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自分と魔王と世界②



「さて、ここからはわたくし共とアヴァニール様のお話、……いえ、世界の話になります」




先程まで嬉しそうに話していたサミエルが神妙な面持ちになるのを見て、ここからは何か心苦しいものが

あるのだろうと思い、俺は一度深呼吸をしてサミエルに話をするよう促した。




「その後、各地の魔王はその領土を広げていき、魔王達はいつしか魔王軍と呼ばれ、世界にその名を轟かせていました。……ですが、100年前ある大戦により我々魔王軍の第一席であるアヴァニール様を守れず……敗退しました」




悲しみの混じった声で言うサミエルは、少しだけ顔を伏せる様に俺から目を逸らした。サミエルは拳を強く握りしめ、わなわなと震わせていた。その姿に何と声をかければいいのか分からず心の中で慌てていると、サミエルは突然此方に向き直り話の続きを語りだした。




「ですが、我々は知っていました。アヴァニール様が100年後また蘇られる事を」

「それが俺の二つ名の由来なのか?」

「はい!アヴァニール様は不死王。100年後に復活されるのです。ですが、100年後と言いましても正確な日付までは分からない為、お出迎えも出来ず、申し訳ありません」

「まぁその辺は気にするな。話を続けてくれ」

「はい。我々はアヴァニール様を待ち続ける事を決意し、その時が来るのを待ちました。……そして、今こうして、アヴァニール様が目の前に居て下さる………我々はそれが何よりの喜びにございます」




そう言って微笑むサミエルの表情は、息をのむ程のものだった。その美しくも儚く見える表情に、こいつにも色々と苦労があったのだろうと思うと、心に響く何かがあった。




「……そうか、俺のためにすまなかったなサミエル。……苦労をかけた」




出来るだけ労ってやろうと言葉をかけ微笑んで見せると、その言葉に惚けた顔を見せるサミエルの形の良い鼻から突然血が流れ出た。




「……え?おい、だ大丈夫かお前」

「も、申し訳ございません!!!陛下からそのようなお言葉を頂けるとは思いもせず!!嬉しさのあまり少々血の流れが良くなってしまいました」




お見苦しいところをお見せしまして申し訳ございませんと鼻を抑えながら息を荒げるサミエルに、俺は普通にドン引いた。



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その日はサミエルに起きた(鼻血が止まらないという)緊急事態の為、話し合いはお開きとなった。

そして俺はまた違う部屋に通され、睡眠をとる事になったのだった。




「はぁーーぁ……朝か」




キングサイズのベットから降りると、昨日渡されたガウンを羽織る。




そういえばサミエルはどうなったんだろうか……部下に連れていかれてたけど




身だしなみを整えようと洗面所に向かい、大きな鏡に自分がぼんやりと映り込む。俺は顔を洗い傍にあったタオルで顔を拭いてからまた鏡を見る。すると、鏡に映った自分の姿がまだ寝ぼけていた俺の目を覚まさせた。紅色の瞳に金色のさらさらとした髪に整った顔立ち、そして二本の角が目に入った。




……俺イケメンじゃね!?角って洗っても大丈夫なんだろうか……てか目赤……いやもっと深い赤色だな……




自分の顔をまじまじと見た後部屋の隅にある椅子に座る。目の前には小さな机、左側には窓があり、そこから集落が見える様になっていた。




「おお、見事に魔物しかいねぇ……」




昨日此処に入ってきた時は不気味な雰囲気だったが、日の光があるためか随分雰囲気が違っていた。小さな子供や老人のような魔物、兵士達、そして家事をしているのか洗濯物を干している者もいた。




「……平和だな」




「ええ、本当に穏やかな光景です」




その声に驚き前を向くと、何食わぬ顔でカップにお茶を淹れるサミエルの姿があった。




「なんでいるんだ……」

わたくしお入りする際、ノックをしたのですがお返事がなく……仕方なしに入りますとアヴァニール様が窓際のお席で何やら優しい眼差しで見ておられましたので、お声をかけるタイミングを逃してしまいまして……」




そう言って悪びれる様子もなく微笑むサミエルに、俺は溜息をつきまた窓の外を見つめた時ふと疑問が湧いた。




「そう言えば聞き忘れてたけど、お前のほかにほら、えーっと、幹部?とかいるの??」




俺は窓の外を見つめながら聞いたが、サミエルは何も答えなかった。その事を不思議に思いサミエルを見ると、表情こそ変わらないが先程より何か空気が重くなった気がした。その様子をうかがう限り、どうやらサミエルは他の幹部について話したくないらしい。どうしたものかとサミエルを見ながら悩んでいると、一つだけ案が浮かぶが正直こんな事で話してくれると思えない。




うーん、これ言っても基本的にと言うか絶対誰も喜ばないよなー……でもサミエルだし、一か八かで言ってみるか……




「……サミエル、後で殴ってやるから教えろ」

「はい、喜んで」




サミエルはギラギラとした瞳を向けながら、少し食い気味に返事をした。そんなサミエルに内心うわぁ……と思いつつ、話に耳を傾けた。




「幹部はわたくしを含め3人おります。第一側近である『特攻部隊総司令官』のラオル・リレウス・バローグ。第二側近の『魔攻部隊総司令官』ミリア・イドラス・アルスタイル。そして、第三側近であるわたくしわたくしは防衛部隊総司令官を任せて頂いております」




