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なんでオレが魔王に!?  作者: 月陽灯影
5/6

少しお花を摘みに行ってきます

 

 なん…だ…

 体が重い…それに感覚が…

 いや……痛い……痛すぎる……


「こりゃぁひどい」

「全滅ですね」


 だれ……だ?

 オレは……ここに……いる…ぞ


「あっ、まって、この子まだ生きてる!!」

「ですが、もう間に合わないでしょう。キズが酷すぎます」

「――ド。なに勝手に諦めているの!! そんなのやってみないとわからないでしょ!?」


 まだ……痛い…

 いや……なんだか…

 痛みが……なくなって……

 意識も………


「だめ!!」

「エ――。諦めましょう。もうどうしようもないのです」

「まって!!《―――――》をするわ!!!」

「――ン!!!それだけはダメです!! それにきっと合いません!!!」

「なら、あきらめるの?」

「仕方がないでしょ…」


 いや…だ……

 オレは……まだ!?


「それってこの子が――――だから?」

「そうは言っていません!!」

「もういい!! とにかくやるわ!?」


「エレン!!!!!!!!」


 う…


 うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!



 ガバッ!!


「はぁはぁは」


 なんだったんだ今のは。夢か???


 悪夢にうなされ飛び起きたオレ。ベットは汗でグチャグチャで服もあり得ないほど濡れていた。しかしこれほどになるほどの悪夢を見たのに関わらずオレはどんな悪夢を見たのか思い出せないでいた


 コンコン


「おはようございます。陛下」


 いつも通りセードが起こしに部屋にやって来た。しかしオレの姿を見ると怪訝そうな表情になった


「陛下。大丈夫ですか…」

「あ、あぁ……」

「悪い夢でも見たのですか?」


 確かに悪夢は見たと思う。しかし内容がどうしても思い出せないでいた。しかしふとある単語が頭をよぎった


「なぁ……セード」

「なんでしょう」

「《―――――》ってなんだ?」

「………知らない言葉ですね」

「そう、か……」

「陛下。どこでそれを知ったんですか?」

「んっ? なんとなく、な……そう…なんと、なく…」

「そう……ですか」


 どこか微妙な雰囲気になり押し黙るオレとセード。そしてセードはオレの反応を待っているようにも、オレの発言で考え込んでいるようにも思えてきた。だが


「朝食の準備が出来てますのでお越し下さい」


 セードはそれだけ言うと頭を下げて部屋を出てってしまった。残されたオレはなんだか心がざわついた……


 オレは一体どんな夢を見ていたのやら……




 部屋の外。立ち尽くすセード


「どうするべきか……いずれ知るなら……エレンに聞いてみるか……」


 いつも以上に神妙な表情になり、自分なりに納得したのかスッと顔をあげるとセードは食堂の方へ向かっていったのだった







 魔王城。食堂


 オレが食堂に行くとすでにイレーナが待っていた


「やぁ、おはよう。イレーナさん」

「あっ、おはようございます。ジークリフ様」

「ジークリフじゃなくてジルでいいよ。あと様もつけなくていいよ」

「いえ、そう言うわけには。それに私がジークリフ様とお呼びしたいのです」

「そっ、ならいっか…」

「それと私の事はイレーナ、と呼び捨てで結構ですよ」

「あ、いや…それは……」

「すみませんでした。いきなり馴れ馴れしかったですよね」

「いやっ!? そんなことないよ!?」

「でしたら…」

「う、うん、イレーナ」

「はいっ!!」


 うぉぉぉ!! 朝からそれはヤバイってぇぇ!!!


 イレーナの満面の笑みに心奪われ若干挙動不審になってしまった。イレーナは昨日とは違いどこか機嫌が良さげでそのあとは一緒に朝食をした。だが食事をしているのはイレーナとオレの2人だけだった


