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護衛の依頼


「よし、一通り掃除終了っと」




額の汗を拭いながら自分で磨いた床や武器の入ったショーケースを見て、達成感に浸る。その達成感を一頻り堪能した後、次にすることはないかと周りを見渡していると、丁度よくマーラがやってきた。




「おぉ、マーラ。今丁度仕事が……」

「アヴァニールちゃん、ちょっと来て♡」




いつも通りに微笑んだマーラだったが、珍しく俺の腕を引っ張って店を歩いていく。




「うぉ!!いや、歩ける!!歩けるから!!転ぶ!!!」




あら、ごめんなさい。とマーラが言い急に手を放す。よろけた俺は、目の前にあった机に激突したが、机の向かい側に座っていた男の客に机を抑えられ止まる。鎧に身を包み、きっちりと整えられた短い髪をしている男の顔付きは勇ましい。手甲と前腕当てを外してある腕は、かなり引き締まっている。




「あ、危なかった……」

「マーラさん、この人が?」

「えぇそうよ。さっき話した私の友人の……アヴィーちゃんよ♡」




突然始まった会話について行けず、座っている男の客とマーラを交互に見る。そんな俺に気づいたマーラがすかさず助け舟を出してくれた。




「あ、アヴィーちゃんにはまだ説明してないから、説明してあげてくれる?ガインちゃん」




マーラにガインちゃんと呼ばれた男は、一度咳ばらいをすると話し始めた。




「えー……俺はガイン・ジェルバと言う。この国の王子、アリシア様直属の兵士だ。マーラさんには武器以外にも色々と相談に乗ってもらっている」

「なんの相談だ?」

「私ねぇ?いつも通って買ってくれる常連様にだけ、サービスとして用心棒を貸し出ししてあげてるのぉ」




マーラはウフッ、と笑うと目の前に座るガインの背後に周り、ガインちゃんはいつも私のお店をご贔屓にしてくれてるのよぉ?と言いながら、ガインの頬に触れた。すると、先程まで勇ましい表情だったガインの顔が、マーラに触れられた個所から解される様にだらしなくなっていっている。俺がそれを白い目で見ていると、それに気づいたガインが、また咳払いをした。




「そっそれでだな……今回も、マーラさんの所で用心棒を貸し出して戴こうと思ったのだが……まさか、用心棒候補がこんな脆弱そうな男とは……」




ガインは先程とは違った顔を俺に見せる。その表情は、完全に俺を馬鹿にしたものだった。だが俺は、特に何も思わなかった。それはガインの本心が手に取るように分かるからだ。




こいつ、マーラに惚れてるのか……なるほど、それで俺を薦めてきたから僻んでるんだな




どうしてマーラを見つめる客が、熱い眼差しなのかと少し疑問に思っていたが、これですっきり解決した。




まぁ、マーラは美人だし。そんな美人にベタベタ触られたら恋愛感情も芽生えるか。にしても、顔がムカつくな……




俺が動じずに聞いていると、マーラが話に割って入る。




「あらぁ、人は見かけによらないのよ?ガインちゃん。それに私が自信をもって薦めるのよ?」




ガインの鼻先にョン、と軽く触れた後、頭の良いガインちゃんは、その辺もよぉく分かってるわよねぇ?と付け足した。




「ま、まぁ確かに。マーラさんが薦めてくれたのですから、間違いないのでしょう。では、有り難く彼をお借りしよう」

「……悪いが、本題に入っていないから、いまいち話が見えてこないんだが」




俺が言うと、ガインが俺を見てから低い声で一度だけしか言わないから、よく聞け。と俺に耳を近づける様に手招きしてみせる。それにつられて俺とマーラがガインに耳を傾けた。




「実はな……この間、此処ミレーア帝国である事件が発生してな。この話は部外者に話す事は普通ないのだが……今回は特別に話そう。二日前に、帝国内でも指折りの敏腕商人であるディーレ伯爵と、その娘であるカナレア様がどこかの暗殺者に殺されかけたらしいのだ」

「ディーレちゃんが?大丈夫なのぉ?」



 

明らかに顔見知りである反応を見せるマーラは、何か聞きたそうな俺にお得意様なの♡と囁いた。




「その時、ディーレ伯爵も捕まり、死を覚悟したそうだが、何故か知らないが暗殺者達はまた三日後に来ると宣言して消えたそうだ」

「ふーん。そのディーレ伯爵?が何か言ったのか?」

「確か……聞いた話だと、カナレア様が殺されそうになった時、大事な娘なんだ……とか何とか言ったら、暗殺者の一人が激情したらしい」

「なんで激情したんだ?」

「私が知るか」




ガインはその後、詳しい話は明日ディーレ伯爵本人にでも聞いたらいい。と半ば投げやりに言った。




「ふーむ……で?俺は何をすればいいんだ?」

「そうだな。お前には屋敷の周辺警護をしてもらおうか」




俺の顔を見ながらフフン、と鼻で笑うガインにかなり苛立ちを覚えるが、あくまでも今はマーラの店で働かせてもらっている身、簡単に言うと部下だ。マーラの顔に泥を塗るような行為はしたくない。




それに、マーラとは今後も友好的にしてもらわないとだしな。ガイン、覚えてろよ。そのうち絶対に、何かしら制裁を与えてやるからな……




そう心の中で念じ不敵に笑った後、ガインに返事を返した。




「分かった。その話、この俺が引き受けよう」



最近寒すぎだと思います……。

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