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006 命ヲ寄生

 「で、どうするの、この子?」


 「どうしようね、寝てる傍で勝手にお城を拠点にしても気分悪いよな。」


 「推測だけど、この子の能力は現実改変能力の一種だと思うのよね……さっきのドラゴンもそうだけど巨人も、この子が作り上げたものじゃないかな。」


 左目を閉じている01(ゼロワン)。彼女がアカシックレコードにアクセスするときの仕草だ。


 「それなら動物達が反応しないのも納得だけど……でも反応しなかったなら事実改変じゃないんじゃない?」


 「うん。だけど来る途中、確かにドラゴンが通ったような痕はそこら中にあったのも確かよ。恐らく能力に何かしらのリミッターがあって、改変できるそれが限られているか……又は能力者本人の想像力の限界か。」


 眠りについている少女は10歳にも達していないだろう。


 いつからこの状態なのかは定かではないが、想像力が劣っていてもおかしくない。というより、劣っているはずなのだ。


 後者の考えが最も有力説としてトーマらは動く。


 「想像と言っても、寝てるんじゃ使いようがなくない?」


 「馬鹿トーマね。エネルギーは随時放出されてる。寝ていてもね。聞いたことくらいあるでしょ?」


 「えっと、馬鹿トーマ?」


 「違う、いや馬鹿トーマだけど違う。鬼化(デーモン)よ。」


 「噛むよ?……あぁ、確か制御しきれず逆に乗っ取られるってやつね。」


「その通り、暴走は起こりうる。身体は乗っ取られてない見たいだけど、制御できず夢をそのまま投影していると考えられる。」


 マッド科学者が起こした、世界中を巻き込んだ大事故で生まれた異能力。


 諸説は色々浮上しているが、知的生命体の一種だと政府は主張している。いわば寄生。


 これにはマッド科学者……いや、大悪党(ビッグヴィラン)について少々語らなければ成らない。


 彼は誰もが知る天才科学者、悪魔の頭脳を持つと言われている、ノーマン。ノーマン・ワトソンだ。


 ノーマンは宇宙開拓にすごく興味を示していた。宇宙は、赤子の手をひねるかのように想像を踏み躙って凌駕する領域だと彼は口にした。


 そして生命は、星の死に際にエネルギーを放出する最期を持って、散らばると推測した。


 超新星爆発である。星が己の質量に耐えきれず、収縮の果てに自爆する現象。


 そうすると彼は死んだ星、ベテルギウスに目をつけて研究を重ねた。


 ベテルギウスからの放射線だけを吸収して観察すると、真っ直ぐなはずのグラフが確かに妙に波を打っていた。


 光を屈折又は歪ませる程の質量を持つ天体は間にはない。だとすると、暗黒物質か?


 ノーマンはこの波に、意識ある生命体が打つ並と極めて似ているものだと語る。


 現在、暗黒物質を観測する方法はないが、周囲を観察することでその存在を知ることはできる。


 研究を重ねるにつれ、この暗黒物質が移動をしていることが判明した。変則的にだ。


 自由に動いているとも言える。まるで意思があるかのようだ。


 そしてそれは高速で極稀にリレーのように入れ替わる。それも、近くで超新星爆発が起きたときにだ。


 「なんて素晴らしい移動方法なんだ。」


 と、これこそ高度な文明だとノーマンは考えていた。


 その知的生命体の力を借りれれば、死にゆく我が息子の命を救う術があるのかもしれない。


 そう思ったことだろう。


 彼はベテルギウスの死んだ光が地球に届く日を胸に、光を最大限吸収できるための数10kmものアンテナを開発し、打ち上げに成功した。


 時はきた。


 超新星爆発を起こしたベテルギウスの光が届いたのだ。ビルは溶け、自然は枯れた。回復には数年はかかるだろう。


 素でこのエネルギー量だ。吸収できるという考えが浅はかだったのだ。


 吸収した大量の暗黒物質を含んだ光エネルギーは暴発し、一点に集中するように地球に降り注いだ。


 ノーマンは、それでも良しとしていた。なぜなら高度な知的生命体を地球に持ってくることに成功したからだ。


 しかし、彼には1つ、予想もしなかったことが起きた。


 命の寄生なのだ。


 降り注いだ暗黒物質は人々の体内に侵入し生きはじめた。


 これにより人に異能力が発現したと同時に、暴走し、暗黒物質に身体を乗っ取られた鬼化(デーモン)が続々と現れるようになった。


 しかしながら、ノーマンの息子は息を吹き返さなかったという。


 哀れな話である。


 まぁ、何はともかくだ。要するに、この子もまた、軽傷ではあるが暴走しているんだ。


 「おい、起きろ。」


 「ちょっ、やめなさ…い!」


 トーマは眠れる幼女に会心のビンタを味わせた。


 そのビンタで、澄んだ声で幼女は唸る。


 だが、起きる気配は無し。


 「絶対零度…」


 「辞めなさいってば!」


 「いてっ!」


 絶対零度、周囲のものを徐々に芯まで凍らす技。極寒で起こされる戦法だったのだろう。


 「意識戻る前に凍るわよ、馬鹿トーマ!」


 「ならどーすればいいんだよぉ。」


 01(ゼロワン)は首を傾けた。アカシックレコードにアクセスしているのだ。


 そして、ポンッ!と、彼女は閃いた。


 「王子様のキス……」


 「……え?」


 「キスよ。ここはドラゴンもいて、巨人もいる。森も神秘的。まさにコントの世界よ。それなら眠れる彼女は、素敵な王子様のキスでしか目覚めないはすよ。」


 「いやでも、さっき唸…」


 「しなさい。」


 「でもさっき…」


 「しなさい!」


 はぁ、絶対に01(ゼロワン)の性癖だろ、これ。


 「もぉ、わかったよやればいいんだろ、やれば!」


 通報されたらロリで逮捕だ、全く……


 トーマはゆっくりと幼女に身を寄せ、片手で落ちかかる前髪を抑えながら顔をミリ単位まで近づけ……

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