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第二の側近



俺がテレポートを唱えようとした時、少しだけ離れた位置に居るサミエルが気になり声をかける。




「サミエル、お前そこで大丈夫か?そこは俺のテレポート範囲内なのか??」

「はい、アヴァニール様の魔法効果範囲内でございます」




そう言ってサミエルは俺に微笑んで見せる。どうやら俺との移動の時はこれが普通だった様で、サミエルは変わらず微笑んでいた。




「いや、何かそれだと俺が不安になるわ。……ほら、手貸してやるからこっちこい。あ、変な事したらぶっ飛ばすからな」




俺が片手を差し出すとサミエルは、はい!と元気よく返事をしたが、その顔は表情筋が緩み切りえらく酷い顔になっていた。




あー……助けても喜ぶし、助けなくても喜ぶし……扱い辛い……




もしサミエルに何か罰を与えなければならなくなった時はどうしたら良いのだろう……と思いながら俺はテレポートと声に出した。




♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦



「……」




テレポートが終わり、辺りを見渡すとそこには大きな通路や部屋がたくさんあった。外観と同じ白い内装に、上部は肉眼では分からないほどの高さだ。外から見た建物は四角い形をしていたが、内部は筒状になっていた。




何で外は四角なのに中は筒状なんだ!?まさか魔法!?それだったら凄いな……




周りを見ていると、何やら白い白衣を着た魔物達が忙しそうに動き回っているのが見える。部屋の中に入ってはまた出て行く者、何か話し合いをしている者、廊下を走っている者……そして何より、集落では見かけなかった様々な種の者が働いていた。




此処は色々な種類が居るな……結構厳つい顔のもいるけど。……此処の統括者が女の子なんて、信じられないな




「さて、研究所に着いたわけだが……おいサミエル、手を離せ」

「はっ!!これは失礼を!!!」




先程まで顔面が崩壊しかけていたサミエルに声をかけると、俺の手を放し何事も無かったかのような涼しい顔に戻った。




「取り合えず、ミリアの所まで連れてってくれ」

「畏まりました。それでは少しばかり部屋の説明もしながら向かいましょう」




そう言って歩き出したサミエルの後ろを距離をとりながらついて行く。サミエルは熱心に部屋の説明をしていたが、俺の頭の中には全くと言っていい程内容が入ってこなかった。




「……そして、最後になりますのが小娘……もとい、第二側近のミリア・イドラス・アルスタイルの個人研究室になります」




サミエルがその扉の横で此方ですと俺を誘導して見せる。一階の一番奥にあったその個人研究室には、扉のノブの所に『かんけいしゃいがい、たちいりきんし』と、平仮名の何とも可愛らしい札がかけられていた。




「このみすぼらしい札は何なんだ……全くあの小娘は……」

「俺は可愛くて良いと思うけどな」

「陛下、何とお優しい……」

「まぁそれは兎も角、今何かやってるのか?それだと邪魔しちゃ悪いよな」




俺が声をかけるか迷って顎に手を当てながら言うと、サミエルは何を仰いますか!!!と少し怒り気味に言った。




「陛下以外に優先されるべき物事などございません!!寧ろ小娘程度、陛下がご挨拶するようなものでは……」




サミエルが言葉を続けようとしたその時、どこからか女の子らしき声が聞こえてきた。




『だぁぁあれぇがぁ!!!小娘程度ですってぇぇえぇえ!!!!』




その声は段々と自分たちに近づいているようで、声が大きくなってくる。




「……ん?上か?」




そう言って俺が声のする方向、頭上を見上げると、そこには段々と落ちてくる女の子の姿がはっきりと目に入った。




「おぉ、ダイナミックだな」

「??アヴァニール様、どうかされまし……」




俺が感心して見上げていると、サミエルも見上げた。すると落下して来た女の子は丁度上を見上げたサミエルの顔面に思い切り蹴りをいれながら、そのままサミエルを下敷きにして着地した




「誰が小娘程度よ!!キモエル!!!」




女の子は下敷きになっているサミエルに、容赦なく踵で踏みつぶしながら言った。目の前で起こった惨劇に呆気にとられていると、女の子が此方を向いた。その子は俺を見ると、先程まで怒りに満ちていた顔を笑顔に変えて此方にかけてきた。




「アヴァニール様!!!お戻りになられたのですね!!!貴方様に再びお会いできました事、心より嬉しく思います!!」




先程とはまるで違う態度の女の子に、俺はあぁ……と短い返事を返した。目の前に居る女の子の外見はパッと見てエルフに相違ない。だが、褐色の肌色は普通のエルフにはないものなので、ダークエルフだと俺は確信した(サミエルに聞いた)。



服装は可愛らしい絵柄がプリントされたTシャツに、ミニスカート。だが、その太ももにはスパッツのようなものが見える。服だけで見ればかなり元気のよさそうな女の子に見えるだろうが、白衣を着ているためか少しクールに見えた。靴は少しヒール高めの靴を履いているが、そこにサミエルの血が付着しているのが何とも言えなかった。