最後の自分の説明だけやたら気合を入れていた気がしたが、そこを突っ込むことなく話を進める。




「ふーん、……何でお前第三側近なのに此処に居んの?普通に考えたら第一側近が居るもんじゃ……」

わたくしは防衛部隊総司令官ですので、この拠点から離れる訳にはいかないのです。対して第一側近であるラオルは特攻部隊……アヴァニール様と常日頃一緒に居た時は本当に羨まし……ごほん、常日頃居たので他の魔王とのパイプ役には一番良いのです。ですからラオルには現在物資の調達から、近辺の情報収集などをさせています」




そのもっともな意見の中に一瞬本音が混じっていた気もしたが、他にも聞きたい事があるので無視スルーした。




「そうか、じゃあ第二側近の……ミリア?はどうなんだ??」

「あの小娘は現在新しい武器や魔法の精製などに時間と体力を回しております」




今まで丁寧なサミエルの口調が若干崩れていることに、俺はそのミリアという人物に興味が湧いた。




サミエルが小娘って言ってるし、女の子か……それにしてもこいつが名前で呼ばないなんて、相当嫌いと見える……うーん、会ってみたい……




「魔法か……そのミリアの所に行ってみたいな」




俺のその言葉に小娘にですか?と返してきたサミエルは、今までしなかった不満そうな顔をしていた。




「そんな顔するな。お前顔は綺麗なんだからさ」




俺がそう言ってサミエルの淹れたお茶を啜ると、サミエルは何やら嬉しそうにしているのを見て俺は思わず口を開いた。




「?どうかしたか?」

「はっ、い、いえ!何でもございません!!」

「そうか?……で、ミリアは今何処に居るんだ?」

「はい、現在は数キロ離れた魔王直轄地の研究所にて魔法の精製を進めております」




そう言って俺の空になったカップにまたお茶を淹れるサミエルに、もういいと一言口にする。





「取り合えず、その研究所の見えるところに案内してくれ」



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「……なぁ、サミエル」

「何でしょう」

「俺、ちゃんと研究所の見える所に案内しろって言ったよな?」




サミエルと部屋を出た後連れてこられた場所は森を分け入り、なだらかな斜面を登った少し整地された場所だった。だがその場所から見ても目の前に広がっているのは木と雑草だけで、研究所と言える建物は見えていない。




「全く見えないんだが……」

「はい。ですのでテレポートを使います」

「えっ?!何、俺テレポートとか使えんの!!?」

「はい。私達も出来ますが、幹部クラスですと座標軸が不安定なので、距離のある移動の際にはアヴァニール様のお力をお貸しして頂いておりました」




ナニソレ初耳!!!




言葉にならない衝撃を受けたが、まぁ魔王だしそれくらいは当然かと直ぐに気を取り直した




「そうなのか……そしたら部屋の中でテレポートすれば良かったんじゃね?」

「それはできません。天井などの仕切られた空間では発動しないようになっております」

「ふーん……で、魔法ってどうしたらいいんだ?しかも俺研究所の座標とか知らないんだけど」

「そうですね、まずイーグルを発動させて研究所を見つけ、その後テレポートで飛べば問題ないのでは?」




サミエルは真剣に話していたが、俺には何を言っているのかさっぱりなので流し聞きしていたが、肝心な事を聞くのを忘れていた。




「魔法ってどうやったら発動するんだ?」

「そうでした、まずその話からですね。魔法の発動は簡単です。その魔法単語を声に出せばできます。魔力を持たない者は魔法単語を唱えても何も起きませんが、我々のように魔力を持つ者ならそれが可能なのです」




ちなみに魔力量は種族や魔物の位により変動しますなどと解説している横で、俺は取り合えず声に出した。




『イーグル』




すると、突然目の奥に目の前の森を駆け抜けるような光景が映し出されると、そのまま真っ直ぐに森を突っ切る。すると目の前に真っ白な建物が現れた。

その白い建物は四角い形をしており、およそ三階建て位の高さに見えた。




「おぉ、すごいな……」




一人感動していると、突然目の前が弾けたかと思うと、先程と同じ森の光景になった。どうやら目的のものを見つけると直ぐに魔法が解ける様になっているようだ。




「流石アヴァニール様、お早い」




隣で拍手をするサミエルに俺はそうか?と首を傾げる。




「大体こんなもんなんじゃないのか?」

「いえいえ、普通探索にはかなりの時間を消費しますよ」




初めて目にするものなら尚更ですが、流石はアヴァニール様。とサミエルは俺にお世辞と尊敬の眼差しを向けてくる。俺は普通に褒められた事に少し照れくさくなり、サミエルを横目に頬をかいた。




「ではアヴァニール様、目的の研究所も見つけられたので向かいますか?」




サミエルのその言葉に本来の目的を思い出した俺は、隣で微笑むサミエルに返事を返した。




「そ、そうだな……行ってみるか」




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