表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空気少女のトラブルダイアリー  作者: しろまる
第2話:「決闘だ」? 私音痴なんですけど。
21/36

(4)


「いいか? ここの英文読解で重要なのは……」


 教科書を見ながら声を張り上げる英語教師。

 その説明を聞きながら、必死に板書を写すクラスメートたち。

 普段、授業を荒らしている詩音は絶賛居眠りタイムのため、教室内で聞こえる声はほぼ教師のもの、あとは机や椅子を動かす際の(きし)む音、誰かが欠伸をする声だけだった。

 こういう時は、私も落ち着いて授業に参加できるというものだ。


 しかし、今日の私は違っていた。


「ハイここだ、仮定法の形になってることを見逃すな。これの意味を取り違えると、大分内容が違ってくるからな」


 重要事項だからと、チョークで黒板をカンカンと叩きながら説明する教師。

 私はその声を上の空で聞き流し、ぼんやりと窓の外を眺めていた。

 窓側の一番後ろ。教師から見て最も目立たない、

つまりこうしてボーッとしていても高確率で気づかれない、絶好の特等席。

 暑さや陽射しがキツい日も、カーテンを閉めれば無事解決。幸い今の時間は、暑さも陽射しもほどほどなので、こうして外の世界を眺めていられるというわけだ。

 そう呑気に、物思いにふけっている暇もなく、


 ……マズいな、このままだと本当に取り返しがつかなくなるかも知れない。


 授業の傍ら、私はあれこれと考え事に勤しんでいた。


 そもそもの話、私はごく普通の女子高生。

 ごく普通の、目立たない"空気"のような、平和な生活を送ることを理想としていたはず。

 一年の頃は問題なし。二年に進級した当初も問題なかった。更につい最近までも順調にそんな日々を送れていた。


 ……私の平穏は、いつから崩れ始めたんだ……?


 答えはとうに出ていた。


 詩音にいきなり連れられて、ショッピングセンターで犯人逮捕の協力をしてしまった時からだ。


 呑気に眠っているアイツのせいで、私の評価は一変。

 今日は何故か『麦わら帽子に赤い上着、短パンにサンダル』という、どこぞの海賊王を彷彿とさせる格好をしている。


 評価が一変したと言ったが、正確には『無』から『プラマイ0』に変わったというだけ。

 プラスの部分というのは、先程も言った通り、スリの犯人を捕まえたこと。

 おかげで一気に人気者扱いされてしまい、いい迷惑だ。現在は大分落ち着いてきているが。

 ちなみにマイナスの部分は、私と詩音が仲良しだと思われていること。

 無論、これはまったくの誤解なのだが、それらの要素が色々と噛み合い、今に落ち着いている。


 あの時から、私は確実に厄介ごとに巻き込まれてしまっている。


 そして今日、期末テスト結果発表の時。

 ハイスペックな下衆男子、永井 綜次郎に目をつけられる。これも決して例外ではない。

 目をつけられるというか、実際は「話がある」という雰囲気を出され、その話とやらを寸止めされたというだけなのだが。


 クラスが違う為、一日中粘着されることは無い。

 しかし、彼も一度関わられると面倒は避けられない。


 詩音と永井、どちらにしてもここ最近(やぶ)から棒に、私に絡んできた。

 どこの風の吹きまわしか知らないが、

 

 ともかく、これ以上私の平和な高校ライフを邪魔されないためには、まず彼らから遠ざからなければならない。

 あの二人以外にも、絡んでこないだけで鬱陶しいと思う奴は何人かいる。

 ソイツらが私に関わってこないことを祈りながら、私から彼らを隔離するしかない。


 そのために、今の私には何が出来るのかーーー




「コラ水園! 何をボーッとしとるんだ!! 」


「ーーーっ⁉︎ 」


 教師のその一言で、私はふっと我に帰る。

 慌てて周囲を見回すと、教師が私の机の横に腕組みしながら立っており、クラスメートがクスクス笑いながら、私一点に注目する。

 冬架は、苦笑いとも戸惑いともいえない、何とも微妙な表情でこちらを見ていた。詩音は相変わらず居眠り中だが。

 その光景を見て初めて、今が授業中だということを思い出す。


 …………やらかした。


「今は大事なところだと言っただろ、テスト明けで気が弛んでるんじゃないのかね? 」


「……す、すみません」


 消え入りそうな声で、力無くそう答えるしかできなかった。

 冷ややかな嘲笑は、しばらく止まることを知らずに連鎖した。

 まさに火が出そうなほど顔を真っ赤にして、頭を真っ白にしながら、私は昼休み突入のチャイムが鳴るのを呆然と聞いていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