 マーリも客人なので一緒に食べようと誘ったのだが一応立場があると断られ今はセードと並んで食堂のすみで待機していた


 仕方がなくイレーナと2人で朝食をしたのだがそこである失敗をしてしまった


「イレーナ。昨日はよく眠れた?」

「き、昨日ですか!? あっ!! あっ!!」


 普通に質問したのだが急に顔を赤くしてうつむいてモジモジしはじめたイレーナ。どうやら昨日はよく眠れなかったようだった


 そりゃそうか…不安で眠れないか……


 機嫌を直してもらおうかと話題を変えなんとか話をしたがそのあと終始イレーナははにかんだ笑顔だった。そして食事が終わりくつろいでいたらある考えがよぎった


「そうだイレーナ。しばらくここにいるわけだから城を案内してあげるよ」

「よろしいんですか?」

「もちろん」

「ありがとうございます」


 わぁ~、相変わらずかわいいな~


 イレーナの笑顔に癒されているとセードの顔を見てしまった。そしてなんだか、案内は私がしますから陛下は仕事してください、と言われるような気がしてきた


 が


「姫様。私もお供します」


 まさかの横やり。ある意味イレーナと二人っきりを想定していたのだがマーリも同行すると言い出し落胆した


 だがセードが


「マーリ様。国王陛下に対する返礼についてお話したい事が…」

「セルロイド殿。それは昨日―――」

「マーリ様!」

「………そうでした。姫様。申し訳ありませんがお供はできませんでした」


 セードはなんだか目でマーリに語りかけ、マーリもまたすぐにそれを察知していた。こうしてオレはイレーナと2人で城の中を回ることにしたのだが


「ジークリフ様と……2人っきり………」


 イレーナはまたしてもうつむき小声で何か言っていた 




 食後、そのまま城を案内すると思ったらイレーナが一旦部屋に戻り着替えたいと言ってきた。どうやら昨日と今着ていた服は着飾る物で普段着というか動きやすい物に変えたいと言ってきたのだった


 こちらとしても断る理由はないし、色々見て回るつもりなのでむしろイレーナの言うとおり動きやすい格好の方がいいかもしれなかった


 そんなわけで2人でイレーナの部屋まで行き、オレは部屋の外で待つことにしたのだった


 しばし待つ


「お待たせしました」

「(じ~~~~)」

「ジークリフ…様?」

「んっ!? いやっ!? すごく似合っているよ!!!」

「えっ、あっ、ありがとうございます」


 イレーナの服装。それは確かに似合っていた。昨日…というか先程のまで着ていた服は確かに着飾ったような服でなんとなく全体的に豪華な感じがしてそれとなくフリルとかもついていた。袖とかスカート丈も長く、お人形さん、とまではいかないがお姫様、といった感じだったのだ


 しかし今の服装はそういった感じはなく、もちろんフリルとかはなく袖とかスカートの丈は短め、さらに動きやすさを重視してかなんとなく体のラインがわかるようにピッチリとしていた


 だが…


 大問題が発生した…


 イレーナは気にしていないが…


 イ、イレーナって意外と胸大きいんだ……


 ついつい視線がそこに行ってしまう。だがイレーナはそのまま恥ずかしいそうにしながら話してくれた


「あ、あの。私。あぁいったフリルとかついた動きにくい服は好きじゃなくて、そ、それに王立の、魔術学校に通ってましたので、どうしてもこう言った、動きやすい物ばかり、着たくなって…」

「あぁ、そうなんだ。ふ、ふ~ん」


 やはり視線はそこに行ってしまう……


(はわわわ~、ジ、ジークリフ様が私の胸ばかり見てる~、ど、どうしましょ!? で、でもなんだか、嫌じゃない。というか…なんだかもっと見てほしいというか…)


 キョロキョロと視線を泳がせるイレーナ


 あんまり見ては失礼だなと思った。しかしすでに思いっきり見ていたがその事はこの際忘れることにした


「じゃ、じゃ~行こっか」

「はっ、はい!!」


 こうして魔王城探索は始まった


 魔王城


 その響きだけでゴテゴテして不気味な子供が泣いて叫びそうなイメージがわきそうだがそんなことはない。はっきり言おう。普通のお城。ファンタジーとかによく出てくるような物ではない!!


 もちろんトラップとかはない!!

 動く床? むしろあったら楽!!

 トイレや風呂場もキチンとある!!

 寝室は…オレの部屋は意外に質素!!

 宝箱? そんなものはあちこちにない!!

 ちゃんと宝物庫にしまってある!!

 盗まれたら大変だし、中には呪われた武具もあるから!!

