第十二話 北へ
前部分、最終の一文が抜けておりましたので、こちらにも掲載させていただきます。
『 お子様がたをあたたかなおふとんにお連れして、あとは、大人の時間といたしましょう。』
なんだか間が抜けた感じになってしまい、困惑されたかもしれません。すみませんでした!
坊ちゃまのお気に召すまま~執事セバスチャンの超・改変おとぎばなし~
2019/08/02
ご指摘ありがとうございます! 誤字修正いたしました。
30行目: そのへんも含め、やはり彼とは一度、ひざを交わして→交えて
今日もそろそろ、お時間です。
広間では皆様お待ちのはず、のんびり急いでまいりましょう。
と、廊下の片隅でふらふらとしている男が一人。誰かと思えばガードナーです。
私はその背をたたき、声をかけます。
「だから言ったでしょう、ドニ。程々にしておきなさいと」
「……んあ? おお、セバ。
んっでお前は平気なんだよあんだけ飲んで~……」
「紳士のたしなみでございます。さ、参りますよ」
「うー……俺もお昼寝してぇ……」
「はいはい、早く来ないと聞かせませんよ?」
「う゛~~~……」
半泣きの友を引きずり、さあ、扉を開けましょう。
私の物語もそろそろ、クライマックスが見えてきました。
無事に終わらせることができればよいのですが、どうなることでしょう。
胸ポケットに忍ばせた小さなメモ。吟遊詩人さまがそっと手渡してこられたそれの示す先は、おそらくこれから決まるのですから。
* * * * *
「――王子さまと若武者は、お姫様に扮して北へと向かいました。
無茶だと反対するものもいましたが、必ず成功させると説得し、わずかな供のものだけをつれ、全速力で向かいました。
しかし、もしも失敗したら怒り狂った竜王により、国は焼き払われてしまうことでしょう。
これまで王子さまとその母君をじゃけんにしていた宰相や他のお妃さまたちも、知恵を出してくれました。
竜といえばお酒が好きなもの。酔っ払っている間に倒してしまえるようにと、贈り物としてとびっきり強いお酒をたっぷり用意してくれました。
もちろん、竜王に飲ませるからには、二人もそのお酒を飲まないわけには行きません。
そのときに逆に酔いつぶれてしまわないようにと、特別な薬も持たせてくれました。
馬車に乗り、野を越え山こえ、北へ、北へ。
もちろん、王子さまの国が攻められてしまえばよいという者たちも大勢います。
かれらは次々に、暗殺者や怪物を差し向けてきます。
また、どこでうわさを聞きつけたか、王子さまたちが持っている贈り物に目をつけた盗賊たちや、ひとさらいもやってきます。
けれど、心配してこっそりついてきてくれたおじいさんたち、さらにはおじっちさんに従うモンスター『シバ』も助けてくれて、王子たち一行は無事に、竜王の住む氷の城へとたどり着くことができたのでした。」
広間はいまや、しんと静まり返っております。
皆の視線が注がれる中、私は大きく息を吸い込みます。
わたしとて、緊張しないわけではございません。いえむしろ、人一倍のびびり屋ではないでしょうか。
しかし、だからこそ、私は平静をつくろうのです。
気にしていただくべきは、いまはこの物語。私はただの、語り部にすぎませんので。
「王子さま一行は、すぐに宴席に招かれました。
玉座にはかわいらしい少年の姿をした竜王が、豪奢な衣装をまとって座し、遠路はるばるようこそ、と一行をねぎらいます。
豪華に飾り付けられた大広間には、手の込んだ豪華な料理がたくさん、たくさんならんでいました。
贈り物のお酒が運びこまれて、その場の全員の杯に注がれます。
――さあ、運命の乾杯です!
しかし、竜王はお酒を飲もうとしませんでした。
お酒を満たしたグラスに、丁重にキスをしただけです。
きけば、竜王は15歳。年齢的には成人ですが、成人の儀はあしたです。
北の国では、成人の儀を終えていない竜人はお酒を飲んではいけないため、このようにするしきたりとなっているそうです。
ともあれ、宰相たちの作戦は失敗してしまいました。
どうしようか。王子さまと若武者が顔を見合わせたところで、竜王は言います。
『申し訳ありません、姫。
ですが、あなたを私のお嫁さんに、という気持ちにうそはありません。
もう、だれかに城を追い出させたりなどさせません。母上様ともども、一生お守りいたします。
明日の式典で私は正式に成人します。そのあかつきにはどうか、私の求婚を受けていただきたいのです』
どういうことでしょう。話を聞けば、意外な事実が明らかとなりました。
今回はシリアスです。
絵で見れば確実に“何か”がおかしいのですが、字面はシリアスです。