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115. ソードマン

 マギサは、自分と同じ容姿の少女を見つめる。


 キメラを倒してくれたから目の前の少女は仲間である、そう考えられるほどマギサは楽観的ではない。


 むしろ敵であると可能性のほうが高い。


 その理由はいたってシンプルだ。


 少女が黒ゴーレムを率いていたからだ。


 かつてマギサたちを襲った黒ゴーレム。


 それを率いている時点で敵と考えるのが妥当だろう。


「――――」


 ソードマンが黒ゴーレムに襲いかかる。


「いきなりのご挨拶ですね」


 マギサとまったく同じ声色でその少女はつぶやく。


 黒ゴーレムはソードマンの攻撃を腕で防ぐ。


「――カキンッ」


 硬い音が戦場に響く。


 ソードマンが追撃する。


 カキン、カキンとソードマンの剣と黒ゴーレムの体がぶつかり合う。


「あなたは……だれ? なぜ私を狙うのですか? 目的はなんですか?」


 マギサが目の前の少女に問う。


 何を目的にしているのか?


 マギサは王女という身分である。


 狙われる理由は、それだけで十分だ。


 だが、そんな簡単な理由ではないだろうと考えた。


「理由を探すために、あなたを狙っているのです」


「……意味がわかりません」


「手段のために動く人間もいるということですよ。

いえ、この言い方には少し語弊がありますね。

手段が先行しているということでしょうか?」


「つまり、理由もなく私を狙っているということですか?」


「理由を見つけるために、です。そこはお間違えなきようお願い申し上げます」


 どちらにしろ、マギサからすれば同じことだった。


 同じく理解できない。


 おそらく、目の前の少女は、マギサに対して理由を伝えるつもりはないのだろう。


 マギサはそう認識した。


 二人の問答の間もソードマンと黒ゴーレムが激しくぶつかり合っている。


 マギサはその戦いを見ながら疑問を覚えた。


「弱い……」


 黒ゴーレムが想像したよりも弱いのだ。


 以前黒ゴーレムが現れたときは、マギサでは手も足もでなかった。


 特に巨大な黒ゴーレムはマギサでは戦いにすらならなかった。


 だが、いま目の前にいる黒ゴーレムは巨大な黒ゴーレムよりも弱く、ソードマンでも十分対処できていた。


 明らかに以前出会った巨大な黒ゴーレムよりも弱い。


 なぜ?


 マギサは自身の周囲に人形を配置し、別箇所からの襲撃を警戒する。


 目の前の少女が演習場を襲った人物だと考えて間違いないだろう。


 それならば、目の前の少女は大量の黒ゴーレムを操る力がある。


 マギサのはるか上をいく魔法技術を持っているはずだ。


 なのに、ソードマンが黒ゴーレムを押していた。


「何を企んでるのです?」


 目の前の少女はマギサの質問に答えない。


 ただまっすぐとソードマンの動きを目で追っていた。


 そして、その瞬間は訪れた。


「――――」


 ソードマンが大きく飛びながら、黒ゴーレムの首をスパッと斬った。


 コロコロと黒ゴーレムの頭が地面を転がる。


 そして、ガタンッと重たい音とともに、黒ゴーレムの胴体がうつ伏せとなって倒れた。


「やっぱり、おかしいです」


 この程度で勝てるほど、黒ゴーレムが弱いはずがない。


 おかしい。


 違和感しかない。


 と、そのときだ。


「――解析完了しました。ありがとうございます」


 目の前の少女がなぜかマギサにお礼を言ってきた。


 と、その直後。


「――――」


 ソードマンがいつの間にか、マギサの眼前にいた。


「なんで……?」


 そして、マギサの首元に剣を突きつけていた。


「そのお人形さん、私も欲しくなりました」


「……ッ!」


 マギサは他の人形たちに自分を守るように命じている。


 人形たちがマギサを守るよう、同時にソードマンに襲いかかった。


「――――」


 だが、ソードマンが一瞬で人形たちを斬り伏せた。


 そしてソードマンが再び、マギサの喉元に剣を向けてくる。


 少女がゆっくりとマギサの目の前にやってきた。


「あなたの命は、いつでも奪えるのです。ええ、いつでも」


――殺される。


 そうマギサが感じた、そのときだ。


「……ッ」


 マギサは驚愕に目を見開く。


 目の前の少女の瞳から、一筋の雫がこぼれ落ちていた。


「なぜ……泣いているのですか?」


 マギサの言葉に少女はハッと驚いたような表情を浮かべた。


 それはまるで、自分が泣いていることに気づいていないかのような表情だった。

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