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承前~執事セバスチャンの災難~


 わたくしの名はセバスチャン。

 とある名家のあるじにお仕えする、執事にございます。

 はい? 悪魔? 何のことでございましょうか。

 私はあくまで、ただの執事にございます。

 当家にお仕えして520年、ただひたすらに真面目一筋。

 ほかには目だったところとてない、堅物者にございます。


 当家にはひとり、お世継ぎの坊ちゃまがいらっしゃいます。

 髪はぬばたまの黒、瞳はりんどうの青、抜けるように白い肌にすらりとした体つき。

 まだ幼いながら、奥様ゆずりのお美しさは輝くよう。

 旦那様ゆずりの聡明さは、同年代の子らの中でも抜きん出ていらっしゃる。

 まさしくどこにお出ししても恥ずかしくない、自慢の坊ちゃまなのでございます。


 しかしそんな坊ちゃまにも、ほんのすこしだけ困ったところが……。

 その聡明さゆえでしょう、坊ちゃまはたいそう、自由奔放なお方なのでございます。

 そのため、あえて私を困惑させるようなお申し付けをなさることがあるのです。

 たとえば――


「セバスチャン、なんかおはなしして!

『もものこたろう』と『灰かぶり』と、『すのーほわいと』いがいのやつなっ!」


 しかも坊ちゃまは、私が悩み、戸惑う様子をいたくお気に召してしまわれたようで。

 いつもこうして、ちいさなお手で私の袖を引かれます。


「なーなー、おはなししてー!

 セバスチャンのおはなし聞かなきゃオレおひるねしなーい!」


 けれど、さくら花のようなくちびるをとがらせて可愛らしいご命令をなさる、そのご様子はもうかわいくて、かわいくて。


「……しかたありませんねえ。それでは、お話をいたしましょう」


 困ったなあと思いつつ、私はいつも折れてしまうのです。

 坊ちゃまのお昼寝用ベッドのわきに静かに腰をかけ、さあ、どうしましょうか。

 必死に頭をひねり、私は話し出しました。

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