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再会



朝食を食べ終わり、マーラの店を出る前に念入りに術をかける。


術をかけるのはミリアだが、その魔力を提供するのは俺だ。三人分の術を掛け終わると、ミリアが終わりました!と元気よく言う。


先程の眠そうな顔は何処に行ったのやらと考えていると、ゴリランヌがじゃあ行きましょうかと声をかけてきた。マーラの店を出て、ゴリランヌとセバスチャンの背中を追いながら緩い坂道を上っていく。


街はまだ朝とあってか、人があまりいない。俺はその時、ふとこの街をまだ見れていなかった事に今、気が付いた。




……そう言えば、マーラの店まではマーラが繋いだ魔法で移動して来たし、店の外に出たら角が見えるから、まだちゃんと外を見た事はなかったな




そう思うと、好奇心に駆られ辺りをキョロキョロと見回してしまう。石造りの塀と優しい雰囲気の木の家、近くからは何か焼いているのか、香ばしい良い匂いが漂ってくる。


あちこちにある店屋の横には、小さな花壇があり、そこには様々な色の小さな花が咲き誇っていた。




「……いい街だな」




誰に言うでもなく声に出た言葉に返事を返したのは、前を行くゴリランヌだった。




「そうでしょう?この街は綺麗だし、皆優しい人ばかりだから、私みたいなのも働きやすいの。これも、この国の王様とお妃様、それに王子様のおかげね」




嬉しそうに話すゴリランヌに釣られ、俺も微笑すると、さぁもうすぐよ!!と後ろの全員に聞こえるような大きな声で話しかけた。




坂道の先、そこには一際大きな屋敷が建っていた。周りには他の民家もなく、広大な庭が屋敷周辺を囲んでいる。


屋敷まで真っ直ぐに作られている道は、低い木々がつけた花で美しく彩られている。何種類もの花で作られたゲートを潜り、その敷地内へと足を踏み入れると、そこには既に何人かの屈強な男達が揃っていた。


その中には昨日店に訪れた、ガインの姿もあった。




「おぉ、来たか。!!!ゴリランヌさんも、来てくださったんですか!!」

「ガインちゃんお久しぶり。私は加勢しに来たんじゃないわ。この子達の道案内で来ただけよ」




ゴリランヌがガインにそう告げると、ガインはあからさまに落胆した顔をした。その反応に俺たちだけでは不服らしいことが分かる。


それを少し腹立たしく思いつつ、ガインにサミエル達を紹介するべく業とらしく咳ばらいをする。その咳払いに顔を向けたガインに告げる。




「コッチは俺の連れで、……えーと、エルディとイリアだ」




本当の名を明かすわけにもいかないので、今適当に思いついた名をガインに紹介すると、ほぅ……と謎の声を上げた。


エルディことサミエルが、よろしくお願い致します。と挨拶をした後、イリアことミリアが続けてよろしくお願いします。と頭を下げた。




「ほうほう、中々礼儀正しい奴らじゃないか。……そう言えば、アヴィーだったか?お前の名は?」

「え?」

「え?とはなんだ。それはお前の愛称だろう。お前の本当の名は?それとも、聞かれたら不味い名なのか?」

「えーと……俺は……アヴィー・ヴィクトだ」

「なんだ、そのままの名だったのか」




ガインがすまん。といとこと謝ると、今まで静かに傍観していたゴリランヌが口を開いた。




「じゃあ私とセバスチャンは帰るわね。セバスチャン、行きましょ?」

「はいッス!!」




先に歩き出したゴリランヌの後を追うように走ったセバスチャンは、一度立ち止まると此方に向かって手を振った。


俺たち(サミエル以外)が手を振ると、セバスチャンはゴリランヌの後を追って走り出した。その背が消えるまで見送った後、直ぐに招集がかかった。


どうやら、この屋敷の主人が出てきたらしい。その主人の居る、場所へと移動すると、屋敷前へと続く階段に小柄で若干皺の入った男が立っており、その周りに屈強な体つきの男達や鎧を纏う衛兵のような姿を見た。


