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165. 地脈

 ふははははっ!


 なかなか手強い敵だ!


 オレをここまで苦労させたのは貴様が初めてだろう!


 だが、忘れるな。


 オレが負けることは絶対にない!


 貴様は大きな過ちを犯した。


 オレのテリトリーに踏み込んでしまったことだ!


 魔石さえあれば貴様などオレの敵ではない!


 大量の魔石かき集め、ブルジョア魔法で貴様を倒そうではないか!


 伯爵の力みせてつけてやろうぞ!


 ふははははっ!


 そのために魔鉱山で魔石の調達だな!


 ふはははっ。


 ふははははははははっ!


 ふははははははははははははははっはははっ!


 オレは負けんぞー!!


◇ ◇ ◇


 アークは勘違いしていることがあった。


 アークが普段使用している魔鉱山の魔石は、最高級のものばかりである。


 魔鉱山に行ったところで、最高品質の魔石をそう簡単には見つけられない。


 そもそもファバニールに鉱山ごと壊されたら終わりである。


 もっといえば、たとえ最高級の魔石が見つかったところで、ニブルヘイムではファバニールを倒せない。


 アークはすでに八方塞がりの状態であった。


 だが本人は本気で勝てると信じている。


 馬鹿というのはこういうときにはむしろ良いのだろうか。


 本来なら動けないはずの体なのに、盲信ともいえる執念で体を動かし続けていた。


 もしもこの執念がなければ、とっくに足が止まっていただろう。


「――――」


 ファバニールが吠えた。


 威嚇による魔法攻撃だ。


 精神が弱っている者には効き目抜群の攻撃だ。


 アークでなければとっくに心をくじかれていただろう。


 何をやっても勝てない。


 どう足掻いても勝てない。


 勝てる道筋さえもわからない。


 空の覇者、暴力の化身、竜の王。


 そもそも戦い挑むことが間違っている。


 ナンバーズで唯一、ヘルからの何の力を賜っていない存在だ。


 力を貰う必要がない。


 もともと圧倒的な力を持っているからだ。


 それにファバニールが欲しいものはたった一つだけ。


 ヘルにとってファバニールは、部下というよりも戦友に近い存在だ。


 ヘルと同格とでも表現するべきか。


 もはやアークに打つ手なし。


 絶望的な状況だ。


 だが、


「ふははははっ! 竜よ! 強き竜よ! 貴様の敗北はすぐそこだ。

この目で見届けてやろう。最強種として驕るその姿が、地に堕ちる瞬間をな!」


 このごにも及んで、アークは勝てると考えているのだった。


 アークのその自信はどこから来ているのだろうか……。


 それはアーク本人にしかわからない。


◇ ◇ ◇


 ふはははは!


 テンション爆上がりだぜ!


 だがまあ、


「ちょっとばかし、魔鉱山までは遠いな」


 行けないことはない。


 だが、オレはもっと効率の良い方法を思いついた。


「別に魔石使わんで良くね?」


 魔石は魔力が固まり結晶となったものだ。


 じゃあ、その魔力をそのまま使えば良くないか?


 たしか魔鉱山には魔力の流れ――地脈があると聞いたことがある。


 つまり、だ。


 地脈を使えば魔石なんて必要ない。


 それに地脈なら魔石よりも大量の魔力を扱えるだろう。


 やはりオレは天才のようだ!


「ふははははっ! 竜よ! 強き竜よ! 貴様の敗北はすぐそこだ。

この目で見届けてやろう。最強種として驕るその姿が、地に堕ちる瞬間をな!」


 これでオレの勝ちは確定した。


 あとは地脈を探すだけだ。


 しかし地脈か……。


 どこにあるかさっぱり検討もつかん。


 まあ、感でなんとか辿り着くだろう!


 なんせオレは天才だからな!


 ふははははははっ!


◇ ◇ ◇


 アークはまた一つ勘違いしていることがあった。


 地脈を感じ取るのは普通の人間にはできない。


 万が一地脈を感じ取り見つけ出したとて、地脈をそのまま使えはしないのだ。


 地脈を使えない理由はいくつかあるのだが、一番は地脈からの魔力が膨大でありコントロールできないことだ。


 もちろん地脈を利用したシステムは数多く存在する。


 その一つがバベルの塔の魔法システム――グングニルだ。


 バベルの塔そのものを媒介とし、地脈から魔力を引き上げることでグングニルを放つことができる。


 だがバベルの塔は精密に練られた魔術式と、地脈の魔力に耐えられる構造によって作られており、人間が扱うのとは理由(わけ)が違う。

 

 人間が地脈を無理やり使おうとすれば、体が魔力に耐えきれずに魔力回路が切れてしまう。


 最悪の場合、許容量を超える魔力によって魔力暴走が起きてしまい、死に至る。


 つまるところ、地脈を利用するのはそれだけ難しいということであった。


 アークは当然、その難易度を理解していない。


 魔力が大量にあるらしいから使ってみるか、という浅い考えしか持っていない。


 やはりアークは馬鹿なのであった。

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