 魔族? あ~うん。魔族は普通にいる……

 と言うか基本魔族しかいない…

 だけど戦闘になんかならん!!


 そんな魔王城。玉座の間以外に大ホール、小ホール、会議室とありさらには露天風呂まである。地下室には大量の書籍などもあり常時200名近い使用人が共同生活をしている


 それとよく玉座の間が出てくるが意外と狭い。本当に謁見を目的としたもので下手したら小ホールの方が大きいぐらいだ。盛大にやる場合なんかは大ホールを少し改造するのだ。するとあら不思議。描いたような玉座の間の出来上がり


 なんか夢をぶち壊してしまって申し訳ない……


 一通りイレーナと城の中を見て回って今は庭園にいる


「うわぁ~すごいですね」

「気に入った?」

「あっ、はい!」

「そ、よかった。姉上に感謝だな」

「お姉様…エレノーラ様ですか?」

「今でこそ使用人が管理をやってくれているがもともと姉上の趣味というかなんというか、これだけは真面目にキチンとやってたから」

「そうだったんですね」


 そのままイレーナはご機嫌に花を眺め楽しんでした


(本当によく手入れされていますね。ですがそんな方が多くの同胞を殺して父親さえ自ら手にかけたんでしょうか…)

(あれ?確かエレノーラ様がお父様を手にかけたのって40年ほど前ですよね? それにしてもジークリフ様のお姿が……)


 ふとイレーナはある疑問を持ったのかオレに確かめるように疑うように話しかけてきた


「そ、それにしてもジークリフ様は()()()のに大変ですね」

「んっ? そんなに若くはないよ。40代半ばだし…」

「えっ? えっ?」


 イレーナは驚き混乱していた


「あ~そうか、イレーナは知らなかったんだ。確かに魔族と人族は同じような寿命で同じように歳をとった姿になるけどそれって正確じゃないだよね」

「どういう事ですか??」

「正確には魔族の寿命って生まれ持った魔力量で寿命が決まるんだ。そして多ければ多いほど若い姿を保っていられるんだよ」


 大概の魔族は魔力を多少多くてもおよそ70歳~90歳の寿命だ。しかし貴族など一部の上級魔族は魔力量が多く130歳位生きる。そしてそういった者は寿命がくる20年位前まで若い姿だったりするのだ


 そしてオレの姿だかイレーナより少し上位の20才(はたち)になるかならないか位の姿をしているのだった


「姉上なんか20代半ばに見えるのに実際は120歳位だし、セードに至っては140歳近いよ」

「そっ!! そうなんですか!?」


 セードは確かにオレより年上には見える、しかしそれでも30歳前半の姿をしているのだった


(そ、そんな…ジークリフ様ってそんな年上の方だったなんて……それなら私みたいな子は子供にしか見えないのね……)


 イレーナは知らなくてもいい事実を知らされたようになり肩を落として落ち込んでしまっていた。そしてなんだかその場を立ち去りたいようの雰囲気になっていた


 そして


「すみません。ジークリフ様。私、少し()()()()()()()()()()()()

「えっ???」


 そしてそのままイレーナは城の中に、庭園にオレを残して立ち去ってしまった


「……お花を摘みにって……目の前にあるじゃん………」


 おそらくお手洗いの隠語として言ったのだろがイレーナは自分が言った矛盾に気がつかないほど落ち込んでいた




 ―――――――――――――――




 魔王城。廊下


「は~どうしまっしょ…」


 イレーナはかなり落ち込んでいた。そしてその事にさらに落ち込んでいた。イレーナはジークリフの態度からもしかしたら自分に気があるのではないかと思い始めていたのだったが、それは男の(さが)だったのではないかと思い始めているのだった


「なんでここに人族がいるのかしら?」


 イレーナは不意に声をかけられてそちらを見ると妖艶な女性がいた。その姿はとても大人びていてセードと同じ30歳ぐらいに見える。露出が少なめな服装なのに関わらず同性でもドキドキとしてしまうほど色気に満ちていた


