、それからミカの後ろを見た。全員の顔を確認して、エリカの腕の中のくうで目が止まった。
「……その亀は」
「くう。玄武の神獣だよ」
パランは少し目を見開いた。それから笑った。
「エリカも神獣と契約したのか」
「うん!」エリカがくうを掲げた。「くうだよ!」
バナージュがパランをじっと見た。薄紫の瞳が、パランの全体を値踏みするように動いた。
「……お前、変わったな」
パランは少し驚いた顔をした。
「分かりますか」
「われには分かる」バナージュは鼻を鳴らした。「白虎の魂を受け取ったか」
「はい」
その時、パランの中から声がした。パランだけに聞こえる、深くて静かな声。
『玄武がいるな』
白虎だ。
パランはくうを見た。くうもパランを見ていた。金色の目が、静かに光っている。
『久しぶりに見た。元気そうじゃないか』
くうがゆっくりと瞬きをした。
パランは思わず笑った。
「白虎が、久しぶりだって言ってる」
全員がくうを見た。くうはまたゆっくりと瞬きをした。それだけだったが、何かを答えているように見えた。
エリカがくうを見下ろした。
「くう、しってるの?」
くうはエリカを見上げて、また瞬きをした。
「しってるんだって」
エリカは満足そうに頷いた。
トフィーがぴょんと前に出た。
『私のことも覚えてる?』
パランが少し集中した。
「……幸運の兎か、と言ってる」
『覚えててくれた!』トフィーが耳をぴんと立てた。
バナージュが鼻を鳴らした。
「われのことは」
パランはまた集中した。それから少し困った顔をした。
「……クリスタルドラゴンか、珍しい組み合わせだな、と」
「ふん」バナージュは視線を逸らした。「われも同じ気持ちじゃ」
でもその口元が、かすかに緩んでいた。
『四神みたいだね』トフィーが笑った。
「四神……」ミカが呟いた。「確かに」
バナージュが鼻を鳴らした。
「われはドラゴンじゃが、まあいい」




