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いきなりだが、どストレートに言わせてもらう。
私はメンドくさいこと、厄介ごとが大嫌いだ。
目立たない、他人と関わらない、平凡な人生でありたいーーそれらをモットーとしている理由の1つとして、その事が挙げられる。
余計な関わりを持つから、面倒なことに巻き込まれる。
だったら、自分から関わりを持たなければ良い、それだけの話。
だから私は、学校でも決して目立つ事のない、まさに「空気」のような存在になりたい、そんな理想を持っている。
おっと、自己紹介が遅れちゃった。
私は水園 マナ。どこにでもいる普通の女子高生。
一応この小説で、主人公やらせてもらってます。どうぞよろしく。
私の紹介は追々またやるとして、話を戻そう。
ここで、「空気」という言葉について少し考えて頂きたい。
空気というものは、いつも我々人間の周りに存在している。人間…を始めとした生物達は、その空気に含まれる酸素を吸って生活している。
でも、それらは誰にも気づかれることはない。ましてや目に見えることもない。
しかし、無ければ生物は死んでしまう。空気が無ければ生きていけない。
いちいち肺から酸素を取り入れ、二酸化炭素を吐き出そう、なんて意識しながらやるわけではない。 ごく自然に行っていることなんだから。
勘のいい人なら、私が何を言いたいのか分かってくれたと信じるけど、私が理想としているのは正にそういう事。
決して目立つ事なく、それでいて何事もなく平和に過ごす。
それこそが、私が理想としている"平凡でいつも通りの普通の日常"なのだ。
そんなことを話していたら、あっという間に家を出る時間になってしまった。ふぅ、やっぱり自分の話をすると時間だけが過ぎていく。だからあんまり好きじゃない。
制服に着替え、スクールバッグを肩に掛けながら部屋を出て、玄関に向かう。
「いってきまーす」
…と言っても、みんなもう出掛けていて、私1人しかいないんだけど。
そう思いながらも、私は玄関の鍵をガチャっと閉める。
7月10日 水曜日ーーー時刻は午前8時
空はまだぼんやりと霞んでおり、送電線に止まっているスズメが2、3羽、ぴーちくぱーちくと、どこか私を元気付けるかのように囀っていた。