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空気少女のトラブルダイアリー  作者: しろまる
第1話:おつかいは手短に済ませましょう
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(8)



 ーーー探索開始から20分。

 一階にはどこにもおらず、2階の『星河書店』『洋服Blood』『携帯修理 サワキ』と順に探したが、全てハズレ。現在は、2階のフードコートに向かっている。


「姉ちゃん…オレゲーセン行ってていい? 」


 後ろについてくるリョウが、スマホをいじりながら不平を言う。いい加減ゲームから離れなさい。


「姉ちゃんが無理やり連れてきたんじゃんか」


 それに関しては図星なので、何も言い返さない。


「黒のキャップに、白のロゴTシャツにジャージ、黄色のリュック、オレンジ色ショートの癖っ毛…」


 リョウは私から聞いた、詩音の見た目を確認するように呟く。


「こんな見た目の人、この買い物客の中にいくらでもいると思うんだけどなぁ…」


「それプラス、小学生レベルの言動をしてる奴が、私の探し人ね」


 すかさず追加する。って言うか、恐らく決め手はそこだろう。自動ドアで興奮して騒ぐなんて、あいつぐらいだろうし。

 リョウは首を傾げながら、再びスマホに向き直る。


 ……ちょっと人が増えてきたかな?

 ふと思った私は、スクバから自分のスマホを取り出し、時刻を確認した。

 時刻は午後5時57分。少し人探しをしてるだけで、こんなにも時間は過ぎ去っていくのか。

 これはますます早く見つけないと、最悪帰れないなんて事もあり得る。

 私たちは、少し歩行ペースを上げた。



 そうこうしてるうちに、フードコート前に到着した。

 ラーメン屋に鉄板料理、ハンバーガー店、アイスクリーム屋と、これまた全国の有名チェーン店が並んでおり、至る店で行列が出来ている。


「あっ、フードコート着いたよ」


「着いたね」


 2人の声には、精神的疲労と(だる)みが含まれていた。

 フードコートに足を踏み入れた、その時ーーー




 ーーーーダダダダダダダダッ!べちゃっ!




 ーーーー見覚えのある少女が、こちらに向かって猛ダッシュ…そして転倒。両手には何か持っている。何かもう嫌な予感しかしない。


「イェーーーイ!! ……あっ、マナちん! 詩音ね、ちょうど面白いこと見つけたんだ! 見てて見てて! 」


 案の定、黒キャップを外し、オレンジの天パが大爆発していた、詩音である。

 起き上がった詩音は、嬉々として言い放つ。

 とにかく、無事に見つかってよかっ…じゃなくて! 手に持ってるのは……ソフトクリーム?


 詩音が両手に握るそれは、バニラと抹茶のソフトクリームだった。

 その姿を、『サーティーンアイス』の制服を着た女性店員が、泣きそうな表情で追いかけている。高校生のバイトだろうか。


「お客様困ります! そちらは商品ではございません!お、お客様!! 」


 …………あっ、なるほど。


 よーく見ると、詩音が持ってるのは本物ではなく、ソフトクリームの食品サンプルだ。簡単に言うと、寄り道に『サーティーンアイス』に寄って、飾ってあるサンプルを奪って逃げたってわけか。


 ……商品盗らなかっただけマシだと思うが、普通に営業妨害で訴えられるレベルだよねコレ。


 その本人はと言うと、そのままジャグリングとかやりたい放題やっちゃってるし、店員さんは遂にしゃがみ込んで泣いちゃったし、フードコートの人々がほぼ全員ザワつき出したし…。


 なんていうか…うん、本当に申し訳ありませんでした。


「……姉ちゃん、姉ちゃんが探してた人って…この人? 」


 ドン引きするリョウを余所に、私は店員さん、賑わうギャラリーに向かって、頭がもげるんじゃないかって程に、謝り倒していた。

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