とっておきの果物を取りに
「ちょっと何か数字おかしくない?これが今の私の能力値?」
『いえ、間違いありません。因みにHPとは体力、MPとは魔力を表しております』
「何で魔法使わない私の魔力がこんなに高いの?桁が間違ってるんじゃ…しかも何で職業の武闘僧よりもサブジョブの方がレベルが高いの…?」
『それは武闘僧よりもハンターとして生活しているからだと思います』
「…そっか、私は武闘僧としては修行しかしてないしね、なるほど納得…それと職業の隣の???って何だろう?」
『それは御主人様がこれから覚えるであろう職業です。おそらくメインの方についてますので、適正のある職業だと考えられます』
一瞬私の中で「聖魔道士」という言葉がよぎった…。振り払うようにトフィーに話しかける。
「それにしても、この運無限大とか超強運ってどうなってるの?私そんなに運がいいとは思えないけど…」
『何をおっしゃっておられるのです御主人様!私と従魔契約したこと自体、超超超超超幸運ですよ!
私と従魔契約しただけで国賓級の扱いを受けること間違いありません!それから強敵と対峙した時でも、生存する可能性はほぼ100%!そしてレアアイテム、宝箱などの遭遇確率もものすごいことになります!』
「そっかー、生存確率はありがたいね。でも、レアアイテムって何?私はあまり興味はないかな…」
『ガーーーン…御主人様!!レアアイテムっていうのはその価値はそれだけで領主になれるくらいです!それをいくつも手に入れられる可能性があるのですよ!』
「領主?…うーんやっぱり興味ないかな?それにしても、トフィーは本当にすごい神獣なんだね。」
『そーなんです!私は戦闘能力は殆ど役に立ちませんが、契約者を生存させること、幸運を運ぶことに関して右に出る存在はないと自負しております!』
「私は、トフィーと友達になれたことが一番嬉しいな。これからは家族かな?よろしくね、トフィー。あ、それから御主人様はやめて。ミカって呼んで貰えると嬉しいな」
『な、なんと!私を家族とまで呼んでくださるのですね!わかりました。ミカ様、これからもよろしくお願いします!』
「…様か、まあいいか。それよりもトフィーは何を食べるの?私は少しお腹が減ってきたよ」
『はい、私は基本的に草食です!でも、ラビット系モンスターとは違ってフルーツや木の実なんかも好きです!』
「そう、じゃあ今度とっておきの果物取りにいこう!今日はあるもので我慢してね。」
私は食事の準備をはじめる。
用意している時もトフィーはずっと話しかけてくれる。今までにない感覚だった。とても賑やかで楽しい時間だった。
私は保存してある干し肉を山菜とともに煮込んだスープを、トフィーには山菜と木の実を器に入れて差し出す。
トフィーは器用に前足も使ってモグモグと食べている。その姿がとても可愛く感じた。
翌日、私はとっておきの果物を取る為に、少し険しい「 水晶山」の近くまで来ていた。
水晶山は、その字のごとく山頂が水晶で出来ている。何人もその水晶に触れてはならないと言われており、手に触れようとすると災いが起こると言われている。
これまで水晶山付近で人を見たことは無かった。というのも、険しすぎるのだ。ただでさえ高地なのに普通の岩場ではなく、水晶で出来ている為、その付近は脆く登ることは不可能に近い。
太陽に映える水晶の山として、ギ・エルキン公国の象徴的な聖地とされている。
普段から高地で暮らしているミカにとっては、水晶山の近くまで来るのにそれ程問題は無かった。
この険しい場所に何故かその果物は生育している。私も今まで数回食べただけだ。
でもその味を忘れることは無かった。水々しく、甘く、口に入れた瞬間虜になるようなそんな果物だ。
『ミカ様、ここは相当に険しいですね、こんな場所にとっておきの果物があるのですか?』
トフィーが念話で話しかけてくる。トフィーは私の肩の上に乗っていた。
「ええ、そう。大変な思いをしないと取れないんだけど、その味は格別よ!」
『なるほど、楽しみにしてます!』
「それにしても、今日は風も穏やかだし天気も快晴…こんなこと珍しいな…」
『フフフ、これが私の能力!幸運、超強運の効果なのです!天候すら味方にできるのです!』
「へぇー、やっぱりトフィーはすごいんだね!」
そう言って私はトフィーの頭を撫でる。トフィーは気持ちよさそうな仕草で金色の体を私の顔に近づけてくる。
目的の場所が見えてくる。切り立つ崖だ。崖の先端に何故かその木は存在し、実をつける。
『…ミカ様、この場所にはとても強い力を感じます。とても清らかな場所…」
「そう…だからあの実が育つのかな?」
崖に近づく。私は何となく武闘僧の祈りの言葉を唱える。師匠から教わったものだ。
「太陽神アルンと大地の女神テラよ、その導きにより我が身に光を賜わらんことを…聖母神ユミルファの愛と慈悲を賜わらんことを…」
瞬間、辺りが光に包まれる。
私には何が起こったのかわからなかった…
目の前には人らしい影がある、眩しくて良くわからなかった。