「えっと……ミリア、であってるよな?」




ミリアは名を呼ばれたのが嬉しかったのか、何とも可愛らしい笑顔を見せた。その何とも可愛らしい笑顔に俺の心は和み、ついミリアの頭を撫でてしまった。ミリアは最初驚いた表情を見せたが、また嬉しそうに笑った。すると、いつの間にか復活していたサミエルが突然あぁあぁ!?と声を上げた。




「あ、ああ、あアヴァニール様にっ!!!!!な、撫でられっ!!!!!!!」

「悔しいかバーカ」




ミリアはそう言ってサミエルを見て鼻で笑った。サミエルはその一言と態度に、私だってまだそんな事をされた事がないのに!!!と声を荒げる。




「そんなだから褒めてもらえないんだよキモエル」

「貴方、いつになったらその妙な呼び方を止めるんです!?クソガキがぁ!!!」




お互いにこれ以上放っておいたら大変な事になると思った俺は、取り敢えず二人を宥める事を優先させた。




「二人とも落ち着いたか?」

「……大変お見苦しいところをお見せしました」

「あーいい、いい。そういうのは」




頭を深々と下げるサミエルに適当に返事をした後、その隣(と言っても結構離れた場所)に立つミリアに話しかけた。




「で、ミリアは上から降ってきた訳だが……」

「はい。先程上の階にてデータの収集をしておりました」




ミリアはそう言ってまた笑顔を見せた



♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦


ミリア・イドラス・アルスタイルは、八階にある魔法武装室にその分析結果データをまとめた紙をとりに行っていた。




「全く、ちゃんと私の研究室まで届ける様にって言ってるのに。おかげで面倒なこんな所に、態々来てあげたのよ?感謝してよね」

「は、はい。申し訳ありませんミリア様」

「……分かっているなら、次からはどうなるか、覚悟しておいてね」




ミリアは此方を見ている研究員全員に冷たい視線を送る。その背筋の寒くなる視線に、そこに居た者全員が恐怖した。ミリアはその表情を見たのち、突然花の咲いたような笑顔になった。




「じゃ、研究ちゃんとやっておいてね~」

「は、はい。ミリア様」




ミリアは部屋を出ると、手に持った研究データをパラパラと捲った後、ばさりと音を立てて閉じる。そして、魔法を唱え自分の研究室まで送った。




「ま、あいつらにしては働いた方かな?よしよし」




独り言を呟きながら、八階のある場所の柵の前に立つ。そしてその柵を軽々と乗り越えると、一気に落下する。ミリアはいつも時間短縮のため、階段を使わずに己の身体能力のみでこの研究所全ての階を行き来していた。



一度五階で止まり、またそこから落下する。登るときは自分の魔法を使って一気に目当ての階まで行くのが当たり前だ。そして落下している際は、部下達の会話を聞くのがミリアのもう一つの仕事、これはもう日課と言ってもいい。ミリアは魔法を唱え部屋の会話を聞き始めた。




「ミリア様、こえぇ……」

「あの御方はまだいい方よ。防衛部隊の方に就いてる奴から聞いたんだけど、サミエル様はヤバいらしい」

「あぁ、『酷吏こくりのサミエル』か。あの御方は自分の部下を何とも思っていないって、俺も聞いた」

「じゃあ、ミリア様は?」

「あの御方は『冷徹のミリア』とか、『冷然のミリア』とか呼ばれてるな」

「怖いな、あの方々を束ねた魔王陛下はもっと怖いのかなぁ……」




(聞こえてるとも知らずに……それにしても、アヴァニール様の事を知りもせずによくもまぁ……)




会話の魔法リンクを切ると、五階に降り立った。




(アヴァニール様の素晴らしさは、会わなきゃ分からない……会いたいな)




アヴァニールが居なくなってからもう100年も経ってしまったというのに、その姿、あの声、全てが目を閉じればそこにあった。その色あせない思い出に浸っていると、下の方からあいつの声が聞こえてきた。




「………あんな小娘程度…!!!……!!!」




聞きなれたその不快な声に、ミリアは一気に一階まで飛び降りる。




『だぁぁあれぇがぁ!!!小娘程度ですってぇぇえぇえ!!!!』




憎たらしくも整っているその顔面に、思い切り蹴りをいれながら着地したが、それでも気は収まらず顔面を強く踏みつけた。




「誰が小娘程度よ!!キモエル!!!」




そう下になっているサミエルに怒鳴った後、ミリアはそのすぐ傍にいた人物が目に入った。それは100年間待ち続けたあの人の姿だった。






「アヴァニール様!!!お戻りになられたのですね!!!貴方様に再びお会いできました事、心より嬉しく思います!!」






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