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第七話 闇夜の来訪者

 背中をいやな汗が伝います。

 じつは私、名づけが大の苦手なのでございます。

 かつて知り合いの上位煌銀狼ハイヤー・スターリング・シルバーウルフに娘さんの名付け親を頼まれたさいには、山を歩き、滝に打たれ、三日三晩断食断眠のまま深淵の神々に祈りを捧げ、ようやくのことで考え付いたものでございます――すなわち、『ポチ』と。

 にもかかわらず皆様に必死で止められたので、おそらく私の名づけセンスそのものがすでにいまいちなのでございましょう。

 すなわちこれは不肖私めにとって、大変な難問でございます。

 いったいどうしたものでしょう。これに比べれば、こうして聞いたこともない物語をつむぐなど、げに造作もなきこととすら思われて参ります。


 ですが、そこは旦那様。私めの苦手はよくご存知でいらっしゃる。ちょうどよいタイミングで、助け舟を出してくださったのです。


「せっかくだから俺たちで名前を付けてあげないか?

 そのほうが、もっとおじいさんたちを好きになれるだろう?」


 ああ、旦那様! ナイスフォローでございます!

 坊ちゃまもきらきらと瞳を輝かせてうなずかれます。


「そうだ、そうだね! パパあったまいい!

 じゃあ、ひとりづつきめよう。

 一人目はねー、おじいさんだからねー……おじっち!」


 これが、才能の差というものでございましょうか。

 ぼっちゃまは羽根のように軽々と、私の限界を飛び越えてゆかれます。

 それも、このうえなく愛くるしい笑顔で、やわらかなおふとんに寝そべったまま。

 わたくしはその姿を、ただただまぶしく見、熱くため息するのです。


「よしじゃーつぎはパパ!」

「よし! それじゃ二人目は……おじだ!

 おじいさんのじじと次男の次をかけてみたんだ、どうだすごいだろう!」


 旦那様もさらりとこのハードルを越えなさります。

 しかも、はるか極東・サムライの国の知識まで織り交ぜてのインテリジェンスあふれる名づけです。

 さすがは旦那様。亡き父と私が忠誠を捧げし、自慢の当主様です。


「次はママだぞ、さあ、どうする?」

「では私もパパにならって。三番目のおじいさまなのだから、おじぞうさんね!」

「なんか道端に立ってるストーンゴーレムみたいな名前だなぁ」

「そうなのよ、ときどきアルバイトで立ってるの!」

「年取ってからの立ち仕事って大変じゃない?」

「立ってると見せかけて座ってるかもしれないな!」

「相棒の四番目のおじいさんはおじで木こりに扮した仕事人でー」


 わいわいと話し合うお三方。じつにほのぼのとして、可愛らしいものでございます。

 そうこうしているうちに、『メゾン・ド・ハーレム』のおじいさんたちの名前と経歴が決まってゆきます。


 すなわち――

 超レアモンスター『シバ』を従えた特A級ハンター・おじっち!

 最強の剣闘士にしてエクスナイト筆頭・おじ

 愛を知ったストーンゴーレム・おじぞう

 昼は乙女の心の山林管理者、夜は伝説の戦斧で悪を断つ、影の仕事人・おじ

 体はおじじ、心は子供の名探偵・おじコ!

 いついかなるときも自在に無の境地に飛ぶことのできる夢想仙人・おじむー!

 おじむーに秘められし第二の人格、陽気な南国の妖怪王・おじむなー!


 ここまで考えたところで、お三方はおねむになったようでございます。

 彼らを登場させてのつづきを約束いたしますと、あっという間に夢の国へ。

 いやはや、おとぎばなしを差し上げていたはずが、今日は逆に楽しませていただいてしまいました。

 このまま、三つのかわいらしい寝顔に癒されていたいところではございますが、私にはもう少し、仕事がございます。


 まずはそう――さきほどするりとお庭に入り込んでいらした、あのお客様。

 当主ご夫妻がおねむとなりました今、この私めが代理として、当家の名に恥じぬおもてなしを差し上げねばなりません。

 私はゆっくりと、腰を上げました。

評価、ブックマーク、閲覧、ありがとうございますっ!!

正直、予想を上回りすぎてビックリです!


明日は三回にわけての投稿予定です。

次回(一部分)は明日八時~九時ごろ、その次(二部分)が13時台、三回目(二部分)が19時代を予定しております。

もしかしたら13時台、19時台は予約投稿になるかもしれません。

とりあえず、寝坊せんようにせねば……^^;

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