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第一話 その男、謎につき


ここは、異世界“エクラガル”大きな2つの大陸に存在する7つの国々と壮大なる海に囲まれた1つの国が存在する世界。

そこは大自然に恵まれ、エルフやドワーフの他多くもモンスターや種族、人間達がこの世界には存在する。

そんな世界のとある王国“アルンブルク”。

ここは、広い土地と多くの人間が生活している。


─────王国“アルンブルク”城内騎士団長室


「いきなり呼び出して何かと思えば謎の男を保護したと?妾にそれを伝えて何かあるのかのう?」


黒いコートに身を包んだ齢20歳にも満たぬ白髪少女が、ソファーに足を組んでくつろいでいた。


「御足労御掛けして申し訳ありません。今回の件は、貴方の力が必要不可欠かと思いまして。まずは、これを見てください。」


一人の青年が教卓の上にとある物を置く。

それは長くて1メートル程の緩やかな弧を描いた物だった。


「何じゃこれは?」

「分かりません。ですが、昨日保護した者が身につけていました。恐らく武器の類だとは思いますが、我々騎士団はこれを見たことがなく…」


少女は徐ろにその長物を手に取りまじまじと観察する。


「どれどれ…重量は、お前達の使う剣と然程変わらんのか…おっと…」

「あぁ、気をつけて下さい!中には刃物が!」


すると、その長物は平べったい筒と中の刃物に別れていた為か少女がうっかり筒から刃物を抜いてしまう。

その刃物は、まるで鏡の様に部屋に差し込む日光を反射させ辺り一面を明るく照らし出す。


「な、なんじゃ!?これが武器と言うのか?芸術品の間違いじゃ無いのか?」

「はい、私もそう思いましたが切れ味は確かです。私達が扱う剣をも遥かに凌駕しています。」


少女はその刃物と筒をそっと教卓に置くと元いたソファーへと戻る。


「鏡の様に綺麗ではあったが、妾も産まれて初めて見るのう。」

「そうですか…。でしたら、一度医務室に一緒に来て頂けますか?翻訳魔法の付与をお願いしたいのですが…。」


青年は筒に刃物を納めると新たに頼みごとを提案する。

少女は少し不思議そうな顔をして


「なぜ、翻訳魔法なのじゃ?異国の者ならば国境を跨いでおれば、言葉は通じるはずじゃが?…………………、まさか………。」


青年は、少女を見て軽く頷く。

なるほどと理解した少女はソファーから立ち上がると青年と一緒に部屋をあとにする。


一方その頃、アルンブルク城内医務室にて。

そこには広い空間に、30個程のベッドが均等に並べられている。

その内の一つに謎の男が眠っていた。


「彼の容態は?」

「心臓も脈も特に異状はないかと、目立った外傷は無いので…」


白い制服を着た男女が話をしている中、ベッドで眠っていた男がゆっくりと目を開く。


「…………、ここは…地獄か…天国か…うっ…」


男がか細い声で喋りだし、ゆっくりと起き上がる。


「おっと、起きたか。無理はするな、まだ安静にしないといかんぞ。」


白衣を着た男は、ベッドの男に声を掛ける。

しかし、男は呼び掛けに反応することなく辺りを見渡す。

だが彼は、無視したわけではなかった。

分からなかったのだ。

白い制服を着た男女が何を話しているのか。

聞いたことのない言語に戸惑う彼は、何かを探し始めた。


「刀は?刀は何処にある!?吾の刀は何処だ!」


男は目の前にいる男女に質問するが彼らもまた、男の言葉が分からず首を傾げた。


(ここは、一体何処だ?日本なのか?外国か?海に流され辿り着いたのか?それよりも刀を探さなければ…)


男はベッドから起きようとするが体がふらつき倒れてしまう。

慌てた男女は、倒れた男の体を支えベッドへ戻そうとする。

しかし、自身の刀を探したい男は必死に抵抗する。


「離してくれ!吾は、刀を探したいだけだ!日ノ本言葉を話せぬお主らには、分からぬであろうが刀は侍にとって命なのだ!」


彼がさらに抵抗しようとしたその時であった。

彼の体は光の鎖の様な物に縛られ身動きを封じられてしまった。


(な、何だこれは!?動けない…一体、何が起こっておる!?)

