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136. 迷子のアーク

 オレは考える。


 道に迷ったときはどうすればいいか?


 とりあえず高いところを目指すのがいいらしい。


 理由は知らんけど、前世でそんなことを学んだ気がする。


 だが、オレにそんなことしない!


 なぜならオレはアーク・ノーヤダーマだからな!


 ふはははっ。


 セオリーなんて無視だ!


 好きなようにして好きな場所に行く!


 というか腹減ってきたな。


 近くの村から食料を頂戴しよう。


 ふははははっ。


 オレは伯爵だからな。


 好き勝手に奪い取ってやるぜ!


 これこそ悪徳貴族だぜ!


 ん?


 あそこに村があるぞ。


 よし、あそこから食料を奪い取るとでもしようか。


 村に入ったが、なんだか様子がおかしいぞ?


 どういうことだ?


 なんかのイベントか?


 ふははははっ。


 そんなことオレにも関係ない。


 イベントだろうがなんだろうが、伯爵の権力振りまいて食料奪うのみ!


「ん? ちょっと腹がへって寄ったんだけど……なんか取り込み中だった?」


「お、お前は……アーク・ノーヤダーマ!?」


 ん?


 なぜオレのことを?


 って、当たり前か。


 オレはアーク・ノーヤダーマだからな!


 知らないわけがないだろう!


「ち、父上! これはチャンスです!」


 だれだ?


 この赤髪は……。


 なんか思い出せそうで……思い出せん。


 まあどうせモブだろう。


 思い出さんくても問題ない。


 そもそもオレからしたら、オレ以外全員モブだしな!


「ふっ、そうか。我にも好機が巡ってきたというわけか!

たかが相手は一人!

なぜここにお前がいるかは知らんが……。

ここでアーク・ノーヤダーマを殺せば我々の勝ちだ!」


「さすが父上!」


 なんだよ、こいつら。


 オレを殺そうってのか?


 あ、わかったぞ。


 こいつら賊だ。


 なんか装備がちゃんとしてるが、どうせ奪ったものだろう。


 その証拠にこいつらみんな汚いし。


 賊っぽさを感じる。


「ふっ」


 笑えてくる。


「なにがおかしい?」


「ふははははっ。

いくら見た目を取り繕うと、染み出る低俗さは隠せないときた」


「なんだと?」


「たかが百人程度でオレを殺せると?

貴様らにピッタリの言葉がある。烏合の衆だ」


「馬鹿にするのもいい加減にするがよい、アーク・ノーヤダーマよ!

おい、こいつを殺せ!

殺した者には莫大な賞金を出そう!

貴様らが一生遊んでも使い切れぬ額をな!」


 烏合の衆め。


 オレを殺そうとは傲慢にもほどがある。


「思い知れ。数の暴力を!」


「悲しいな」


 たった百人程度の賊でオレを殺そうだって?


 貴様らこそ、オレを馬鹿にするのもいい加減にしろって話だ。


 賊などオレの敵ですらない。


 オレの敵を騙ることすら烏滸(おこ)がましいと知れ。


「圧倒的な個に対し、数など無力だというのに。

抗うことすら虚しい。

せいぜい己を無力さを嘆くがいい。

まあそのときには貴様らは地獄に堕ちているだろうがな」


◇ ◇ ◇


「ひっ……」


 ロット侯爵は小さく悲鳴を上げた。


 あまりにも違う。


 違いすぎる。


 格が違う。


 ほとんどの兵士は氷漬けにされていた。


 何が起こったかわからないような呆然とした顔で氷漬けにされている。


「もう終わりか?」


「……っ」


 ロット侯爵は今までもアークの噂を耳にしていた。


 だが、どうせ誇張が含まれているだろうと考えていた。


 運良く魔鉱山が見つかっただけの男。


 多少の知恵が回るようだが、言ってしまえばそれだけの存在。


 つまるところ、ロット侯爵はアークを見くびり、侮っていたのだ。


「み、見逃してくれ……。そ、そうだ。見逃してくれたら、なんでもやろう!」


「なんでも?」


「あ。ああ、なんでもだ」


 ロット侯爵は媚びへつらうような笑みを浮かべる。


 それに釣られてアークも笑う。


「はっ。貴様は本当に笑わせてくれる」


「なんだと?」


「貴様が持っているモノなど、たかが知れとる。

何も持たぬ貴様からもらったところで価値などない。

そもそも、貴様を殺してから奪い取ればいいのだからな」


「そんなこと……陛下が許されるはずもない!」


「はっ。許されるかどうかなど関係ない。オレはアーク・ノーヤダーマだ。それがすべてだ」


 アークは不遜にも言い放つ。


 すべての中心が自分であるかのような傲慢さが彼にはある。


「くっ……くそぉぉぉ! 死ねぇぇ、アーク・ノーヤダーマァァァァァ!」


 ロット侯爵は即座に魔力を練る。


 その熟練度はやはり、侯爵を名乗るだけはある。


 並の魔法使いでは、その魔法の発射速度についていけず、燃やされて終わりだろう。


 だが、しかし――


絶対零度(アブソリュート・ゼロ)


 アークは並の魔法使いではない。


 一流という枠にも当てはまらない。


 国内最強といっても過言ではない魔法使い。


 そして近接戦闘において、アークの右に出る魔法使いは存在しないだろう。


 刻印によって詠唱を短縮しており、相手が魔法を使うよりも圧倒的にはやく魔法を行使できる。


「――――」


 ロット侯爵は目を見開き、怒りの表情のまま固まったのだった。


 役者が違いすぎた。

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