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海尊曰く  作者: 高坂喬一郎
第1部
23/32

私の話 24

 四時間目の授業中、私は体調不良を訴えて教室を出た。隣の席に座る友達は保健室まで付いて行こうかと尋ねてくれたがそれをやんわりと断る。今から行うことは誰にも見られたくなかった。


 隣の教室は体育の授業中で、教室内は無人だった。机の上には男子生徒の制服が散乱している。男子は教室で、女子は更衣室で着替えるのがこの高校の慣習だ。


 私は静かにドアを開けてその教室に侵入した。教卓にしまわれた座席表から目的の生徒の席を見つけ出す。もう一度時計を確認する。授業時間はまだ半分も経過していない。廊下の様子を気にしながら目的の席の前に立つ。


 机の上に置かれた制服を掴むと目的のモノを探した。しかし、洗い立てなのか制服にはチリ一つ付着していない。ちっ、と思わず舌打ちをしそうになって、声を抑えた。


 次に私は彼の鞄に目を付けた。望み薄だけれど一応中身を探ってみる。


 筆箱や教科書、ノートなど普通の勉強道具に混じる不自然な紙袋を見つけた。それをゆっくりと鞄から取り出す。教科書にすれて袋がガサガサと大きな音を立て、私はまた周囲を見渡し、誰にもバレていないことを再確認した。


 紙袋から中身を取り出し、隣の机に広げる。それは勉学の対極に位置していると言ってもいいものであり、私自身触ることを嫌悪するほどのものだ。


 一言で言えばエロ本だった。


 神聖な学び舎に何を持ち込んでいるんだと呆れる一方でこれはチャンスかもしれないとも考えた。もしかしたら探し物が挟まっている可能性がある。


 意を決し、私は本を開いて一ページ一ページ丁寧にチェックする。内容は出来るだけ見ないように意識し、ペラペラとページを捲り続ける。今の私は傍から見たらどう見えるのだろうか。最悪なビジョンが浮かんだけれどすぐに打ち消した。これは必要なことなのだ。自分に言い聞かせる。


 半分ほど捲った所でようやく目的のモノを見つけた。


 ページの間に挟まっていた一本の縮れた毛をティッシュに包んで抜き取り、ポケットに入れてあったジップロックに収めた。


 その時、廊下を誰かが歩く音がした。私は咄嗟に本を掴んで机の陰に隠れた。コツンコツンと歩く音は教室の前をゆっくりと通り過ぎていく。息を止めて、音が過ぎ去るのをじっと待った。音が遠のき、ようやく安堵の息をついた。おそらく先生が各教室の見回りをしていただけだろう。


 私はすぐに本を紙袋に包んで元あった場所に戻した。それから制服を出来るだけ元の通りに直し、教室を後にした。トイレに寄った後、何事もなかったように授業に戻る。


 友達に心配されたけれど、男の子の陰毛を回収しに行ってましたと正直に言うわけにもいかず、少し体調悪そうな演技で大丈夫と言った。

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