「ほう、目覚めたら大暴れするとは。本当に、昨日まで瀕死の状態だったとは思えんのう。もう離してよいぞ。妾が拘束魔法で抑えておるからのう。」

「は、はい!ありがとう御座います!ルヴィー様!」


男を掴んでいた男女は、そそくさとその場を立ち去る。


「それで?リック騎士団長殿、こやつはどうするのじゃ?」


そこには先程の少女が手をかざし魔法で男を拘束していたのだ。


「すみませんルヴィーさん。ありがとう御座います。えぇと…、とりあえずベットに寝かして翻訳魔法をお願いします。恐らく言葉が通じてる様子は無かったので…。」


ルヴィーと呼ばれた少女は拘束した男をベットへと強制的に移動させるともう一方の手を翳して魔法を発動させる。

しかし、彼女はその時に違和感を感じたのか首を少し傾げる。


「………?こやつ…ほほう…これは面白いのう!」


ルヴィーは、ニヤニヤと笑みを浮かべるとリックと呼ばれた青年に対し


「リック騎士団長?こやつ、お前の言う通り“異世界”の人間じゃのう。」


体を拘束され身動きの取れない男は、体力が尽きたのか大人しくなる。

男の状態を気にする事なくルヴィーは、翻訳魔法の付与と拘束魔法を維持し続けていた。


(言語分析にはそれ程時間がかからぬと思ったのじゃが…これは、厄介じゃのう…。本来なら、他国の言語分析は1分も掛からぬというのに…妾の魔力も無限ではないのじゃが、仕方あるまい。)


