僕の話 29
翌週の月曜日、僕は眠い目を擦こすりながら学校に登校した。この土日、僕は自分の体に起きた異変をポジティブに捉えるため、姉に奇異な目を向けられながらもレンタルショップで特別な力を手に入れた若者を主人公にしたドラマや映画を見続けた。おかげで自分に対する異常な不安はいくらか和らいだ。反対に自分には何か使命があるのではないかと考え始めもした。
「発馬が学校でうとうとするなんて珍しいですね」
休み時間、雄索が指摘してくる。彼の観察眼には驚くべきものがある。僕の感情や体の異常をすぐに察知するのは感服する以上にある種の気持ち悪さすら感じる。もしかしたら、僕のことを必要以上に監視しているのではないかと勘繰りたくなるのも仕方ないと言えよう。
「昨日、一昨日とずっとDVDを見続けていたんだ」
それから僕は借りてきたドラマや映画のタイトルを並べた。
「いいですね。俺もその辺りの作品好きですよ」
驚くべきことに僕の挙げたタイトル全てを雄索は知っていた。意外にヒーロー願望が強いのだろうか。
「でも、発馬はスプラッタとかゾンビとか血がどばっと出るようなものが好きなのかと勝手に思ってました」
確かに今まで僕が見る作品にはそう言った傾向があった。
「否定はしない」
「内面の残虐性が好みにも出てるんですよ」
雄索がそんなことを言う。
「それにしてもどんな心境の変化ですか。ヒーロー願望にでも目覚めましたか」
いくら雄索でも体が不死身になったから、似たような境遇の人を参考にしようと見始めたとは思うまい。彼の観察眼がいくら鋭くても、そこまで読み取ることが出来たらエスパーである。
「丁度ヒーローフェアをやっていたから借りただけだよ」
僕は平然と嘘をついた。
「色々と見て思ったんだけど、例えば雄索ならある日突然特別な力を手に入れたらどうする」
自分の境遇と重ね合わせながら僕は問いかける。うーん、雄索はしばらく悩んでから口を開いた。
「特別な力って簡単に言っても色々ありますよね。超人的な身体能力とか手から蜘蛛の糸を出せるとか、超高速で走れるとか。あと、科学力を駆使した機械の鎧を手に入れるとかも特別な力って言えるんですかね。とにかく能力によってどうするかは変わってきますよね」
それでも、たった一つだけ共通して言えることがありますよ、雄索は指を一本立ててにやりを笑う。
「大いなる力には大いなる責任が問われる」雄索自慢げに言った。
「海尊の言葉か」僕が言う。
「映画の引用ですよ。発馬、本当に見たんですか」
これほどの名言は中々ないでしょうに、と雄索は肩を落とした。




