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第十一話 再会と、旅立ちと

2019.03.17

なんてこった、最後の一文が抜けてました!

お詫びして追加いたします!


「そのすばらしい『とりハム』のうわさは、すぐに王子さまのお耳にも入りました。

 献上されたそれを、一口食べて気がつきます。

 この絶妙な塩加減。まろやかな味わい。ジューシーで、口の中で弾むような食感。間違いない。これはあの若武者のつくった『とりハム』だ!

 王子さまは、急いでおじいさんたちの家に向かいました。

 かつて『メゾン・ド・ハーレム』と言われたそこは、いまや『メゾン・ド・ハム』と名を変えて、たいそう繁盛しておりました。

 王子様は白髪の若者を見つけて呼びかけます。

 やっと見つけた、さあ、一緒に行こうと。

 ――記憶を失っている若者は、困惑します。

 しかし、あれから山中の捜索で見つかった若武者のブーツをはかせてみれば、ぴったり足にフィットします。

『パレス・オブ・ブレイブ』で投げ捨てていった、剣を持たせてみてもしっくりきます。

 お城に連れられていくときに、かたみにと持たせてもらったしいたけを頭に載せてみても、まったく違和感がございません」


 そこまで語ったときです。

 猫の坊ちゃま、二ヵ月半の茶白の子猫様が、ひどく愛くるしくツッコミをくださいました。


「ミー(っていうか顔そのまんまなんだよニャ)?」

「ヒトガタの髪の色や顔のつくりなど、どうとでもなるものでございますよ。

 王子さまは若者の体格、身ごなし、息遣いと目配り、声のひびき、発音の癖、かすかな体臭、くわえてしいたけとのフィット感など全てをふくめ、若者があの若武者であると判定したのでございます。

 現に王宮騎士<ロイヤルナイト>の座を得ようとして自らに、もしくはわが子に全身整形を施したものは全国でおよそ五億人くらいいましたが、それらは全て瞬時にニセモノと看破されておりました」

「ミィィ(人間こわいニャ)……」

「ミィミ(わたしたち、こねこでよかったね)!」

「ミッ(うん)!」


 かわいらしくやり取りをする坊ちゃまとお嬢様を、三毛模様もお美しい母君様が優しくなめて差し上げます。

 ああ、なんとなんとお可愛らしい。まわりの皆様もうっとりとしておられるので、私めもしばし、ともに目の保養をさせていただくことと致しました。

 ――やがてふわふわとした灰じまのお嬢さまから続きのご用命を受け、私は再び話し始めました。


「王子さまは若者にいいます。


『まちがいない、君はあのひとだ。

 お願いだ、僕と一緒にお城に来てください。

 僕に斬りつけてしまったことを悔いているなら、その必要はないよ。

 だって僕は、一ミリも傷ついてはいない。

 竜王との対決や、城の者たちとの対立が恐ろしいなら、僕の後ろで見守ってくれればいい。

 たとえ記憶がなくたって、君は僕の大切な家族で友だ。

 この国の王子として、いや、一人の男として、君を守ってみせるから……!』


 王子さまは若者の前にひざまずき、大切なかたみのしいたけを差し出しました。

 そのとき、奇跡が起きました。

 若武者の残したしいたけは、神のしいたけ。その香りには、強い癒しの力があるのです。

 その力で若者は、記憶をとりもどしました。

 心労と恐ろしい体験から真っ白になっていた髪も、みるみる黒さをとりもどします。

 全てをとりもどした若武者は、力強くいいます。


『ああ、全部思い出した!

 そうだ、お前は俺の相棒、俺はお前の相棒だ!

 いま何日だ? 竜王との婚儀は何日後だ?

 俺も一緒に北の国へ行く。そして、竜王に話をつけてやる!』


 こうして記憶をとりもどした若武者は、七人のおじいさんたちに見送られてお城へ行きました。

 そして、若武者と王子さまはお姫さまに扮して、北の国、竜王の待つ氷の城へとむかったのです……」


 ここまで話して気がつきました――おや、そろそろ坊ちゃまがおねむのようでございます。

 いつもより少しはやめですが、昼間にたっぷりと駆け回られたせいでしょうか。

 それでは、今日はここまで。

 お子様がたをあたたかなおふとんにお連れして、あとは、大人の時間といたしましょう。

大人の皆様こんばんわ。子供の皆様おやすみなさい。

閲覧、評価、ブックマーク頂き嬉しいです。ありがとうございます!


明日は、14時台と17時台の投稿予定(各二部分)でございます。

本日の予定が明日にずれ込んだので、こっちが予約投稿になる見込みです。

いよいよクライマックスです。お楽しみに!

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