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アランの話 1

暫く休止しておりました。申し訳ありません。活動報告にも書きましたが現状が一段落したので今回からまた再開したいと思います。またよろしくお願い致します。


復帰一発目から彼の回ですが、需要がなければ読み飛ばしてください。


 可愛らしい彼女の笑顔は俺一人に向けられるものだと思っていた。

 でも違った。

 今、彼女が笑顔を向けている相手は王太子だった。奴は彼女の腰に手を回しながら、ほんの一瞬、蔑むような笑みを俺に向けた。護衛としてここにいる俺は、幸せそうに笑う二人をただ黙って見ている事しかできない。

 二人を祝福する沢山の歓声が耳鳴りのように聞こえて酷い頭痛がする。

 

結局俺は彼女に選ばれなかったのだ。なぜ俺ではないのか。

二人の挙式から毎日そればかりを考えている。


 父との賭けに負け俺は、その後すぐにソフィアとの結婚が決められた。

 どうしてこうなったのだろう。なぜだ。なぜだ…。

 彼女の代わりなどいない。彼女でなければだめなのだ。こんな事ならいっそ、地位も身分も全て捨てて、今すぐにでもここから逃げ出してしまいたい。そうしてすぐに彼女を攫って、二人だけで生きていきたい。そんな願いが叶うならどんなに幸せだろう。


 願望と現実が入り混じり、葛藤する日々が続いた。そんな状態でも無情にも時は過ぎていく。あっという間にソフィアとの挙式の日を迎えことになった。


結局俺は行動できなかった。そんな自分に対する情けなさと、自分の意思ではないこの婚姻に苛立つ気持ちを必死に抑えていた。


 沢山の参列者を迎える為、二人で並んで立つように促されると視界の隅にソフィアが見えた。

 隣にいる俺の様子を窺うようにこちらを見ている。気丈に振舞っていたかと思えば、時折悲しそうな表情で顔を伏せるソフィアに、俺はさらに苛立ちを覚える。どうしてこんな女が俺の隣にいるんだ。なぜソフィアと結婚しなければいけないのか。


 確かに幼い日のあの時、ソフィアに婚姻を申し込んだのは自分自身の意思だった。それからソフィアを大切に想ってきた事も事実だ。

 しかし、俺は彼女と出会ってしまった。

 天津爛漫で明るい彼女は貴族の世界しか知らなかった俺に、まったく別の世界があるのだと教えてくれたのだ。それから会うたびに惹かれていく自分に気がついた。それ以来彼女と会う時間が楽しみで仕方なくなっていった。

 そんなある日、いつも明るい彼女が珍しく思い詰めたような暗い表情をしていた。何があったのか慌てて問い掛けると、彼女の口から衝撃の事実を告げられたのだ。

 その告白というのは、ソフィアが彼女を卑劣な方法で虐めているという内容だった。

 転入したての彼女を平民だと見下し、子供じみた嫌がらせをしては他の令嬢と常に笑いものにしていたのだ。そんな内容を泣きながら俺に打ち明けてきた彼女を疑う余地は無かった。自分が彼女を守らなくてはいけない。そんな強い使命感を感じていた。

 その日からソフィアに対する信頼と愛情は消え失せていった。それと同時にソフィアに対して怒りと軽蔑の感情が芽生え始めて行った。

 そんな相手との婚姻なのだ。到底納得できるはずがない。


 それでも俺はソフィアとの挙式をどうにか耐えてやり切った。しかし本当の問題はこの後の初夜だ。

 父上との制約には子作りがしっかり盛り込まれているからだ。最悪だ。自分がこの屋敷に生まれた事を呪った。初めての相手は彼女ではなくソフィアになるのだ。女の扱い方なんて分からない。

 相手が愛しい彼女だったのなら…。全てが理不尽で身分に縛られている現状に嫌気がさす。もう、どうとでもなれ。半ば自暴自棄になっていた。

 ふと、強い酒を煽りながら行為を行えば、あとはどうにでもなるだろうと考えた。俺はすぐに、近くにいた使用人を呼び止め、強い酒の用意をしておくように命じた。


 夜が更けて、使用人に促された俺はソフィアが待っている部屋に出向いた。部屋の前に立って勢いよくドアを開けると、目に入ったベッドの上にはソフィアがいて、俺を見るなり酷く驚いた表情をしていた。

 俺を見ながら落ち着かない様子のソフィアは、裸体が透けそうなほど薄い衣を身に着けている。

 俺はその姿を見て激高していた。まるで売女だ。

 マリアから伝え聞いた醜い素性のソフィアと、今目の前で卑猥な衣を見に着けているソフィアが合致したような感覚を覚えたのだ。俺が知らないソフィアがいる。清楚で可憐なソフィアは、やはり幻だったのだと思い知らされたように感じた。同時に酷い裏切りをされたような、そんな卑屈な気分にもなっていった。


 俺はベッド脇に用意されていたグラスに酒を注ぐと一気にそれを煽った。

 行為が終わるとすぐ、組み敷いていたソフィアの体を開放して、だまって部屋を出て行く。 

 閉めたドアの前に立つと、ソフィアのすすり泣く声が聞えている。

 酔いがまわり過ぎたのだろう。幻聴が聞こえる。お前は最低だ。何度も何度もそう俺を罵倒する声が聞こえる。

 嗚咽交じりのソフィアの泣き声を聞きながら無意識に俺は俺に問いかけている。

 なぜ俺はこうなった。俺はどこで間違えたのか…。



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