第1話【新学期】
涼しかった秋が過ぎ、寒くなり始めた12月の初め。コートのポケットに手を突っ込みながら同級生のガムとスクールバスを待つ。
ガムとはエレメンタリースクールからの付き合いだ。臆病でたまにノリの悪い事もあるがその慎重さで衝動的に行動する俺はガムに何かと救われている。
ちなみにガムってのは本名じゃなくてあだ名だ。ガムをよく噛んでいるからガム。エレメンタリースクールの時に付けたあだ名で俺はちょっとダサいと思っているんだけれど本人は気に入っているみたいだ。
『あ、サウス。バス来たよ。』
『やっと温まれる〜ホント、外寒すぎ…』
サウスって言うのは俺のあだ名。エレメンタリースクールの時は左利き(サウスポー)が少なかったから珍しがられたっていうだけの理由。ミドルスクールでは左利きなんて沢山居たから周りからは変な目で見られたけどな。
本名はゲイブ・スミス。アメリカでは一般的of個性皆無な名前だ。主人公とは思えないネーミングだと思う。
黄色いバスが目の前に泊まり、ドアが開く。
『まじで黄色って嫌いだわ…』
『え、どーして?』
天然なのかただのアホなのかとぼけた顔をするガムを後目にバスに乗り込む。
『ゲイブ君、ガム君おはよう。道が工事してて、遠回りしてきたから少し遅れちゃったんだ。』
運転手のサムはバスの椅子に座っている…というよりハマっているような太った体型をしている。この体型だからか、こんなにも寒い中ハンカチで汗を拭っている。
サムに挨拶を終えた後、先に乗っていた友達に手を振り、いつも決まって座る後ろから2番目の2人席にガムと座った。
俺ら以外にはこのバス停を使う人が居ないので座ったと同時にサムはバスを発車させた。
『ねぇサウス、レイジー今日はバスに間に合うと思う?』
『嫌、アイツの事だから「今起きたわ、新学期初日とかダルすぎやわ〜今日は家でゲームするわ。」って2時限目くらいに連絡が来るに10ドルだな。』
『なんかそれありそう。でも今日はバスがちょっと遅れたし、僕はギリギリ乗って来れると思うなぁ〜。』
ガムとくだらない賭けをしていたらあっという間に次のバス停についた。
バスのドアが開いたと同時に乗車をする生徒達…と後ろからスケボーに乗ってバス停に急いで近づいてくるブロンドの髪の毛のパーカー青年。
『間に合ったぁあ!サム、おはようさん!』
耳に付けていた赤いヘッドホンを外し先に乗っていた同級生達と握手を交わし、くだらない短い会話をした後にこちらに近づいて来る騒がしい奴。
『お前、今日は間に合ったのか、珍しいな…。今日はダルいとか言って休みかと思ってたんだけど。』
『ほらね!やっぱり間に合うって言ったでしょ!』
『サウス酷いわぁ〜!今日は朝っぱらからちゃ〜んと起きとったわ!!』
説明するまでもないだろうが彼がレイジーだ。本名はレイジー・オー・ブライトウェル。ミドルスクールの時に友達になったイギリス人で特徴的な喋り方も彼が話すのはアメリカ英語ではなくイギリス英語(関西弁)だからだ。
無類のゲーム好きで夜行性人間の為学校によく遅れたり休んだりするのに勉強は出来るっていうのが謎だ。
『朝早くから起きてたのにどうしてギリギリだったの?』
『んー…今日から従兄弟来れる予定やったんだけど体調崩してもうて宥めとったんよ〜涼しい顔しといて負けず嫌いやからどうしても行きたいって騒いどったんやけど無理すんのも良くないで〜言ったら泣いてもうて…。』
『オーストラリアから来た子…だっけ?』
『ちゃ〜う、オーストリアや!クラシックの国。』
バイオリンを弾くような真似をした後にレイジーは肩を落として寂しそうな顔をした。
『俺の従兄弟めっちゃかっこええから紹介したかったんやけどなぁ〜。』
「レイジーとあまり似てないんだっけ?身長高そうだなぁ」とガムが口を挟むと「余計なお世話!」とレイジーがガムの頭を軽く叩き、バスが笑いに包まれた。
話をしている内に目的地である学校にはあっという間についた。バスから降りる時にサムから「頑張ってね!」と言われたが休み明け直ぐにこんな学校で頑張れるもんか、と心の中で答えた。
なぜならこの学校には青春など存在しないからだ!
The Strange MenことTSMの本編の連載を開始しました!
いつも絵を描いている人で文字はあまり得意ではない自己満足分野なので書きたいな、と思った時に不定期にあげる予定なので更新スピードは遅めになりますが定期購読をしていただけたら嬉しいです。
今回のお話ではアメリカ人の男の子が2人とイギリス人の子を1人登場させましたが、他にも色んな国の子を登場させるつもりなので楽しみにしていて貰えると嬉しいです。