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44. 乱入者

 ふっははははーっ!


 最高だ!


 最高だぞ!


 つまらん大会かと思っていたが、オレをここまで愉しませてくれるとはな!


 隕石(メテオ)か。


 その名にふさわしい魔法だ。


 この決勝という舞台にふさわしい魔法だ。


 オレを際立たせるために魔法だ!


 良いだろう、相手をしてやろう!


「はーっはっは!」


 隕石が迫ってくる。


 まるで空が落ちてくるようだ。


 いや違うな。


 まるで大地が落ちてくるようだ。


 大地を落とすとは、


「――無粋なことをしてくれる」


 オレの上を行くものは、なんであろうと容赦はせん。


「埋め尽くせ」


 隕石を氷で覆う。


 だが、隕石の勢いは止まらない。


 落ちてくる。


 間近に迫ってくる。


 ふっ。


 オレの視界を塞ぐとはいい度胸だ。


「砕けろ」


 パリンと音を立てて隕石が粉々に砕けた。


◇ ◇ ◇


 黒い装束を着た男は魔法大会の様子を真上からじっくりと眺めていた。


 しかし、会場は結界によって覆われているため、決勝戦の様子を見ることは出来ない。


「おかしい」


 男は呟く。


 手下の動きが確認できない。


 闇の手の者が会場に侵入し、それを合図に男が試合に乱入する手はずとなっていた。


 しかし、闇の手の者が会場に侵入する気配がない。


 大会は平和そのものだった。


 男は闇の手の者の中でも、かなりの実力であり、ナンバーズと呼ばれる特別な存在である。


 ナンバーズ(エイト)――骸。


 それが男のコードネームである。


 彼らナンバーズは過酷な訓練に耐え、薬物投与に耐え、死線をくぐり抜けてきた強者だ。


 さらに他の有象無象とは異なり、ナンバーズのほとんどはまともに思考することができる。


 しかし、骸に限っていえば、ほとんど操り人形のようなものだ。


 実力はあるが、過酷な環境に耐えきれず、思考を放棄している。


 意思が残っていようとそうでなかろうと、行動に変わりはない。


 上の指示に従って、ただ殺すだけだ。


 骸は魔法学園にある最も高い場所、時計塔の先端に立ちながら会場を見下ろしている。


 決勝戦はすでに始まっている。


 しかし、手下からの指示はない。


 この場合、骸は己の判断を優先することにした。


 骸に下された命令は決勝戦の二人を抹殺すること。


 つまり、アークとメデューサの殺害である。


 骸は黒い槍を片手に、塔から飛び降りた。


 そして会場に向かって一直線に降下していった。


◇ ◇ ◇


 隕石(メテオ)


 それは学生の大会では、オーバーキルな威力を誇る魔法である。


 メデューサもアークでなければ発動しない魔法だ。


 他の生徒だったら、殺してしまいかねないからだ。


 しかし、アークなら死ぬことはないだろうと考えていた。


「――――」


 隕石が氷に覆われ、そして瞬く間に砕け散った。


「まさかここまでとは……。化け物ですわね」


 と、呟く。


 アークなら死ぬことはないだろう。


 その予想は当たっていた。


 しかし、まさかあれほど簡単に隕石が砕かれるとは思わなかった。


――ゾワッ


 メデューサは肌に粟立つ感覚を覚えた。


 得体の知れない何かが迫ってきているように感じられた。


――ドンッ。


 メデューサは頭上に目を向ける。


 疑似フィールドを破って、黒い影が落下してきた。


 黒い影が地面に落ちると同時に砂埃が舞った。


 メデューサは最初、アークの攻撃だと考えた。


 しかし、


「……ッ!?」


 砂埃から髑髏の仮面をした謎の人物が現れたのだった。


 メデューサは自身が感じた警戒が、アークではなく眼の前の人物だったことに気づく。


 明らかに異常な状況である。


 決勝戦に、こんなサプライズが用意されているはずはないからだ。


 メデューサには、敵がどれほどの実力者かはわからなかった。


 しかし、彼女は直感的に敵が自分よりも格上であることを理解した。


 そもそもメデューサは接近戦が得意ではない。


 ここまで距離を詰められた時点で、メデューサはほとんど負けているようなものだ。


 だが少し時間を稼げば、すぐに救援が駆けつけてくるだろう。


 メデューサは下手に髑髏の人物を刺激しないよう時間稼ぎをしようと考えた。


「……何者でしょう?」


 髑髏の人物は答えない。


 その代わり、


「……ッ!?」


 髑髏の人物は一瞬でメデューサとの距離を詰めたのだった。


 そして、


「――猪突(ちょとつ)


 男は手に持っていた槍をメデューサの心臓めがけて突き出した。


 メデューサの時間稼ぎなどまるで見通しのように――否、そんなことを考えてすらいないかのように、ただただ抹殺することを目的に髑髏の男はメデューサを狙ったのだった。


 しかし、


石壁(ストーン・ウォール)


 メデューサは間一髪のところで石壁を出現させた。


 だが、


「――――」


 石壁が砕かれる。


 男が再び槍を構え、


「猪突!」


 今度こそ、骸の黒槍はメデューサの心臓を捉えた。


 メデューサは声を上げることもできずに目を見開く。


 そして、死を予感し――


氷柱(アイシクル)


 突如、骸の足元に氷の柱が出現したのだった。

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