「あの…えっと…」

「フフフ、そんな警戒しなくてもいいわよ」

「あ、はい」

「で、なんで人族がここにいるの?」

「私はアーフェルミ王国、第3王女イレーナ=レヴィ=アーフェルミです。ここには友好の使者としてジークリフ様に滞在を許可されてます」

「そ、友好の使者…ね~」


 すると妖艶な女性はイレーナを見定めるようにジロジロと見始めた


「あの、何か?」

「んっ? そうそう、私はリーナ=ブリーゼル。一応はグーレスム地方を治める立場にいるわ」

「あなたが……お初にお目にかかります。いつも我が国によくして頂きありがとうございます」


 イレーナは頭を下げて挨拶をした。魔王国とアーフェルミ国は秘密裏に友好を結んではいるが実際はクーレスム地方と友好を結んでいるのだった。つまり今回同盟を結ぶとは、グーレスムだけでなく魔王国全体と同盟を結ぶと言う意味だったのだ


「よろしくね。ところで使者ってことはあなたもジル様を狙っているの?」

「なっ!? なっ!?」

「何をそんなに驚いてるの? 使者って所詮建前でしょ?」

「い、いえ!? そんなことは!?」

「ふ~ん」

「と、ところであなたもって事は……」

「当然、私もジル様とそういった関係を望んでいるわ」

「そ、そんな………」


 イレーナは絶望した。先程ジークリフが自分に気がないかも知れないと思えてきたところに更なる追い討ちを受けたのだ


 そしてイレーナから見てリーナは同性が見ても魅力的でそんな相手に自分が勝てる訳がないのだと思えてきたのだ。さらに相手が悪すぎる。今回同盟の話が出来たのはクーレスムのおかげなのでアーフェルミ国としては多大な恩義があるのだ


 そんな相手の恋路を邪魔など出来るハズもなく、もう身を引くしかないのだとイレーナは考えてしまったのだ。それはこの場で泣き出さなかった事が不思議ぐらいの衝撃だったのだ


(やはり分不相応でしたのね……)


 もうこの場からいつ立ち去ってもおかしくない感じのイレーナであと少しそのままだったら立ち去っていただろう


「ふ~ん。ジル様ってこういった子が好みなのかしら?」

「えっ???」


 リーナの言葉に驚いたイレーナ。そして先程からずっとリーナが自分の事をジロジロ見ていた事に気がついた


「あ…あの、それはどういった意味でしょう?」

「ん?、あのねジル様って今まで特定の女性を側に置いた事がないのよ」

「で、でも。今回は友好の使者として、政治的意味として仕方がないのでは?」

「それでも、よ。ジル様が本気で嫌なら多分どうにかしちゃうわ。ほんと嫉妬しちゃう」


(まってそれってまだ私に可能性があるってこと!?)


 リーナの言葉で微かだが希望が見えてきたイレーナ。だがそれでも相手が悪いと思い直したのだが


「あぁ、ごめんなさい。別にあなたと争う気はないわ」

「えっ??」

「私はジル様を独占したいは思っていないし、独占出来るとも思ってないから」

「それって…」

「そ、あなたはあなたで頑張りなさい」

「あ、ありがとうございます」


 反射的にイレーナは頭を下げお礼をのべた。そして頭を上げるとすかさずリーナはイレーナに詰め寄ると手を握った


「それと! 隠し事はしないこと! キチンとジル様と何があったか話して! 私も話すから!」

「は、はい!!」


 イレーナの返事を聞くとリーナは微笑み満足いったという雰囲気になると手を放しイレーナから距離とった


「でもお互い苦労しそうね」

「どういう事ですか」

「ん~、ジル様ってそもそも誰かとそういった関係になることを望んでないから」

「はいぃぃ??」

「不思議そうね」

「当たり前です!! あっ、し、失礼しました」

「別にいいわよ。あなたとは同士みたいなものだから気なんか使わなくて」

「それで、どういう事なんです?」

「ん~、私からは何も断言出来ないわ。だけどそうね…エレノーラ様にお会い出来ることがあったら尋ねてみたら」

「エレノーラ様…ところでエレノーラ様ってどこにいらっしゃるんですか?」

「ん? ん~~? 誰も知らないけど見当はつく、かな?」

「誰も知らない?」

「ま~いらっしゃると色々めんどうな事になるからね。それにエレノーラ様はもう…」

「そんな…どうして……」

「まっ、色々あるのよ。それと……あなたなら…ま、いっか」

「ん? なんです?」

「エレノーラ様の居場所だけど――――――」


 なんとなくな聞いてはいけないのではないかとイレーナは思ったが流れ的に断れず聞いてしまったエレノーラの居場所


「ジル様には言っちゃダメよ」

「どうしてです?」

「これもま~色々あるのよ。じゃ。私そろそろ行くね」

「色々ありがとうございました」


 イレーナが挨拶をするとそのまま立ち去るリーナ。その後ろ姿を見るとイレーナはもう一度深く頭を下げたのだった




 ―――――――――――――――



 魔王城。再び庭園


 イレーナどうしたんだろ?