ルヴィーは、少し面倒くさそうな顔で男を見つめる。

5分ほどたったところで彼女は、男の翻訳魔法の付与を終わらせた。


「ふぅ…ちと厄介じゃ…んんっ!こんな事で妾の魔力を使うとは、見返りは貰わんと割に合わん!」


彼女が咳払いと溜息をすると拘束された男に回復魔法を使い始めた。


「ほれ、名の知れぬ男よ。お前の翻訳魔法の付与は終わっておる。言葉は通じるはずじゃ、喋ってみよ。」


すると、彼女の言葉に反応したのか目を見開き驚いた顔でルヴィーを見つめる。


「御主、日ノ本言葉を話せるというのか!?良かった!吾の刀を知らぬか?寸法は約2尺7寸程の長さで弧を描いた物なのだが…見てはおらぬか?」

「な、なんじゃ!なんじゃ!急に喋りだしたかと思えばカタナじゃと?そんな物妾が…」

「お、落ち着いて下さい!二人とも、とりあえず彼の素性を…」


リックがその場を落ち着かせようとする中、ルヴィーはベラベラと喋りだす男に引いていた。

そんな中彼女は、ふとその“カタナ”と言う物に身に覚えがあったのを思い出した。

なぜなら、先程騎士団長室で見た物こそこの男が探していた“カタナ”と言うものだったのだ。

それに、“カタナ”と呼ばれるそれは騎士団長であるリックが持っていたのだ。


「リック。こやつは、お前の見せた刃物の事を探しておるのではないのか?」

「刃物?もしかして、こちらの物を探していたのですか?」


そう言うと、リックはルヴィーに見せた弧を描いた刃物を男に見せる。

すると男は再び目を見開き、リックに目線を移すと


「そう!これだ!この刀がなければ吾は生きる気力すら無くすところであった!忝ない!恩に着る!」


男はさっきまでの険しい形相から一変、安心した顔になり起き上がろうとするが


「済まぬがこれを解いてはくれぬか?先程から身動きが取れぬ故、ちと苦しいのだが…」


男は、ルヴィーの拘束魔法により起き上がれずにベットに寝かされたままになってしまっていた。

解除してしまえば再び暴れるのではないかと心配なルヴィーに対し、リックが声をかける


「ルヴィーさん、拘束魔法を一旦解除してもらえませんか?」

「よいのか?また、暴れだすかもしれんぞ?」

「構いません。その時は、私が対応します。」


リックの言葉に少し心配するも指示通りルヴィー拘束魔法を解除した。

開放された男は、再び起き上がり両腕を伸ばし背伸びをする。

すると、ベットの上で正座をしルヴィーとリックに対し男は頭を下げる。


「先程の無礼、本当に申し訳無い!言葉も通じず、侍の命とも言える刀を無くし、取り乱してしもうた!武士の恥!本当に済まぬ!」


男は医務室中に聞こえる程の大声で謝りだした。

あまりの大声に二人は驚き目を合わせる事しか出来なかった。

だが、そんな事はお構い無しに男は顔を上げ喋り続けた。


「あぁ、申し遅れた!吾の名は佐々島刀侍郎と申す!流浪人なれど侍として、無型流を扱っておる!ここは日本でない事は百も招致、故に説明願いたい!」


話が止まらないのではないかと思ったが聞きたいことが多すぎる為か、ルヴィーは空いた口が塞がらなかった。

一方、リックは騎士団長を勤めているおかげか状況を一つ一つ整理しようと佐々島に話しかける。


「すみません。ササジマさんと言いましたか?まずは、ここはアルンブルク王国の城内になります。貴方の言う“ニッポン”という国は、残念ながら聞いたことはありません。理解して頂けるかは分かりませんが、ここは貴方のいた世界とは異なる世界と思われます。」


リックの話を真剣に聞く佐々島は、腕を組み少し悩んだ表情をし辺りをよく見渡すと何かを理解したのかなるほどと頷く。


「まぁ、詳しい事はよくは分からぬがここが吾のいた世界と異なるという事は分かった。説明忝ない!えぇと…御主の名は…」

「あぁ、そうでした。私は、焰帝騎士団団長のリック・レオ=フィードと言います。こちらの方は、ルヴィー・マーガント。聖焰魔術師団の団長をしております。」

「どうも、妾に感謝するんじゃな。お主に、翻訳魔法と回復魔法を使ったんじゃから。」


リック達は自己紹介をしたもののルヴィーは機嫌が良くないのかそっぽを向いてしまった。

リックは、やれやれと思いながらもふと手に持っていた長物を佐々島に渡そうとする。


「ササジマさん、こちらは貴方の物を一時預かっていました。勝手な行動、申し訳ありません。お返しします。」

「いや、こちらこそ大事に預かってくれたのだろう。忝ない!っと言いたいのだが…もう一本はどこにあるのかの?」


刀を一本渡されるも再び困った表情をうかべる。

それもそのはず、佐々島の刀は2本あったのだ。

侍の中には脇差と刀の2本を常に装備し、場所に応じて使い分けていたのだ。

佐々島は、不安になったのか辺りをくまなく探し始めようとする。


「ササジマさん、もう一本なら我々の訓練場にあります。言うのが遅れてしまい申し訳ありません!もし、必要であれば訓練場まで案内いたします。」

「そうであったか!それなら、リク殿!案内願いたい!」


探す手を止めリックに軽く頭を下げる。

すると、一人だけ蚊帳の外だったルヴィーが困惑する。


「おい、待て!妾を置いてくつもりか!この愚か者!」


置いてかれると思ったルヴィーは、リックに対し怒鳴り始める。


「あぁ、すみません!ルヴィーさん、翻訳魔法付与と回復魔法をありがとう御座いました!礼は、後日送らせていただきます。」

「………っ。わ、妾もちょうど暇だったのでのう。少し、付き合ってやる。」


そう言うと3人は訓練場の方へと向かうのであった。

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