表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空気少女のトラブルダイアリー  作者: しろまる
第1話:おつかいは手短に済ませましょう
11/36

(9)



 何とか騒ぎを収めた後、私たちはフードコートから少し離れたソファーに腰掛けて休んでいた。

 息が荒く、顔が熱くなってるのが分かる。もう軽くグロッキー状態になりそうなんですが。

 しばらくここで休ませて。それかもう早いとこ帰らせて。


「マナちん……だいじょぶ? お疲れ? 」


 汗だくでうなだれる私を気遣い、詩音が心配そうに私に寄り添う。

 手ぶらに小さなリュック……こりゃまだ買い物済ませてないな。もう普通のつぼでいいんじゃないか。

 私はゆっくりと顔を上げ、


「あはは…大丈夫大丈夫…」


 と、詩音の方を向いて作り笑顔を作る。

 すかさず、私の隣で座っていたリョウが、詩音を指差し物申す。


「お前…よく恥ずかしげもなく人前で騒ぎ起こせるよな! 頭どうなってんだ! 」


 言ってることには同意するが、敬語を使え。腐っても一応先輩だぞ。


「詩音とか言ったな! 何だよソフトクリームでジャグリングって! 食べ物を粗末にしてんじゃねー! 」


 怒るポイント違うし、あれサンプルだから。

 しかしリョウが色々言ってくれることで、私のツッコミが楽になった。ありがたい。


「何であんな事できんだよ!? どうやってやった!? 教えてくれ!! 」


 さらっと弟子入りしようとすんな。

 リョウの問いに対して、詩音は、


「んーーーーー、何となく! 」


 元気いっぱいにそう答えた。うん、詩音らしい見事な答えになってない答えだ。


「面白かったら何でもしていいわけじゃねーだろ! 」


 リョウも、指をビシッと指し直して言った。何だかんだこの2人仲良くなってる気がしない?


「リョウちんも一緒にやろーよー! 」


「やらねーよ! リョウちんって呼ぶな!! 」


 言い争いがヒートアップ。

 やっぱり仲良くなってる。うちの弟に悪影響を及ぼさないか、心から心配になる。

 まぁ面白そうだし、休憩しつつしばらく見学してようかな。


 私は小説でも読もうと、スクバをいじり始める。

 筆箱に教科書、ノート、小説本、クリアファイル、弁当箱……慣れた感触が伝わる中、私は"あるもの"だけが無いことに気づき、違和感を覚えた。


「……財布が……ない…! 」


「「えっ? 」」


 私の呟きに、何故か取っ組み合いにまで発展していた2人が、動きを止めて反応する。


 …そう、財布がどこにも無いのだ。


 慌てて周囲を見渡すが、無い。立ち上がり、フードコートの方を探してみても、無い。

 まずいな、どこかに落としてきたかもしれない…。


「財布が無いって……あれっ!? オレも無い!! 」


 リョウも持っているビニール袋を探すが、入っていなかったらしい。ってか何てとこに入れてたんだ。お前は全体的にもっとお金を大切にしろ。

 ……まぁ、今の私に説得力は皆無だろうけど。


「あれ! 詩音もない! これじゃ魔法のつぼが買えない!! 」


 詩音もリュックを探って言う。やっぱり買ってなかったのか。


「おかしいぞ…3人一気に財布がなくなるなんて…! 」


 リョウの言う通り、確かにおかしい。

 管理能力の低いバカ2人はともかく、私は確かに、スクバのチャックを閉めていた。穴が空いてでもない限り、財布が無くなるわけがない。となると……


「まさか……盗まれた!? 」


 リョウがしてやられた、というふうに狼狽する。決めつけるのは早いが、まぁそう考えるのが自然だろう。



「あれ…俺の財布がねーぞ!? 」


「…あ! 私のも無い!! これじゃ買い物が出来ないわ! 」


「まさか盗まれた!? クソッ……誰だ!! 犯人出てこい!! 」



 他の買い物客が口々にザワつき、悲鳴や怒声をあげる。

 どうやら私たち以外にも、スリの被害者がいるらしい。

 …というより、この辺り全員が被害に遭っている、そんな感じだ。



 ……神様、どれだけ私を苦労に陥れれば気が済むのですか……?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