 イレーナの落ち込みように頭を抱え彼女が戻ってくるのを待っていたのだが


「すみません。おまたせしちゃって」


 戻ってきたイレーナは先程よりはるかに上機嫌でなんだか嬉しそうにしていて笑顔だった。どうやら機嫌が戻っていて一安心だ


「じゃ、もう少し見て回ろうか」


 次はどこへ行こうか悩んでいるとイレーナもなんだか同じように考え始めていて不意に声をかけてきた


「つ、次はどこに行かれるんですか~?」


 ちょっ!! イレーナ!!!


 オレはまともにイレーナの方を見れなかった。イレーナは恥ずかしそうにしていたが手を後ろに回し少し前屈みになり、首をかしげながら上目遣いで訪ねてきた。そしてその格好はもともと大きかったイレーナの胸がさらに強調されなんだかイレーナも押し出しているような感じさえした


(は、はずかしー!! で、でもジークリフ様が見てくれてる!? こ、これくらい、いいよのね!?)


 あまりの事にキョロキョロ辺りを見ようとしたのだがどうしても視線がそこに行ってしまったのでオレは急かすようにあるきだした


「そ、そうだね。次は()()()()()()()()()()()


 大ホールはすでに行った……


 そんなでも構わん!!


 そのあとはイレーナとしばらく一緒にいたのだがイレーナが無意識に色々誘惑と言うか強調というか、してきたので我慢が出来なくなり、仕事に戻ると半ば逃げるように執務室へと向かった




 ――――――――――




 魔王国。ヨーデン伯爵邸


 不機嫌そうに座るヴォロ=ヨーデン伯爵。すると扉を叩く音がして返事をするとシデル=ハルゼル子爵が入ってきた


「お呼びですか。伯爵」

「よく来てくれた、シデル」

「本日はどのような用件で?」

「用件も何もないだろ!! あの娘についてだ!!」


 ヴォロは怒りが我慢が出来なかったのか机を叩きながらシデルに言い返していた。それに対してシデルは態度を変えることなく聞き返していた


「あの娘ですか…」

「フン。人族の娘が我らが魔王様に近づくとは分不相応ではないか?」

「たしかに!?」


 わざとらしく驚くシデル。ヴォロは特に気にすることなく、それどころか口許を怪しく緩ましていた


「そこでだ、あの人族の娘をお前の見世物小屋に出演させてくれんか?」

「それは構いませんが、よろしいんですか? あの娘を殺してしまうかも知れません…」

「構わん。むしろ好都合ではないのか? 娘が死ねばきっと向こうが宣戦布告してくれるんじゃからな。きっかけはともかく戦争になれば忌々しい人族を滅ぼせると言うもの」

「なるほど……」

「ま~死ななくとも人族は怒り狂って戦争を仕掛けてくるわけだが…それとこれはベイ様からの依頼でもある」

「ベイ様の……わかりました」


 ヴォロの口から出た人物の名を聞くとシデルは納得し、頭を下げるともう話が終わりだと思い部屋を後にするシデル。そして残されたヴォロは深くため息をついた


「まったく。魔王様もなぜ人族の娘を側に置いたのやら。我が娘を差し上げたと言うのに…」


 ヴォロはジークリフが自分の娘を気に入ることを疑わなかった。しかし自分の娘が選ばれるどころかイレーナが側いることに納得できなかったのだ


「まぁ良い。それに人族との戦争が始まれば魔王様も王としての自覚をもってくれるだろう。しかしあのクソ女の弟。まさかあの女のようによもやならないだろうか?」


 ヴォロはあごを触りながらこれから起こるであろう未来に不安を持ちつつそれでもそこまで違った未来にはならないだろうと考えていたのだった





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