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同一か相違か



同時刻……




「うおわ!!!気持ち悪い!!こっちくんな!!」




俺はそう言いながらも、寄って来るキメラ達を全て消しとばしていた。


正確に言うと、この間サミエルにちょっとだけ教えてもらった『全灰無帰アッシュ』という魔法を使ってキメラ達を灰にしているのだ。


ついでにその時教えて貰ったのだが、どうやら脳が術の能力、名称を忘れていても身体はその術の制御方法を覚えているらしい。


なので、俺が今まで使っていた魔法は身体が分かっているし、魔法の方はミリアやサミエルに聞けば大半は使いこなせるようになる。との事だった。




と、そんな事よりも!!キモい!!キモすぎる!!!はっこれ木の上に避難したらいいんじゃ!!でもそんな格好悪い所見られでもしたら、俺の人生が終わる!!




そう思いながらそれぞれ闘う部下、サミエル、ミリア、ラオルを見る。


ミリア以外は、割と淡々と敵を殲滅していた。


ラオルは、かなりの速度でキメラ達とその飛び散る肉片をも跡形もなく切り裂いているせいか、ラオルの闘っているエリアは地面に紫色の液体が飛散しているだけで、非常にクリーンである。


それとは対照的に、サミエルは鞭で肉を削ぎ、骨を砕き、細かい肉片となるまで鞭を振るい続けている。はっきり言って地獄だ。


ミリアは何かを選別しているのか、指でキメラの数を数えながら次々と魔法をかけていた。魔法で何体かを氷漬けにすると、それにまた何か魔法をかけ小さくすると腰に下げていたポーチから小瓶を取り出した。


そして、小さくなった氷漬けのキメラを嬉しそうに一つ一つ小瓶の中に入れていた。




あんなの何に使う気なんだ?って!!気を取られてる場合じゃない!!もういっそこの辺一帯を灰に……




手をキメラ達に向けた時、突然何者かの咆哮が森に響いた。




「今度はなに、が……」



咆哮のした方へと顔を向けると、そこでは泣き喚く少年と、抱きかかえられた女の姿があった。女を抱きかかえた少年の手からは、赤い雫が落ちていく。




「………………」

「ゔぉオ……」



段々と近づいて来るキメラに見向きもせず、少年に目を向け続ける。そして、近くによって来ていたキメラの頭部分を掴むと、そのまま灰へと変える。


今の自分にあるのは、恐怖心ではなく痛みだった。




……何故、胸が、痛む?




少年の泣く姿に胸が痛む。別段あの二人に想い入れがあるわけではないのに。しかも今日あったばかり敵に、何故自分がこんなにも悲しんでいるのか分からない。




痛い、いたい、まるで……身体が、裂けるような……




鈍い痛みは段々と全身を包むように、そして頭に響くように痛みだす。




いたい、イタイ……




その瞬間、目の前が真っ暗になった。




突然の暗闇に驚き、何度か瞬きするが視界は暗闇に囚われたままだ。その暗闇の奥、か細い光が見えてくると、ソレは突然光景として浮かび上がる。


少し薄色の赤い髪、黒い服に身を包み口元を布で覆う人物と、それに抱えられる青白い肌の、自分自身。




……ラ、オル?




ラオルに抱えられた俺の首筋や腕、足からは赤い血が流れ出し、白いタイルを徐々に赤に染め上げていた。そんな俺の姿を見つめているラオルは、肩を震わせていた。




ラオル……おい、ラオル




ラオルに向かい声をかけるが、反応はない。


思いきって肩に手を掛けてみたが、ラオルの肩をすり抜けた。それは肩だけでなく、頭を触っても自分自身の身体に触れても変わらなかった。


自分は目の前で見ていると言うのに、その震える肩に触れることが出来ない事を知り無力感が襲う。何も言ってやれない、触れることの出来ないラオルを見つめていた。



その時ラオルに抱えられる俺の頬に、ポタリと雫が落ちた。



俺の肩を強く握り身体を抱き寄せ、ラオルは涙を流していた。




…………っ




その見ているだけでも痛々しい光景に思わず目を逸らした時だった。




『…………アヴァ、ニール、さま………』




透き通るような、か細い声で俺の名を呼ぶその声は、ラオルの声なのだろうか。そう思い目を向けると、ラオルの瞳からは無数に涙が零れ落ち、時折鼻を啜る様な音もしてくる。




『お目覚め下さい……我々を、……私を、置いて……行かないで、下さい…………アヴァニール様………』




その悲痛な言葉に、身を抉られる気持ちになる。


すると、突然頭痛と耳鳴りが自身の身体を襲った。その余りの痛みに耐えきれず、呻き声を上げながら血で汚れた床に倒れ込むようにして座る。



身体も心もどうしようもなく痛む。



だが、今まで見た記憶とは違うことが一つだけ分かる。今回のこの記憶は、自分自身のモノではない、ということだ。そして、また疑問も生まれる。



何故、自分の記憶ではないのに、こんなにも痛みが襲うのか。



どうしてと思いながら未だ涙を流すラオルに触れようとした時、伸ばしていた手を捕まれた。

俺の手を掴んだのは、間違いなく自分自身。ラオルに抱えられた自分だった。


突然のことに驚いて手を振り払おうとしたが、頭痛と身体を襲う謎の痛み、そして何より物凄い力で掴んでいる手を振り払う事は叶わなかった。


すると今度は引き寄せられ、瞳を開けた自分自身と目が合った。




【思い出せ】




口は動いているが、聞こえているのは脳内だ。それが頭痛に拍車をかけるように脳内に響き渡る。


何度も反芻する言葉を聞きながら、自分自身の手をようやく振り払うと、今度はまばゆい光に目を瞑る。





そして、目を開けると目の前は元の森の風景へと戻っていた。





僅か10メートルの距離には、キメラ達がうようよと此方に歩いて来ていた。




「はっ!!!はっ………………」




一瞬、夢だったのか?と考えるがそうは思えなかった。先程と同じように身体を襲う痛みに身を縮めると、草がザワザワと揺れた。


ゆっくりと顔をあげると、目の前には武器を構えるラオルの姿があった。




「……ラオル」

「…………」




無言のまま立つラオルは、此方を見ようとせず、ただ目の前にいる敵にだけ視線を注いでいた。身体を起こすとラオルは横目で俺を見ていた。


また心配をかけてしまったと思ったが、ラオルの目は心配しているというより、他になにか、もっと別の感情を持っている気がしてならない。




「……ラオル。大丈夫だ」

「…………」

「心配するな。俺はもう、誰も悲しませない」

「……」




俺の言葉に少し目を開けたラオルは、心なしか嬉しそうな顔をした。だが、顔の大半を占める布があるので雰囲気、そんな感じ。というだけだが。




「さて、俺もそろそろ休憩は終わりにしないとな」



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