ガインが俺たちも行くぞ。と声をかけてから歩き出した。




「あの男、アヴァニール様になんという口の利き方を……」

「落ち着け。俺たちは今、一応人間なんだからな」




俺が声をかけると、サミエルから、はい。と小さな声が聞こえてくるが、その後にこれが終わり次第、即刻始末いたします。と物騒な言葉を残してから黙った。


その言葉にどう返せばいいのか分からずに、結局黙る事を選択した。俺は隣に控えるサミエルとミリアを見た後に、今度は魔法を使う。




『ラオル。聞こえるか?』

『はい、アヴァニール様』




ラオルは現在、屋敷近くにある森の中に身を隠している。ラオルには、俺についてもらわずに屋敷近辺の様子を伝える伝達役になってもらう事にした。


そうすることで、もし屋敷に近づく侵入者がいれば、連絡をいれてもらう算段だ。そして同じように、ロウとレウにもその伝達役をしてもらっている。レウは喋れないので、ロウと一緒に行動させることにした。




『何か変な動きがあったら知らせてくれ』

『畏まりました』




ラオルの声が聞こえなくなると、丁度この屋敷の主、ディーレ伯爵が話し始めた。




「今日、私含め娘のカナレアが暗殺者に狙われている。皆、暗殺者の進行を何としてでも止めてくれ。わしは兎も角、娘だけは何としてでも守るのだ」

『おぉぉおおおおおおぉ!!!!!』




異様な盛り上がりを見せる衛兵や護衛達の声が頭に鳴り響く。何故こんなに盛り上がっているのかと思っていたら、隣で話す衛兵たちの話声が聞こえてきた。




「いやぁ、本当。カナレア様を守り切れば、もしかしたらカナレア様と結婚できるかもしれないなんて、美味しい話だよなぁ」

「本当にな。カナレア様と言えばこの国一の美女だろう?そんな女性と結婚できるなんて、夢のようだな」




おいおい、まだ結婚できるとは決まってないぞ。と話し合いながらじゃれる衛兵たちに、俺は周囲に聞こえない程度の溜息をついた。


全く持って馬鹿らしい。


そんな事ならばいっそ帰ってしまおうかと思った時、ガインが何か紙を持ってやってきた。




「じゃあお前ら!!警護する場所を割り当てるぞ!!」




ガインの指示に従い周辺に集まると、その中に一人、見知った顔があった。




「あ!あの時の!」




俺が声を上げると、周りの男たちも顔を向けるがその中の一人である人物も、此方を向くと驚いたような顔を見せた。


やはり、いつかの街角でぶつかった人物だった。


そして此方に向かって歩いてくると開口一番に何故此処に君が?と疑問を口にする。




「あぁ、ちょっとした護衛の依頼が来たからそれでな」

「そうか……あぁ、名前も名乗らず申し訳ない。私の名前はアリシア・ディアック・リリア・ヴァアトフィラナ・リュトゥアスという。まぁ名前で分かるかも知れないが、一応この国の王子だ。よろしく」




名を呼ぶ時はアリシアと呼んでくれ。と言って、アリシアは俺に手を差し出した。


俺は一瞬、何故手を差し出されているのか分からなかったが、その時にサミエルから精神感応テレパシーで説明が入る。




(それは人間同士でする、握手というもので、人間同士では挨拶と同時にする事で、相手とより親密な関係になろうという謎の行事です)

(成る程……)

「俺はアヴィー・ヴィクトだ。コッチの二人は俺の連れで、エルディとイリアだ。よろしく」



俺は数秒のタイムラグを経て、男にしては小さい手の、アリシアの手を握った。


アリシアは先程まで焦るような表情をしていたが、俺が手を握り返したことによって不安を払拭できたのか、嬉しそうに握っている手を上下させた。





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