04. 婚活ギルドへ!
私が次にするべきことは、婚活ギルドへの登録。
ギルド登録なんてしたことないけど、まぁなんとかなるでしょう。
私はそんな軽い気持ちでギルドを訪ねた。
すると、ギルドの敷居をまたいだ途端――
「どうして私は登録できないの!?」
「冒険者としての実績は積んでるのに、なんで俺はダメなんだ!!」
「ちょっと、責任者出てきてよ! わたくしのどこに問題があると言うの!?」
「僕のような高給取りがダメでは、誰も登録できないんじゃないですか!?」
――窓口にずらりと並ぶギルド職員に、参加希望者であろう男女が食ってかかるのが見えた。
騒いでる連中は、どうやら登録を拒否されたようね。
登録条件ってそんなに厳しいのかしら。
「ご来訪のお客様は、こちらへどうぞ」
空いているカウンターの職員が、私を手招きしている。
……らしくなく緊張してきたわ。
「婚活ギルドへ、ようこそいらっしゃいました。ご登録希望ですね?」
「ええ」
「まずは、婚活ギルドの理念とその役割についてお話します」
職員の話を要約すると――
近年、晩婚化が著しいギルティ王国。
その波は、婚活環境に恵まれていない冒険者界隈に、特に大きく響いている。
冒険者はなんだかんだ言っても、国民にとって欠かせない人材。
王国としても、彼らのプライベートのケアをしてあげたい。
そこで、国王の命を受けたある人物が、冒険者対象の婚活推進組織・婚活ギルドを立ち上げるに至った。
集え、愛に焦がれる者達よ!
ギルドがあなた方の相思相愛を支援します!!
――だってさ。
「以上です。もし意に沿わない点がある場合、ギルドへの登録はできません」
「あるわけないわ」
「では、こちらの書類をご確認ください。ギルド条項や契約内容が書かれていますので、問題なければサインをお願いします」
カウンターの上に出された書類は、魔力測定紙で作られたものだった。
しかも、普通の紙に見えるようにかなり丁寧に偽装されている。
きっと低レベルの冒険者をはねるための仕掛けね。
魔力測定紙は、大雑把だけど触れた人間の魔法適正を判断できる。
紙面のどこかに合否が浮かび上がる仕組みなんでしょう。
「……読んだわ」
「では、こちらの羽ペンをお使いください」
続いて、職員から羽ペンを渡された。
受け取ってすぐわかったけど、この羽ペンにも何か魔法が施されている。
「お気づきのようですね。お客様はかなり鍛錬された魔法使いとお見受けしました」
「まぁね。でも、どんな魔法がかかっているのかまではわからないわ」
「その羽ペンには、真実の魔法が込められています。嘘偽りを記載しようとすれば、ペン先がブレるようになっておりますのでご注意ください」
……徹底してるわね。
周りで騒いでる連中は、魔力測定紙とこの羽ペンで早々にはねられたわけか。
冒険者のケアを謳う割には、ずいぶん厳しいじゃない。
『お嬢。まさか馬鹿正直にグランヴァージュの名前を書くわけじゃないっスよね?』
『え?』
『人間界では、グランヴァージュ家は悪の代名詞っスよ。悪戯で名乗ることすらはばかられる嫌われようっス』
『ちょ、私達って世間的にそんな扱いなの?』
『世間の一般的な教養では、魔女一族は人間でありながら魔王に与する裏切り者の一族って認識っス。特に、聖騎士一族と懇意なこの国ではそれが顕著っスよ』
『ふぅん。あなた、相変わらず物知りね』
『お嬢は魔法のこと以外、ほんと外の情報に興味ないんスね……』
『……と言うことは、もしも外で私の素性がバレたら?』
『即、王都の魔女討伐軍や魔女狩り冒険者が大挙して押し寄せてくるっスから、くれぐれも気をつけて!』
ちょっと……これ、いきなり詰みじゃないの!?
嘘を書けば登録を断られるし、真実を書けば即戦争なんて、冗談じゃないわ!
「どうしました? サインはフルネームでお願いします」
職員の笑顔が恐ろしく感じるわ。
もしかして婚活は建前で、不穏分子の洗い出しが目的なんじゃないでしょうね?
……さて、どうしたものかしら。




