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「で?アヴィーは何を聞きたいんだ?」

「あぁ、昔の俺の話を聞けたらなと思って、今日ルクシアに会いに行くグラドに無理や……いや、連れて来てもらったんだ」



俺がそう言うと、ルクシアは既に机に並べられている一点の曇りもなく磨き上げられたワイングラスを一つ手に取り傾けた。人数分用意されたワイングラスには、赤い液体が揺らめいている。



「おい、これは血じゃないだろうな」

「フン、お前に私が自ら食糧を振る舞うと思うか?やはり貴様は何年経ても阿呆だな」



鼻で笑うルクシアに、グラドは覇気を通常の2倍(くらい)を出し襲い掛かろうとしていたが、隣に居たサリヴァンに、行儀良く魔王たる態度でいて下さい。と窘められたのでゆっくりと椅子に腰を下ろした。



「ルクシア様、これ以上は我が主を愚弄する言葉として、それ相応の対処をさせて頂きます」

「それは困るな。以後気を付けるとしよう」



そう言いながらも先程と態度を改める様子もなく、優雅にワイングラスを傾けるルクシアは今度は俺に向かって話し始める。



「さて。アヴィーの話だったな。そうだな……まずそこに座っている輩と私とアヴィーは幼き時からよく色々な事をしていた。主に魔法の特訓をしていたな。後は……将来を語らったな」



ルクシアはワインを一口飲んだ後、楽しそうな微笑みをみせた。



「……」

「どうしたアヴィー。私の顔をじっと見て。何かついていたか?」

「いや、なんて言うか……お前って綺麗だな」



突然の俺の話題に、きっと周りに居た全員が驚いていただろう。隣ではグラドが盛大に咳き込んでいた。当の本人は、大変興味深いという目で俺を見ていた。



「ふむ、美しいか。普段言われない言葉だが、友人に褒められるというのは良いものだな」



ありがとう。と言って微笑むルクシアに、俺も笑顔で返そうと思ったが、後ろから俺を睨むティアの顔を見て、思わず笑顔が引きつったのが分かった。



「??どうしたアヴィー」

「え、あ、いや何でもない……悪い、話がそれたな。それで他には」

『俺も混ぜろ!!!!!』



突然声を上げたグラドは、俺とルクシアを交互に見て言った。ルクシアは大変迷惑そうにグラドを見ていたが、仕方が無いという感じで溜息を一つついた。



「全く……そうだな。アヴィーは自分が死んだ時の事を覚えているのか?」



そのルクシアの一言に、俺の心臓が強く撥ねる。一番聞きたかった事が向こうからやって来たのだから、緊張と不安で鼓動が速くなってしまうのも仕方が無い事だろう。俺は平常心と自分に言い聞かせながら、声を発する。



「まぁ、…そうだな、多少……な」

「?妙に歯切れが悪いな」

「それはそうだろう。なんせ一回死んで、記憶が曖昧なんだからな」



グラドがそう言って腕を組み一人頷いていると、ルクシアがそれはすまなかったと言って、寂しそうな瞳で俺を見た。



「では、私の知る範囲での事だが……残念だが私も詳しい事は知らない。だが、シーザ帝国が関与していたのは分かっている。あの日、魔王軍のほとんどは自身の領地を守る事に手いっぱいだった。私もその一人だ。その侵攻の中に獣人が混ざっていたのだ。そして、その獣人達の亡骸を調べたところ、シーザ帝国の焼き印がどの獣人にも施されていた」



全く持って不愉快な事をする連中だよ、と嘆くように言うルクシアの表情は硬い。どうやら、ルクシアもシーザ帝国を快くは思っていないらしい。勿論、俺も良くは思っていない。



「シーザ帝国か。最近はよくない噂ばかりが流れてくるな。昔はそんな事はなかったんだが」



ルクシアの言葉に継いで、グラドも溜息混じりに話し出すと、ルクシアもそこは私も同じだな。と言って頷いた。



「良くない噂?」

「なんでも、人間に魔族の血をいれたり、獣人の腕や足を移植したりしているらしくてn『私は兵器開発をしていると聞いた』

「……お前、今わざと俺に被せて言ったな。その性格の悪さ、俺が治してやるよ」

「はっ貴様に出来るならな」



そのあからさまな挑発の言葉に、机に脚を乗せようとするグラドを隣に居るサリヴァンが無言で止めている。グラドはサリヴァンに離せ!!と喚き出した。その様子を見ていたにも関わらず、ルクシアは涼しい顔で話し始めた。



「それにしても、本当に人間とは恐ろしいものだな。非力で脆弱故に、それ以上を求める」



まぁ劣る種族が力を求めるのは世の常、というやつなのだが……と優雅に言うルクシアは、無表情だった。どうやらルクシアも、サミエル達と同様に人間を何とも思っていないらしい。俺もそこまで人間に関心があるかと言われればない方だが、サミエル達のように邪魔だとか、下等生物だとかは思わない。だが、昔は人間が相当嫌いだったとサミエルから聞いた事はあった。



何で昔の俺は人間が嫌いだったんだろう……まぁ、それより。……シーザ帝国、か。ロウの集落を襲った奴らで、俺を殺した人間の居る……いや、もう百年経っているから、俺を殺したヤツは生きていないか……それにしても、一体どんな国なんだ?



シーザ帝国が軍事国家である事は一番最初にミリアに地図を見せてもらった時に教えてもらったが、それ以外の情報は何も持っていないのが現状だ。こうして人伝に聞くとシーザ帝国は一時期衰退していたようだが、ここ最近になってまた栄え始めたらしい。



シーザ帝国、何とかしてコンタクトを取れないだろうか……



俺が考えていると、突然グラドが声を上げた。



「そうだ!!アヴァニールも復活した事だ!!そろそろアレをやろう!!!」

「アレ?」



俺がグラドを見ると、グラドの頭にはたんこぶが出来ていた。サリヴァンが無表情で拳を撫でている所を見ると、殴ったのはサリヴァンらしい。だが、空しい事にグラド本人は全くダメージを受けていないようで、いつもの様にはっはっ!!と笑っていた。



「アレでは分からないだろう。全く…………貴様が言っているのは、会合の事だろう」




グラドの言葉を補うルクシアを見て俺は、なんだかんだ友達なんだなと密かに思った。



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