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118. 未来を創る

 ラプンツェルの直感は正しかった。


 アーク・ノーヤダーマは神級魔法を覚え、バベルの塔の頂上にたどり着く権利を手に入れた。


 そう、神級魔法を覚えることがバベルの塔の頂上にたどり着くための条件なのだ。


 いかに神に近い存在であるか。


 それが塔を登る条件であったのだ。


 ラプンツェルが頂上に行けたのは、バベル塔を解明し、神級魔法グングニルを使えるようにしたから。


 と、余談はさておき。


 ラプンツェルが待ち焦がれていたアークが、ついに100階にたどり着いたのだ。


「オレが未来を創っているのだ」


 アークがラプンツェルに向けて言った言葉だ。


 まさにその通りであった。


 ラプンツェルは、アークのことを何年も見てきたから知っている。


 アークによって救われてきた人たちが大勢いることを、ラプンツェルは知っていた。


 アークとはまさに希望の象徴のような存在だった。


 娘たちの希望、そしてラプンツェル自身の希望であった。


 アークによって大勢の人の未来が救われてきた。


――アーク様に絶望を与えてはならない。


 グングニルを発動させることで、アークに絶望が降りかかるかもしれない。


 それは避けたかった。


 しかし、アークがグングニルを発動させるために、100階まで来たことも理解していた。


「未来あるアーク様に、その槍を使わせる私をお許しください」


 ラプンツェルにはグングニルを発動させる権利がない。


 管理者は、グングニルの発動の手伝いをすることしかできない。


 アークのような希望を持つものに絶望を与えたくはなかった。


 しかし、


「舐めてもらっては困るな。オーディンの力くらい使えなくてどうする?

オレはアーク・ノーヤダーマだぞ?」


 とアークが言ったのだ。


 そのとき、ラプンツェルは悟った。


――アーク様ともなれば、グングニル程度(・・・)に大きな希望を抱くことはないのでしょう。


 そもそもアークそのものが希望なのである。


 わざわざグングニルに希望を抱かなくても、どうにかしてしまうのがアークである。


 と、ラプンツェルは考えた。


 そんなアークなら、大した犠牲もなくグングニルを使えるかもしれない。


 いや、きっとアークならそれができる。


 そうラプンツェルは考えていた。


 しかし、アークが世の中の希望であればあるほどに、一つ大きな問題が生じた。


――アーク様をバベルの塔に閉じ込めておくことはできない。


 ラプンツェルがバベルの塔から出る方法は、別の誰かに管理者の権限を移譲することである。


 しかしながら、権限を移譲された人物はバベルの塔から出られなくなる。


 アークに管理者権限を渡し、彼をこの場に留めておくことはできなかった。


 アークがいなければ世界が闇の手によって侵食されていってしまうからだ。


 ラプンツェルは自分が解放されることよりも、アークに希望を託すほうが良いと考えた。


 娘たちのことを考えたら、なおさらアークをこの場に閉じ込めておくことはできないと思った。


 そうしてラプンツェルは、アークに娘と希望を託し、今後何十年、何百年であろうとこの場に居続けようと決意するのであった。




 ちなみにこのときアークはぽけーっとのんきに窓の外を眺めていたのである。


 ラプンツェルは色々とアークのことを勘違いしている。


 ポンコツアークに大事な娘と世界の希望を託してしまうとは、ラプンツェルも可哀想な女性であった。

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