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「いらっしゃいませー!!!」

「いらっしゃいませぇ……」

「あらぁ、アヴァニールちゃん。元気ないじゃない?大丈夫?」

「あ、いや!!すまない、大丈夫だ。マーラ」




俺は微笑むマーラに猛特訓した作り笑いを浮かべた。マーラはじゃあ頑張って♡とウインクを飛ばすと、接客へと向かった。




「………はぁ、何故こんな事に……」

「………」

「あぁ、大丈夫だラオル。心配させてすまない」




いつもの様に困り顔で俺の様子を伺うラオルは、珍しく手に武器を持っていて、身体には鎧を身に着けている。俺はいつも身に着けている鎧ではなくそれよりかなりの下の下、人間がまぁ死なない程度の鎧を身に着けている。




何故こんな事をしているのか。それは数時間前に遡る。




♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦




「さて、これからマーラの店の手伝いに行くわけだが、これはお前たち全員に参加してもらう」




俺はいつも通りの簡易玉座の間で、サミエル達に告げた。サミエル、ミリア、ラオルの後ろに、ロウとマンティコアのレウが控えていて、相変わらず両サイドには兵士達が背筋を伸ばして立っている。




『畏まりました』




前の三人が同時に頭を下げると、後ろの一人と一匹の姿が見える。ロウは直ぐに頭を下げるが、隣に伏せているレウは興味なさそうに欠伸をしていた。




「よし。……さて、そろそろマーラとの約束の時間になる。準備を……」

「あらぁ、準備するものなんて、人数だけで十分よぉ」




俺が玉座から立ち上がった瞬間、背後から手が俺の肩に触れた。驚いて振り向くと、どうなっているのかマーラの身体が玉座から出てきていた。




「何でそんな処から……」

「うん?それはアヴァニールちゃんを驚かせようと思って」




ウフフ、と笑うマーラは玉座からスルリと抜け出ると、俺の横に立ち腕を絡めてきた。




「あらぁ♡ミリアちゃん!!お久しぶりねぇ♡」

「は、はい。マーラ様も、お元気そうで何よりです」




マーラは喜びのあまりなのか、ぴょんぴょんと飛び跳ねているが、ミリアは全く持って嬉しそうではない。




前に何かあったのか?この二人……いや、これは……




俺が考えていた時、目に入ったのは微妙な表情をするサミエルとラオルの顔だった。どうやらマーラと何かあったのは、ミリアだけではないらしい。何をされたのかは分からないが、とにかく今回の手伝いは全員強制参加なので、我慢してもらうしかない。




「あー……マーラ。そろそろ店の方に行かないと不味いんじゃないか?」

「勿論!!私はそのために来たんだから!!……と、その前に……アヴァニールちゃんのその鎧はちょぉっと、派手すぎるから、少し抑えめの物にしてくれるかしら?」




それ見てお客が色々吹聴しちゃうとアヴァニールちゃんも困るでしょ?と右手を頬につけて微笑むマーラに俺は、そうか。と返事をした。




「だが、俺はこの鎧しか……」

「アヴァニール様。此方は如何ですか?」




隣から口を挟んだのは、何処からか鎧を持ってきたサミエルだった。いいじゃなぁい♪これなら大丈夫とマーラは機嫌よく言うが、俺としてはサミエルがどこから鎧を持ち出したのか気になるし、何故俺のサイズに合っているものを持っているのかも気になった。




「サミエル、まさか……念のため、念の為に聞くが……俺の部屋から持ち出したとかじゃないよな?」

「いえ。アヴァニール様のお部屋の中で、その他の素晴らしい鎧の手入れをしたことはございますが、勝手に持ち出すような事は致しません」

「じゃあなんで」

「此方はあまり使用されていない鎧でしたので、私生前アヴァニール様からお許しを頂いて貰い受けたものです。それから毎日、欠かさず手入れをしておりました」




まさかこのような日が来るとは思いもしませんでしたが。と一言添えてから俺に手渡したサミエルは、嬉しそうに微笑んだ。鎧は俺の顔が映り込む程に綺麗に磨かれており、傷一つない。




「そうか……すまない。お前を信じていない訳ではないんだ……疑って悪かった」

「そんな!!滅相もございません!!私を薄汚い泥棒風情と詰って戴いて構いません!!寧ろ本望です!!」




そしてアヴァニール様の愛の制裁を!!と熱弁していたが、俺はそれを無視してマーラに鎧を着替えるから待つよう、指示したのだった。







♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦



そして、現在に至る……






「はぁ………」

「あら、アヴァニールちゃん。お店で溜め息はダァメ♡」




俺の横にいつの間にか立っていたマーラが、その細い人差し指で俺の唇に軽く触れた。ふにっと唇に触れた指に驚く暇もなくただ見つめていると、マーラが優しく微笑む。




「フフッ、ほらぁ。ラオルちゃん達も頑張ってくれてるんだから。アヴァニールちゃんも、頑張らないとっ♡」




俺の唇から指を離すと、直ぐに後ろに回ったマーラは俺の背中をぐいぐいと押す。押される反動で前にどんどん進んで行くと、客が俺を睨んでいる様に見えた。




なんだ?睨まれている気がする……まぁ、いいか。それより、サミエルとミリアはちゃんと仲良く仕事してるのか……心配だな。




俺はまた、溜め息をついた。



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