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海尊曰く  作者: 高坂喬一郎
第1部
24/32

私の話 25

 その日の放課後、私はいつものように部活動に勤しんだ。体育館でバスケットボールをついている時は他の色々なことを忘れることができた。それにボールがリングに当たらず、シュパッとネットを揺らす音には心地よいものがあった。


 練習量は少し物足りなかったけれど、それを顔に出すことはない。周りの同級生と同じように苦しい顔をするのはお手の物だ。出る杭になって叩かれるより、周囲に合わせた方が生きやすいのは私が人生で得た教訓の一つだ。


 日も落ち、すっかり暗くなった帰り道、私は同じ部活に所属する小松沙仲と並んで自転車を走らせる。彼女は高校に入学してから最も仲良くしている友達だった。明るく活発で、誰にでも笑顔で接する彼女は一ヶ月も経たないうちに部の一年生の中心人物となった。


 今まで色々なものに所属してきたけれど、大抵暗黙のうちにグループ分けが起こり、だんだんと水面下の派閥争いに発展していく。人間のさがと仕方ないと思っていたけれど、今の部活は違った。先輩たちの間でなんとなく境目があるのに対して今の一年生は違う。


 沙仲の生来の性格なのか一人になる人を作らないように自然と動いている彼女は私には聖人君子に見えた。まだほんの短い期間しか一緒にいないけれど私は彼女のことを好きになっていた。


「実は昨日発馬君と帰り道が一緒になったんだ」


 私は話題を振った。彼女の反応を伺う。


「何か変なことされなかった」


 彼女が私に言う。至極普通な反応だ。


「ううん。凄く優しかったよ」


「あんまり信用しちゃ駄目だよ。あいつむっつりだから」


 彼女に合わせるように私も笑う。


「その人の価値はその友人を見れば分かると言うし、沙仲の幼馴染だから大丈夫でしょ」


 これは本心から出た言葉だった。


「小百合は私のことを持ち上げすぎよ」


 照れながらそう言う彼女はとても愛らしい。人の庇護欲を掻き立てるのは生まれ持った才能だろうか。


「でも、悪いことしたわ」


 それから私は中学生の頃の恋愛事情について聞いた途端にドブに自転車で突っ込んだことを話した。彼女は話の途中から笑いを抑えきれなくなったのかクスクスと声を漏らし、自転車でドブに突っ込んだことを話した所でついに大きな声で笑った。


 一頻り笑って、「ごめんね、迷惑かけたでしょ」と彼女は言った。


 この件について何も関係ないにも関わらず、彼女は私に謝った。彼も彼女が私に迷惑をかけていないか心配をしていたことを思い出す。お互いに相手のしたことの責任の一端が自分にあると思っているのだろうか。普通の幼馴染よりも強い絆を感じた。


 もし私の考えが当たっているならば、彼女には悲しい思いをさせるだろう。自分のやろうとしていることを考えると心が痛くなった。

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