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013 秩序ノ改竄

 分身(アバター)の見えている世界とトーマの見えてる世界。別々の世界が衝突し混じり合うその視界はストレスなものである。


 禁術なだけあるわ……吐きそう。


 今座っているのに、足の裏を交互に押されている感覚がある。分身(アバター)が歩いているのかな。


 視界もなんだろうね。 真ん中に境界線引いて2つになるんじゃなくて、透過度50%ぐらいのレイヤーを上にかぶせて、それをぼかしペンで合成感を消したって感じ。


 もちろん違和感は拭いえない。AIに映像を描かせたときの気持ち悪い感じ。だからこそ吐きそうだよ……うん、鍛錬が必要だね。


 ん……?


 すると、突如として人影らしきも物体が目の前に現れる。


 「……なるほどね、君は賢い上に、ギャンブラーなのね。分身を意思疎通できない状況を作るなんて……」


 「あぁ、賭けだよ。そういうあんたは……?」


 しかし返事は返ってこなかった。


 すぐ目の前に居ながらも触れない。声はするのに、頭の中で響く。


 間違いない、分身(ステラ)が接触している。そんで今ここには居ない。


 監視下にない今がチャンスだね。


 最高に最悪で最強の究極奥義を放つための時間稼ぎ、頼むぜ分身(アバター)さんよ。


 「どうしたの?喋れないの?」


 「……」


 「そうかぃ、君のレベルはまだそこなんだね。」


 「……」


 トーマの分身(アバター)はまだ未完成。十分であるが、本体(ステラ)の言葉にしか反応できない。つまり、欠陥品である。


 「まぁいい、流石に本体(ステラ)には聴こえてるんでしょ?……おっと!?」


 分身(アバター)は、謎の女性が瞬きをすると同時に、素早く紫色の氷柱を飛ばした。


 しかし危機一髪のところで避けられてしまう。


 「分身(アバター)本体(ステラ)に似る……とっても穏やかな人なんだろうね。でも分身に用はないの、ごめんね。」


 謎の女性が足の向きをトーマの方に向け、走り出そうとしたその瞬間、分身(アバター)が一瞬にして前に立ちはだかる。


 「そう……痛い目を見ないと気が済まないのね。」


 彼女は腰の鞘に手を置き、呼吸を静めた。まるで獲物を狙う獣のよう。


 その威圧は死をも錯覚する程である。凄腕の剣士は、視線だけで相手を斬られたと錯覚させることができるという。


 「逃げないんだね、お見事よ。」


 「なんだ今の寒気は……一瞬、首が斬られたような……まぁいっか。」


 分身(アバター)との共有はまだ続行中。つまり分身(アバター)は倒されていない。まだ焦ることはない。


 分身は左脚を斜め後ろに下げ、戦闘の体制をとる。右手には氷で造った紫色の剣を握っている。


 「何よそれ、猿の1つ覚えかしら?私が剣士だからと合わせようだなんて、余裕ぶっちゃって……」


 分身はそのまま、1ミリも動きを見せない。


 僅かながら動こうものなら、斬られると理解している。相手の間合いだと細胞が叫んでいる。


 すると彼女は1つ息を吐いた。同時に、空気の流れが一変する。


 感じたことの無い殺気ガトーマにまで伝わってくる。今現在、目の前に立っているのは女性……いや、人ではない。


 人の領域から逸脱した生物……鬼よりも圧倒的な恐怖の権化。


 悪魔。


 「………………抜刀。」


 「……!?今斬られた……よね!?なんか、すげぇ!!斬られる感覚初めてだよ!!」


 でもなんでだろう、斬られたのは間違いないんだけど、ブチュッ!っていう感じ?


 なんか特集なんだよなぁ……お!


 そうしてるうちに、空間が壊れかけている。マイナス100℃には達しているだろうか。


 原子は通常、常に動いている。静止しているようにみえる鉛筆も、実は激しく震えている。


 その震えは熱を持てば持つほど激しくなり、逆は穏やかなる。


 極めて静止に近い原子は活動が制限されるため、空間を扱う能力では、その物体がままならない。


 鉄を溶かした方が、自由に形つけられるのと似た原理である。


 いいねぇ、脱出と行こうか。


 出た先には、肩上にかかる真紅の髪の女性が立っていた。意外にも瞳は大きく、全てを吸い込むような漆黒だ。


 「また見つかったか。」


 念の為、《《氷帝》》でマスクとマントを創造した。僕はヴィランだからね、強そうな相手にそうそう正体を晒す訳には行かないんだ。


 しかし、何故かそのマスクは溶けだし、やがてその面を晒すこととなる。


 「《《氷帝》》が効かない……?」


 謎の彼女の口角が少し上がる。


 「どうしたの、坊や。」


 「あんたの仕業だね。」


 「ほぅ、やはり君は侮れないね……元No.1ヒーロー、終焉(フィン)……いや、エロイ・センレイ……プッ。」


 「……笑ったよね?」


 「わ……笑ってないわ……フフ。」


 「見え透いてるよ……もろに笑ってるよ……?」


 「そんなことはどうでもいいわ。」


 「いや、良くはないけど……」


 「私の能力は《《熾天使》》。君が匿っているエルフの《《智天使》》より上の階級。」


 「01(ゼロワン)が目当て……ということね。」


 すると、彼女の目が鋭くなる。まるで幾千の戦場を乗り越えた、生きる屍のよう。


 「話が早くて助かるわ……教えて貰おうか。」


 「それはごめんだね……」


 「君に選択肢は無いわよ。《《熾天使》》は生物、無機物問わず、対象のルールを書き換える能力。」


 そして鞘に手を置く……


 「君には今、〈イサ〉のルールに書き換えられている。つまり君が私の術中に居る間、能力は無いものとする。」


 なるほど、イサ……ルーンか。


 「全く飛んだインフレ能力だな……おい。でもその能力には欠陥があるんじゃないか?」


 「欠陥……?」


 「事実改変能力にはそれなりのデメリットもあるはずだ。」


 「そうね……でもそのデメリットを更にルールで消せるとしたら……?」


 「デタラメだね、でも攻略法は理解したよ。」


 「……!?」


 突然、彼らの周りが騒がしくなった。


 3体、5体、11体……いや53体は居る……無数のトーマの分身(アバター)が彼女を目掛けて走り出す。


 「ほぅ……?」


 「事実改変能力は永遠という訳には行かない。あんたの能力のデメリットは恐らく時間制限と同時発動できる数の制限。」


 彼女の口角は更に上がった。


 「なぜなら、僕が事前に使用した能力は消えていないからね。僕の能力を消したけど、更に僕によって発動されている能力の解除も追加すればいいものに、しなかった。1つは僕に、もう1つはデメリットを消す為に自分自身に……となればそのデメリットが数の制限のみなら、それを消して圧倒できるはず。そうしなかったということは、時間制限を消す方を選んだからと考えるのが妥当……」


 トーマは初見で見破ったみせた。


 天才である。


 「常時発動している君を相手に、時間制限の無視は必須だった……やはり最高だよ、エロイ……君はぁ!」


 2人は交わし交わされの激闘を繰り広げる。


 迫り来る無数の、能力を扱える分身(アバター)VSルールを書き換えられる真紅の髪の女性……勝敗はいかに……


 「ぼ……我は光を喰らい、闇を灯す者だぁ!」

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