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海尊曰く  作者: 高坂喬一郎
第1部
21/32

僕の話 22

 急いで帰宅して姉が家にいないことを確認する。姉ちゃんと呼びかけても誰の反応もない。自室に籠った僕のその後について、語ることは控えよう。


 ヒントを示すとしたら、雄索から借りた桃色本は既に用済みとなり明日にでも返すつもりだ。さらに用が済んだ時、僕の頭はいつもより冴えていた。


 そのなぜか冴えた頭で改めて現在抱えている問題について考えて見る。


 僕の体は今、異常なほど早い回復力を持っている。まず、この回復力がどの程度のものなのか、そしてどのようなリスクがあるのか知りたい気持ちがある。例えば、肌が切れる程度は数秒で完治したが、骨折の場合はどのくらい回復に時間が掛かるのか。頭と体を切り放したら、首から体が生えてくるのか、体から頭が生えてくるのか。そのまま死ぬのか。人間の細胞分裂の回数は決まっていると聞いたことがある。この異常な回復力と引き換えに寿命を縮めているのではないかと不安になる。


 この能力についての疑問は尽きない。それこそ人体実験をして実際に試してみるしか、確かめる方法はないだろう。


 今度は原因について考えてみる。これは根拠の無い憶測にすぎながしかし、考えることには意味があるはずだ。海尊曰く、人間の武器はいつだって想像力だ。


 そもそもこんな体になったのはいつからだろう。異常な回復能力に気付いたのは美薗さんと帰ったあの日が初めてだ。それ以前に怪我をした時はどうだっただろうか。中学三年夏、部活の練習中にバスケットボールを追って体育館の壁に思い切りぶつかった記憶が浮かぶ。しかし、あの時の傷は一週間は治らず、その間僕は顔に絆創膏ばんそうこうを貼ったまま過ごすことになった。


 つまり、僕の体がおかしくなったのは中学三年の夏から美薗さんと帰る日までの期間ということになる。


 そしてその間に思い当たる節は一つしかなかった。あの海辺で浮浪者と食べた肉である。悲しいことに僕の日頃のルーティンは中学生の頃からほとんど変わっていない。それゆえに異常な出来事が浮き彫りとなる。


 しかし、あの肉が原因であるとしても疑問は残る。お腹を壊す程度や最悪死ぬというならば分かるが、たかだが肉を食べた程度で人体にこれほど影響がでることがあるのだろうか。 


 ここから僕の思考は現実的なものから妄想的に切り替わる。


 おそらくあの肉の中に危険な薬が含まれていて、それが僕の体をこんな風にしたに違いない。そうなるとあの浮浪者風の男はある組織から薬を持ち出した人物だろうか。安いアパートでの貧乏生活に我慢できなくなり、薬を服用しようとした時に丁度僕が出くわしたということだろう。


 そこまで考えて僕は噴き出してしまった。非現実的すぎる。アメコミのヒーローにでもなるつもりだろうか。


 しかし、あの肉が何らかの鍵であることは間違っていないだろう。とにかく、もう一度あの浮浪者に会う必要がある。そうして僕は明日また海岸に行くことを決めた。

次: 2017/10/11

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