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始動



「さてと、じゃあまず自己紹介からだな。俺の事は知ってるだろうが、一応な。アヴァニール・ヴィクティオル・ヴァルフレイだ」

「私は魔攻部隊総司令官、第二側近のミリア・イドラス・アルスタイルです」




ミリアはまたお会いできて光栄ですと言って、深々と頭を下げた。




「一つ聞くが、ミリアはダークエルフか?」

「はい、私は淵源えんげんのダークエルフでございます。そこらの雑種ではありませんのでご心配なく♪」




エンゲン?……何かの植物か??もしかして、種族の違いとかか?




【アヴァニール様、差し出がましいようですが、淵源えんげんとは元来、大元、原点、根源などの意味でございます】




おぉ、なるほどな………って、何でお前の声が聞こえるんだ!?




俺が納得しかけた時、頭に直接聞こえてくるサミエルの声に疑問を持ち、左に佇むサミエルを見る。すると、またサミエルの声が頭の中で答えた。




【これは魔法でアヴァニール様とわたくしの脳伝達をリンクさせている状態なのです。一般的に言う、テレパス……の改良版と思っていただければと思います】




サミエルはそう答えに俺はふーんと思いながら、すぐに俺とのリンクを切るように命じた。サミエルはその事に少し残念そうな表情を見せた。




「さて、自己紹介も終わったな。ミリア、突然で悪いがお前の部屋で話がしたい。いいか?」

「はい!!!どうぞ!!」




何やら嬉しそうなミリアの後ろを、俺とサミエルが続いた。




ミリアの個人研究室は思った以上に広い作りになっていた。中心には大きな丸テーブルが置かれ、女の子が好きそうな可愛らしい人形や、お菓子の入ったバスケットが置いてあった。そこだけ見れば何ともファンシーな部屋なのだが、壁一面に難しそうな本や辞書と思わしきものが隙間なく本棚に入れてあった。そしてその本棚に入りきらなった本たちが、棚の前に幾つも積み重なっていた。そしてその部屋の一角には、カーテンで区切られた謎の空間があった。




「ミリア、その仕切られた部屋はなんだ?」

「あ、見られますか?」




ミリアは俺の返事を聞く前に、カーテンを開いた。そこには、色々なものが置いてあった。研究資料、材料、器具に、何か赤黒い液体の入ったビーカーや動物をいれるゲージが幾つか見えた。だがゲージには何も入っていなかった。




「此処は私個人が魔法の精製、研究をしている場所です。此処は危険物も置いてあるので、不用意に近づいてはダメですよ?」




そう言って人差し指を俺に向けて言うミリアに、サミエルがどこぞの低級と一緒にするなと小言を口にした。ミリアはサミエルを見て今にも何かしそうな笑みで微笑んだ。俺はその状況に冷や汗をかくが、ミリアはいつの間にか丸テーブルの前まで移動していて、どこからか持ってきた椅子を机の前に置いた。




「どうぞアヴァニール様!!すみません、散らかっていて」

「あぁ、これ位は気にならないから大丈夫だ」




俺がそう言いながら椅子に座ると、突然椅子が形を変え始めた。質素だった木の椅子が見る見る変化し、最終的には立派な玉座へと変化したことに、驚きを隠せなかった。




「凄いな!!これはミリアが作ったのか?」

「はい、私が作りました。これは座った者の魔力量などによってよりその者に相応しい椅子に変化するという魔法がかかっています」

「……凄いんだなミリアは」




俺が感心していると、少し照れながらミリアがそんな事は……と謙遜していると、俺の横にゆらりと揺らめくサミエルの姿があった。




「おい、小娘……私の分の椅子はどうした?」

「……何かと思ったら、そんな事。いーい?この部屋に椅子は二つしかないの。だからあんたのは無いの。分かった?」




ミリアの座っている分と俺の座っている分の二つを合わせれば、サミエルの分の椅子は無いことになる。俺はそっとサミエルを見るが俯いていて表情が全く見えない。目の前に居るミリアはいい気味だという感じの笑みでサミエルを見ていた。そしてサミエルは何やらどす黒いオーラを身体から滲ませ始めた。




「小娘が、アヴァニール様に少し優しくして貰えたからといって……調子に乗るなよ??」

「おいサミエル、こんな事ぐらいでいちいちキレるな面倒くさい。お前は立ってるか、俺の肩を揉むかしてろ」




呆れながらサミエルに指示を出すと、いつの間にかサミエルが俺の後ろに立ち、ミリアに命拾いしたな小娘。といいながら肩を揉んでいた。




「……さて、静かになったことだし。ミリア、早速で悪いがお前に伝えておかなきゃならない事がある。俺は今記憶がない。ある程度はサミエルから聞いてはいるんだが、それでもきっとほんの一部だろう。で、ミリアの魔法の知識、この世界の事。色々詳しく聞きたい。いいか?」

「分かりました。……そうですね、まずはこの世界についてお話いたします。えっと……地図を出してと……」




ミリアが何か唱えると、突然テーブルの上に1枚の大きな紙が現れた。ミリアがそれを広げると、地図と思わしきものが描かれていた。




「まず、大陸は大きく分けて二か所です。地図を見ても分かるように、左側と右側とで分かれています。そしてこの左側上部はアヴァニール様の領土となっています。以前は此処にアヴァニール様の城があったのですが、100年前の大戦により、現在は荒野となっております」




指さされた部分には、黒い丸のようなものの上にバツ印が描かれていた。




じゃあ俺が転生した場所は元魔王城……って事か




「その下にあるこの森、此処が現在の私達の拠点のある場所です。その下は人間達の王国となっております」




丁寧に説明するミリアは、次々と指をスライドさせていく。俺がその指を目で追いながら地図を見ていると、所々にある黒い丸のようなものを指さした。




「これはなんだ?」

「それらは全て魔王様の拠点を示しています。そこは、第四席の魔王、ジーク・ロアグランド様が拠点としている城ですね」

「ふーん、魔王の城ねぇ……って、これ全部か」




ミリアは俺の問いに笑顔ではい!と答えてくれた。魔王達が一か所にとどまるとは思っていなかったが、まさかちゃんと十か所それぞれに城を構えているとは思ってもみなかった。




……人間とかにとっちゃ最悪な環境じゃねーの??……俺、魔王でよかった




「そして右側の大陸。此方は基本的に亜人種の領土ですね。主にオーク、ウェアウルフ、ケンタウロス、ウェアタイガー、リザードマンなどが主流の国や村、集落などが多いです」

「なるほど、大体分かった。説明有難うな、ミリア」




ミリアに微笑んで見せると、ミリアは何故か顔を紅くして勿体なきお言葉……と言って俯いてしまった。




しかしまぁ……これからどうするか……




大体の話や経緯は聞いたので、一番上に立つものとして周りに指示を一応出さなくてはならない、というのが俺の今の悩みだった。今聞いた事と、サミエルに聞いていた話を混ぜ合わせながら考える。そして、一つ思いつくものがあった。




「そういえばサミエル。お前確か今は人員不足とか言ってなかったか?」

「はい。誠に申し上げにくいのですが、現在どの役割に関しましても人手が足りていません。アヴァニール様の城を建築しようにも材料も人手もなく……」




申し訳なさそうに言うサミエルの言葉に、俺は地図のある一か所を指さし笑った。




「なら、ここらに行ってその人手不足を解消しようか」



とりあえず、これで序章は終わります。次回から、話が動いていく章に入ります!

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